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第103話 本気で死にかけた
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長い夢だった、長い長い夢だった。
勇者になって姫を救った様な、寧ろ魔王として人類を滅ぼした様な、鳥に名って世界を眺めた様な、古木となりて時代の終わりを見た様な、生まれ落ちた瞬間世界を憎んで死んだ様な、幸せの絶頂で愛を振りまきながら死んだ様な、そんな長い夢だった。
しかしそんな数十冊の本でも収まりきらない物語も記憶から消え去り、遂に眠りから目覚める時が来くる。
人生数百周分も夢の世界で過ごしたディーノはこの夢こそ自分の在るべき世界だと思っていたが、外から響いた自分を呼ぶ声でやり残した沢山の事を思い出す。
(どうせ長くは生きられない、死ぬなんて何時でもできる……)
そんな余りにも自分の命を軽視した言葉を呟き、ディーノは頭上から降り注いだ光へ手を伸ばした。
すると目に見えない無数の手がディーノを掴み、光が発されるその先を目掛けて勢いよく引き摺り上げていく。
そして眩い光に目が眩み瞼を閉じ、それからゆっくりと開いた瞳に映ったのは見慣れた天井。
ディーノが現実世界で自室として与えられている部屋の天井であった。
「あれ? 此処は何処……何で俺はベッドで寝て……」
気絶した時は度々ある事なのだが、自分に一体何があってベッドの上に寝かされているのか分からなく成るのだ。
脳が極限状態過ぎて、記憶の保存メモリがぶっ壊れてしまったのである。
そしてディーノが上半身を起こして必死に現在までの経緯を思い出そうと頭を捻っていると、視界の端に三つの人影が目に入った。
興味を引かれて其方の方向に視線を向けると、その人影は恐らく運び込まれたであろう椅子に背中を預け気絶した様に眠るアンベルト・ゴンザレス・フーマの三人。
滅多に無い三人が揃っている光景、しかも爆睡というカオスな状況は更なる混乱を招く。
「何でこの三人が仲良く寝てるんだよ、しかも俺の部屋で! 訳が分からねえ、一体俺が寝ている間に何が起こったんだよ!?」
ディーノは自分の現在情報すら処理しきれていないにも関わらず、大量になだれ込んできた理解不能にな情報に頭がパンクしそうになる。
そして頭に籠もった熱を冷やすため、一端声の限り現状への不満を叫んだのだ。
すると、その声を聞いたアンベルトの目がゆっくりと開く。
その後目と同じ様に首をゆっくりと回して、ディーノの戸惑いと驚きの混じった表情を確認した瞬間大きく目を見開いた。
「ディーノ……起きたのか。体調はどうだ?」
「どうしたんだよ急に、らしくねえッ……」
「体調はどうだ」
初めて聞いたかも知れないアンベルトからの体調を労る言葉に、ディーノは謎の照れ臭さを感じて話を逸らそうとした。
しかしその言葉を遮ってでも放たれた二度目の『体調はどうだ』という言葉に並々ならぬ何かを感じ取る。
「た、体調? 体調は~ちょっと身体が重い位かな。別に大した事……ッ!」
謎の心配させている事が申し分け無くなりディーノが腕を回して健康アピールをすると、突如身体の力が抜けて起こしていた上半身もベッドに押し返される。
同時に強い目眩と吐き気も襲ってきた。
ディーノが突然の異変に混乱し、必死に嘔吐を堪えているとアンベルトがバケツを渡してくる。
「使え」
ノータイムでそのバケツを奪い取る様にディーノは受け取り、顔をその中に入れて全力で胃の中のを吐き出す。
すると固形物は出てこず、白っぽい液体だけが吐き出される。
嘔吐は3,4度続き、最後は嗚咽だけが漏れて一応の治まりを見せたのだった。
「胃の機能も一度停止している、万全な状態に戻るまでは相当な時間が掛るだろうな。それまで当分は固形物を食べれんぞ」
