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サバゲーって知ってる
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しおりを挟む「ついにできマシタか? フー技術士官」
「できた。フーはガンスミスだ。兵役はない」
無表情ながら、どこか不機嫌そうな気配を一瞬だけにじませたフー。
「Sorry. 仕上がりはいかがネー?」
「みっつの指には間違いなく入る」
やや憮然とした表情で、指を三本立てて見せた。それだけの結果でも、彼女は満足していないようだ。
「Really!?」
「間違いない。全ての部品がそこにいることを誇っている」
「Amazin!」
楽しそうに会話するふたりだが、音羽にはその会話の内容はさっぱりわからない。同じ国の言葉なのか疑うほどだ。
「これでエアソフトはばっちりネー」
「あとは、装備」
「重たいの避けたいネー。リグだけでいいと思いマスヨー」
「もしくはピストルベルトにポーチだけ」
「Aha. でも、おとチャンほっそいからネー」
「たしかに……」
そこで無言になって、そろって音羽をじっと見つめてきた。
「ど、どうかしたんですか?」
「フーの昔の装備、ちょうど良さそうネー?」
「そうしよう。明日用意しておく」
「お願いシマスネー!」
「あ、あの……」
「どしたのおとチャン?」
「お話が、わからないです」
音羽に言われて、一瞬だけ尋はきょとんとしたが、すぐにばつの悪そうな顔を作った。
「Oh, I'm sorry. ちょっとテンション上がってしまったヨー……」
「説明は明日でもいい。それより、撃ってみるといい」
すくとフーは立ち上がり、音羽に近づいてきた。近付かれて初めて近付かれていた事に驚いた。まず動いたこと、次に歩いてきたのに音がしなかった事。最後に自分とほぼ同じくらいの背格好であること。
――近くで見ても、やっぱり綺麗だ――
白磁というのが一番正しい肌と、しっかりとした目鼻立ち。若干アンニュイな雰囲気の目元は、浮き世離れした見た目と合って思わず見入ってしまう魅力があった。
「これ。アウト専用に作ったものだ」
両手でそれを差し出され、音羽は慌てて受け取った。
ずしっと両手に掛かる重み。ひんやりとした金属の感触。
初めて触れたそれは、想像以上に重たい。
「MP5k-PDWという。小型軽量な上に、フォアグリップや可倒式のストックなどがついていることで取り回しがいい。光学機器も載せてあるし、サードパーティの多連射マガジンも使ってある」
「フーが多マグで作るナンて……」
驚愕と顔で語る尋。じろっとひと睨み利かせる。
ちなみにここまでの会話で、音羽に分かった言葉はない。
「アウトは初心者だからな。それにあったものを作った」
「そこまで気遣うナンて、めずらしいネー……」
「費用はヒーロに請求するからな」
「What it!? really!?」
「フーがロハで仕事すると思ったか?」
「Oh my god. 仕方ないネー。おとチャンのためネー」
やはり音羽には通じない会話。音羽が小首を傾げていると、渋面を浮かべていた尋は、すぐに笑みを浮かべた。
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