籠の鳥

橘 薫

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馴れ合いは傲慢となる

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 不思議な子だ、と思う。でも、その、普通の男の子と違うところにわたしは救われている。

 大晦日、帰ってきた彼と年越し蕎麦を啜り、新年の挨拶をしてそれぞれの場所で眠る。わたしは自分のベッドルームで、彼はリビングのソファ。それは、わたしたちの心の距離が近づいても変わらない。

 元旦は、一真くんが淹れてくれたコーヒーの良い香りで目が覚めた。お正月らしいものは特に用意していなかったから、コーヒーをお屠蘇がわりにして、いつものようにパンを焼き、スクランブルエッグとサラダ、という朝食を取って、近所の神社に初詣に出かけた。

 澄み渡る空はどこまでも青く、元旦というのはなぜいつも快晴で、晴々しい気持ちになるのだろうか、とぼんやりと考える。赴いた神社はそこそこに人気があるので、すでに参拝の人たちが長い列を作っていた。

 その列に並びながら、会話をしたりそれぞれスマートホンを弄ったり。参道に軒を連ねる屋台を見ながら、幼い頃の話などもした。
 彼がいた愛児園はキリスト教系だったらしく、夏のお祭りなどは園でやったことはないそうだ。でも、高校生になるとよく友達と連れ立って地域の夏祭りに出かけたらしい。

「ちひろ……、愛児園で知り合った親友ですけど、あいつはリンゴ飴が大好きで。二人でリンゴ飴食べながら射的やったり。金魚掬いは、いつもすぐポイ破れちゃって不貞腐れて。しょうがないから僕のポイを分けたげたりとか」
「仲良かったのね」
「はい、凄く。親友ですから」

 なぜその彼と今は連絡を取っていないのか。聞きたいけれども聞くには勇気がいる気がした。彼とわたしはあくまでもペットとご主人様で、一時的なものなのだ。いつか、彼が家を出る日も近いだろうとなんとなく思っている。
 そんな人の過去を聞いて、心に留めてはいけない。長く続く関係ではないのだ。曖昧で、脆くて、家族でも愛でもなければ、友達でもないのだから。
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