籠の鳥

橘 薫

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馴れ合いは傲慢となる

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「これ、組み立ててくれる?」
「はい」
宅配で来たその箱を一真くんに渡す。彼は特に疑問も持たずに箱を開け、パーツを出し、取扱説明書を見ながら組み立て始めた。
「かっこいいですね、これ。どこに置きますか」
「ソファの横」
「あ、ぴったりです。さすがですね」
「使っていいよ、それ」
「……え?」

 意味がわからない、というように私を見上げるその瞳。銀色の髪の間から透けるその瞳は、黒いようで黒ではなく、光の加減で深い緑色のようにも見える。
「……いつまでもダンボールじゃ不便でしょ。普段使いのものとか入れて使ってどうぞ」
「あ、ありがとうございます。いくら、ですか」
「は?」
 思わず彼の顔を見る。律儀と言えば聞こえがいいが、最近になってわかってきたことがある。一真くんは、人からの好意を受け取り慣れていないのだ。そのくせ、他人に与えることに長けている。

「一真くんがいなくなったらわたしが使うから。いる間は好きに使って。貸したげる」
「あ……、ありがとうございます」
 一真くんは戸惑うように下を向く。そしてしばらくの間顔を上げなかったかと思ったら、何かを決意したかのようにはっと顔を上げた。
「あの、お返ししたいんで」
「いいって、そんなの」
「僕の気が済まないです。お返しさせてください」
「だからいいってば」

 そんな言い合いをしばらく続け、結果仕事が始まったらお弁当を作ってくれることになった。流石に他人が作ったお弁当を持っていくのは恥ずかしいと告げると「女性が作るようなお弁当になるよう頑張ります」と拳を作っている。頑張る方向性がちがうような気もしたけれども、それで彼の気が済むならいいか、と半ば投げやりな気持ちで了承した。
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