キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

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第35話 頭数の差

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「チェムラップ、、、貴様、手を出すなと言っていた筈だが?」



 ルチアーノからの集中砲火を受けて蹲っていたベアトリーチェが、漸くダメージから立ち直ってチャムラップを睨み付ける。

 自分とルチアーノの決闘を邪魔された事に御立腹の様だ。

 視線だけで心臓が止まりそうな剣幕だが、チャムラップは全く気にした様子を見せず飄々とした態度で向かい合う。



「え~? でもあそこでオイラが助けないとお嬢死んでたじゃないですか?? わっちは一応ボスにお嬢の身を守る様に言われてるんでぇ、やらないと僕チンが怒られちゃうみたいな~?」



「何年前の話をしている、、、貴様にその任務を与えた人間はもうとっくに死んだ筈だ。過去と現実の区別も出来ないのか狂人道化師めッ」



「・・・口を慎めよメスガキッ、過去と今しか知り得ないちんけな脳味噌で物を語るな。拙僧のクリクリお目々には過去も今も、そして未来もIFの可能性までも見えてるんだよ」



「口を慎むのはッ、、、お前だッ!!」



 ベアトリーチェはチャムラップの不敬な態度に怒りを露わにして、目前のピエロに大剣を振り下ろした。

 チャムラップは今まで幾度と無くベアトリーチェに殺されており、今回もそうなると誰もが思っていたのだが、、、



「この未来も見えていたぜ、嬢ちゃん?」



 チャムラップはベアトリーチェの斬撃を親指と人差し指で摘まんで止め、ピエロマスクを不敵に歪めて見せる。

 気が付くとチャムラップの姿が変化しており、今までのスーツ姿ではなく本物の道化師の様な訳の分からない飾りと模様が大量に付いた服装に成っていた。

 その姿はまるで、寝苦しい夢の中で出会う悪魔の様である。



「・・・未来が見えているだと?」



「うん」



「では当然、、、この後起こる未来も予測しているのだろうな? 貴様が私に八つ裂きにされる未来がなッ!!」



 ベアトリーチェは摘ままれた大剣を即座に身体に引き付け、ありったけのマイナスエネルギーを注ぎ込んでピエロに再び叩き付ける。

 しかしチャムラップはダンスでも踊るように紙一重でその斬撃を回避し、背中を水蒸気が凍結して発生した氷山の冷気に触れられた。



「残念だけどその未来は来ないよ~んッ!! 少なくとも僕はお嬢よりも長生きするからね! 最終フェーズまでの道案内が僕のお仕事☆」



「貴様の様な狂人に道を尋ねる者などッこの世の何処にも存在せんわ!!」



 ベアトリーチェは莫大なマイナスエネルギーをまき散らしながら、本気でチャムラップを斬り殺す為に剣を振り回す。

 しかしチャムラップは軽やかな身のこなしで全ての攻撃を回避していく。



 その様子を瓦礫の中から脱出したルチアーノは苦しそうな表情で眺めていた。



「あのッ、、、クソピエロ! 殺し切れて無かったか、、、完全にその可能性を脳内から排除していた俺の落ち度だ」



 ルチアーノは腹を苦しそうに手で押さえながら立ち上がる。

 外側から強い圧力で押し潰されて内臓に深刻なダメージを受けていたが、則を利用して痛みと苦しさを取って応急処置を済ませていた。



 この攻撃を受けた一番の要因は心の余裕の無さ。

 ルチアーノも『アマノムラクモ・紅蓮千刃』一発で完全にチャムラップを完全に殺せるとは思っていなかったが、予想外の不意打ちを喰らってその可能性が頭から抜け落ちていた。

 ベアトリーチェを仕留める事に注意が行きすぎて、その存在を忘れていたのだ。



(万象共鳴の残り時間は15分、、、其れまでに敵の殲滅する必要が有る。間に合うか?)



 現実的な目線で物を語ると、其れは限りなく不可能に近かった。

 しかし可能性が限りなくゼロに近いとしても、其れでも全てを投げ出して逃げるには時期尚早過ぎる。

 ディーノとトムハットが逃げるまでの時間を何とか稼がなくては成らない。



(いやッ、やっても無いのに不可能だと決定付けるのは辞めよう。この行動が無謀だったのか英断だったのかは、死んでから他人が勝手に決めれば良い、、、)



 ルチアーノは理性的な思考を捨てて、この瞬間も流れ続けている今だけを見詰めた。

 そして一度切れた世界との繋がりを繋ぎ直し、再び『万象共鳴モード』に突入して身体を七色のエネルギーが包み込む。



「恐らく人生で一番濃密な15分間だ、精々楽しませてくれよなッ」



 ルチアーノは再び凶暴な笑みを浮かべ、チャムラップとベアトリーチェが待つ戦場へと舞い戻った。



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