Love affair〜ラブ アフェア〜

橘 薫

文字の大きさ
58 / 171
♠︎束の間の…♠︎弘田宇丈

1

しおりを挟む
 30日まで仕事をし、31日は一日寝てた。
 夕方実家に電話したら、弟たちはとっくに実家に帰っていた。
「明日の早朝の便で帰るから」
「迎えに行かせようか?」
「うん、頼むわ」

 電話の向こうから、弟たちが誰がオレを迎えに行くかで争ってる声がする。
 そりゃそうだよな、車で迎えに来ることになるんだ。元旦から酒が飲めないなんてオレだったら勘弁だ。

 お袋との電話を切って、荷物をパッキングした。夕方まで寝ちまったけど…明日朝、早いからな…。ビールを飲みながら適当に音楽を掛けていたら、うとうとと眠ってしまった。

 翌朝、予定通りの時間に目が覚め、空港に向かう。
 チェックインし、どこかでコーヒーでも買おうか…と、きょろきょろしていたときに、見慣れた姿を見かけた。

 あれ…?心臓がどくん、と鳴った。
 や、まさか、な…。元旦にこんなとこにいるわけねぇよ…。

 距離を取りつつ、後を追いかける。
 一人でいるわけがない…絶対旦那さんがどこかにいるはずだ。
 もし見られたとしても気づかれないように…自然な距離感を保つ。

 彼女がトイレに入ろうとしたときに、声をかけた。
「みひろさん?」
 振り向いた彼女…やっぱり…。
「宇丈、さん…」

 瞬時に周りを見て人がいないことを確認した。
 女子トイレの個室に彼女を連れ込み、ドアに鍵を掛ける。これで安心して話せる…。

「どうして?」
「あ、オレ…実家に帰るんだ。みひろさんは?」
「主人の関係でこれから福岡なんです」
「そっか…はは、驚いた」
「私も…」

 オレを見あげるみひろさんは、頬が紅潮していてすごく嬉しそうだから、オレも嬉しくなって…頬が緩む。
 でも、旦那さんがいるんだよな?あんまり長い時間は一緒にいられないよな…。

「みひろさん、オレに少しだけ…時間くれる?」
「え?」
「五分…いや、一分でいい」
「…はい…」
 狭い個室の中で抱き合い、彼女の頬に触れる。
 髪に触れ、そっと…唇に指を触れさせた。みひろさんの目が、潤んでる…。

 唇を重ね、優しく柔らかく舌を入れると、みひろさんもそれに応えてくれる。
 甘い吐息と、吐息に混じって聞こえる声にならない、声…。愛しくて、このまま腕の中に閉じ込めてしまいたい…。

「一分、経ちました…」
 みひろさんが、そっと唇を離し、言った。
「みひろさん…」
 もっと、もっとキスしたい。触れていたい。離したくない。旦那さんのところに…戻したくない…。

「私、行かないと…」
「もう少し…」
「わがまま言わないで?」
 そういう彼女の顔は、いつもの外向きの…気丈な顔で。
 オレの頬にそっとキスすると、優しい声で言った。

「明けましておめでとうございます。今年も…よろしくお願いします」

「…今月、会える?」
「まだわからないので…手紙、出します」
「待ってるから」
「はい」
「…話したいこと、あるんだ」

 そうだ…決めた。
 やっぱり今度こそ、アオに言われたように、話し合いたい。
 これからの二人がどうなるかわからないから、会えるときに…できることをしないと。
「そろそろ出ようか」
「はい」

 誰もいないことを確認して外に出る。何食わぬ顔で、少し離れたところの席につき、サングラスで顔を隠してみひろさんが出てくるのを待つ。

 みひろさんが出て来た。オレのいるのとは反対の搭乗口に向かう。きっと…旦那さんが待ってるんだろうな…。

 北海道行きの便の搭乗案内が始まった。
 荷物を持って、搭乗口に向かう。新年早々、思いがけずみひろさんに会えた。
 今年は…きっと何か、大きな変化を起こせる…。そんな予感が、した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...