「い、胃が一度停止したって……何がッあったんだよ??」
アンベルトのとても穏やかとは言えない発言にディーノは驚愕し、ますます眠りに付く前に何があったのか気に成り始める。
確実に命に関わるような何かがあったに違いない。
そしてその言葉を聞いたアンベルトはディーノに何があったのかを語り始めた。
「覚えていないのか。まあ、少なくとも良い記憶では無いので忘れた方が良いのかもしれんが……お前は四日前、一本の蝋燭に火を1万回灯すという修行をしていた。そしてお前は十度の脱水症状となり一度死んだ」
「しっ、死んだ!?」
胃が停止したのだからある程度の事を言われても驚かない覚悟であったが、流石に死んだと言われて平常心を保つのは不可能であった。
そして『一本の蝋燭に火を一万回灯すという修行』がキーワードとなり、忘れていた記憶が幾つか蘇ってくる。
しかし確かに、どの記憶も思い出して嬉しい思うには苦痛で溢れ過ぎていた。
「そうだったッ俺はずっと蝋燭に火を点け続けて、其れで脱水症状で気絶したんだった……でも、流石に死んだってのは嘘だろ? だって俺は現に今生きてるんだしッ」
「いや、確実に一度心臓が止まりお前は死んだ。即座に心臓を刺激して再び動かし蘇生は成功したが、その他の器官も同様に機能停止して予断を許さない状態だった。そしてこの数日間不眠不休三人掛かりで則を利用し、お前の生命維持を助け今に至るという訳だ」
そう言うとアンベルトは未だ疲労が完璧に取れた訳では無いのか、頭を抱えてゆっくりとした瞬きをした。
アンベルトもゴンザレスもフーマもディーノの状態が安定するまでの数日間、休まず則で内臓を動かし続けてくれたのだ。
凄まじい労力と時間を消費して救ってくれた三人には感謝しかない。
「そっか、ごめん迷惑掛けた」
「ああ、迷惑だったぞ」
「ハハ、アンタは平常運転だな……てかッお前の考えついた修行のせいで俺は死にかけたんじゃねえか!! 何謝ってんだ俺ッ謝るのはコッチじゃねえ、お前の方だろアンベルトッ!! 謝れハゲッ!!」
良い意味でも悪い意味でも平常運転なアンベルトのお陰でディーノは少し元気が出た。
しかしその反動でこの修行を思い付いたのがアンベルトであり、自分が死にかけたのは全てこの男のせいであったと思い出す。
考えてみればこの男に関わって発生したイベントには禄なモノが無く、今回は本気で一瞬死んだし、前回手首を切られた時は本気で魂があの世に行きかけた。
そもそも初対面の時点で、自然落下する腹部を一切情け容赦無く膝で蹴り上げられている。
謝罪すべき事は山のようにある筈だ。
「フンッ、あの程度でくたばる人間では結局大した事は成せん。死んで当然だわ!」
「んだとてめえッ!! ならお前も一度やってみろよッ、死ぬほどキツいからな!! いやッ死ぬよりキツいからなァァッ!!」
「やるか馬鹿がッ面倒くさい!! あんな馬鹿げた修行自分にできるかッ、命が勿体ないだろうが!!」
「なら何でその修行を他人にやらせてんだよッ!! 頭イカれてんのか??」
「何だとクソガキッ!! 修行自体を批判するより先ずは、その修行を付けて貰わなければ碌に則すら操れん自分を恥じるんだな!! 雑魚だから悪いんだよ雑魚だからッ」
ディーノの発した言葉にアンベルトは年甲斐も無く食らい付き、狭い室内に二人の怒声が響き渡った。
その声が目覚ましとなり、椅子で寝ていた残り二人の眠りを妨げる。
そして四つの閉じていた瞼が開き、二人の怒声を掻き消す程巨大な声が響いたのだった。
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人生数百周分も夢の世界で過ごしたディーノはこの夢こそ自分の在るべき世界だと思っていたが、外から響いた自分を呼ぶ声でやり残した沢山の事を思い出す。
(どうせ長くは生きられない、死ぬなんて何時でもできる……)
