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サバゲーって知ってる
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しおりを挟む「ソレヨリー、ほら、おとチャン! 撃ってみヨーっ!」
音羽の肩を掴んで、満面の笑みだ。
「この業界、撃ってみないと、ナニも始まらナイヨー!」
力強い宣言をして、部屋の外へ移動した。ふたりの後を、広辞苑が二冊ほど入りそうな大きな工具箱を両手に持って、フーもついてきた。ゴスロリに無骨な工具箱の組み合わせが、不釣り合いすぎて喜劇《コメディ》のようだ。
そして廊下に出ると、音羽の足下に工具箱のひとつを置いて、フーは廊下の向こう側へ、見るからに緩慢な動きで歩いていった。広大な学校なので、当然廊下も長い。この部室前の廊下も差し渡し50メートルある。
「じゃあ、おとチャンこっち来るネー」
「はい」
尋は足下に置かれた工具箱を手に、音羽の手を引く。じゃらっと、箱から音が聞こえた。
廊下の端に到着すると、向こう側のフーも端に到着した。工具箱を床に置いて、中からなにかを取り出している。
「おとチャン。ちょっとえむぴ貸してクダサイネー」
「えむぴ? ですか?」
何のことかわからずに首を傾げると、尋は慌てて訂正した。
「Oh! sorry. このエアソフトの事ネー」
言って、尋は音羽の持つエアソフトを指さす。
「えむ・ぴー・ふぁいぶ・くるつ・ぴー・でぃ・だぶりゅー。とてもナガイネー? えむぴっていうあだ名はsimpleで良いネー」
「そうなんですか?」
ふんふんと小さくうなずき、音羽は言われたとおり尋にエアソフトを渡す。
「Thank you. そいじゃ、簡単に説明するネー」
慣れた手つきで、肩当てを広げた尋は、軽く掲げて音羽によく見えるように構えた。
「これ、このグリップの上にあるレバー。これが安全装置ネー」
かちかちと水滴型のそれを親指で動かした。左右の側面に取り付けられたそれは、連動している。左側面で動かすと、右側面の物も一緒に動く。
「一番上でsafetyネー。引き金が引けナイヨー。弾も出ないネー」
カチと指でひとつずらす。
「真ん中がsemiauto. 一発ずつ撃つ状態ネー。一番下がfullautoで、連射状態ヨー」
簡単に説明して見せ、それから尋は肩当てをのばして、すっと構えた。
まるで何百万回と繰り返して、体が心臓を動かすのと同じように、当たり前だというほど自然にエアソフトを構えた。
――きれいだ……――
自然で、まるでポーズをとったモデル。尋の射撃姿勢は何ひとつ違和感がない。
「Hey! フー、イくヨー!」
「大丈夫だ」
照準の先には、小さな脚立の上に置かれた箱。そして箱に五重丸の的が貼られている。
しゅたた。
セミオートで三発撃った。弾はみっつ連なって、まっすぐ的のど真ん中に吸い込まれていく。
「Wonderful! 直線描いたヨーっ!?」
「当たり前だ」
着弾して驚く尋に、離れていたフーは当然と胸を張る。
「ウチのと大差ないネー」
感動した尋は続けて、数発撃った。そのすべてが的のど真ん中に当たり、一発目が開けた穴を通って行った。
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