籠の鳥

橘 薫

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馴れ合いは傲慢となる

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「詳しく教えてもらえませんか。どうやったらそうなってしまうのか。体に覚えこまされたってことなんですよね。テクニックですか?」
「一真くん」
 無駄だ。この子には。

 特別なことなのだと理解していない。アレは絆を高め互いに信頼し合いすべてを開示するための儀式。ただのセックスではないし、同じ土俵で考えないでほしい。

「何度も言うけど、あれはお互いに100%信頼しあって、すべてを晒け出して、その上で相手のありのままを受け止める行為なのよ。
 あなた、自分を丸っと受け入れてくれる相手に出会ったことある? どんな醜態を晒しても、それこそベッドルームを汚らしく汚してしまうようなことがあっても文句も言わずに嬉々としてその片付けをするのよ。そして「すべてを見せてくれてありがとう」って感謝されるのよ?」
「ないです……そんな相手、僕は出会ったことが、ない」
「そういう相手だからこそ信頼できるの。預けられるの。ただのプレイじゃないのよ。命を預かる責任があるって言わなかったっけ? 面白半分でやる拘束プレイなんかと一緒にしないで」

 自分の、彼との行為を擁護する強い感情の入った言葉に、我ながら呆れてしまう。口をついて出る言葉は、わたしが如何にまだ捉われているかを物語る。

「テクニックだけじゃ、ないんですね」
 まだ納得はしていなさそうな顔で、それでもわたしの言葉の意味を懸命に考えているのだろう。少し眉間に皺を寄せ、口をへの字にしている彼は、その様子もまた美しい。
「もちろんテクニックはないよりあったほうがいい。いろんなテクニックがね」
「美彩さん」
 一真くんの瞳が妖しく光る。何かを、決意したのだろうか。

「僕に教えてください。ドミナントのやり方を。或いは、見せてもらえませんか? どんな風に、愛されたのか」
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