そんな余りにも自分の命を軽視した言葉を呟き、ディーノは頭上から降り注いだ光へ手を伸ばした。
すると目に見えない無数の手がディーノを掴み、光が発されるその先を目掛けて勢いよく引き摺り上げていく。
そして眩い光に目が眩み瞼を閉じ、それからゆっくりと開いた瞳に映ったのは見慣れた天井。
ディーノが現実世界で自室として与えられている部屋の天井であった。
「あれ? 此処は何処……何で俺はベッドで寝て……」
気絶した時は度々ある事なのだが、自分に一体何があってベッドの上に寝かされているのか分からなく成るのだ。
脳が極限状態過ぎて、記憶の保存メモリがぶっ壊れてしまったのである。
そしてディーノが上半身を起こして必死に現在までの経緯を思い出そうと頭を捻っていると、視界の端に三つの人影が目に入った。
興味を引かれて其方の方向に視線を向けると、その人影は恐らく運び込まれたであろう椅子に背中を預け気絶した様に眠るアンベルト・ゴンザレス・フーマの三人。
滅多に無い三人が揃っている光景、しかも爆睡というカオスな状況は更なる混乱を招く。
「何でこの三人が仲良く寝てるんだよ、しかも俺の部屋で! 訳が分からねえ、一体俺が寝ている間に何が起こったんだよ!?」
ディーノは自分の現在情報すら処理しきれていないにも関わらず、大量になだれ込んできた理解不能にな情報に頭がパンクしそうになる。
そして頭に籠もった熱を冷やすため、一端声の限り現状への不満を叫んだのだ。
すると、その声を聞いたアンベルトの目がゆっくりと開く。
その後目と同じ様に首をゆっくりと回して、ディーノの戸惑いと驚きの混じった表情を確認した瞬間大きく目を見開いた。
「ディーノ……起きたのか。体調はどうだ?」
「どうしたんだよ急に、らしくねえッ……」
「体調はどうだ」
初めて聞いたかも知れないアンベルトからの体調を労る言葉に、ディーノは謎の照れ臭さを感じて話を逸らそうとした。
しかしその言葉を遮ってでも放たれた二度目の『体調はどうだ』という言葉に並々ならぬ何かを感じ取る。
「た、体調? 体調は~ちょっと身体が重い位かな。別に大した事……ッ!」
謎の心配させている事が申し分け無くなりディーノが腕を回して健康アピールをすると、突如身体の力が抜けて起こしていた上半身もベッドに押し返される。
同時に強い目眩と吐き気も襲ってきた。
ディーノが突然の異変に混乱し、必死に嘔吐を堪えているとアンベルトがバケツを渡してくる。
「使え」
ノータイムでそのバケツを奪い取る様にディーノは受け取り、顔をその中に入れて全力で胃の中のを吐き出す。
すると固形物は出てこず、白っぽい液体だけが吐き出される。
嘔吐は3,4度続き、最後は嗚咽だけが漏れて一応の治まりを見せたのだった。
「胃の機能も一度停止している、万全な状態に戻るまでは相当な時間が掛るだろうな。それまで当分は固形物を食べれんぞ」
「い、胃が一度停止したって……何がッあったんだよ??」
アンベルトのとても穏やかとは言えない発言にディーノは驚愕し、ますます眠りに付く前に何があったのか気に成り始める。
確実に命に関わるような何かがあったに違いない。
そしてその言葉を聞いたアンベルトはディーノに何があったのかを語り始めた。
「覚えていないのか。まあ、少なくとも良い記憶では無いので忘れた方が良いのかもしれんが……お前は四日前、一本の蝋燭に火を1万回灯すという修行をしていた。そしてお前は十度の脱水症状となり一度死んだ」
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「いや、確実に一度心臓が止まりお前は死んだ。即座に心臓を刺激して再び動かし蘇生は成功したが、その他の器官も同様に機能停止して予断を許さない状態だった。そしてこの数日間不眠不休三人掛かりで則を利用し、お前の生命維持を助け今に至るという訳だ」
そう言うとアンベルトは未だ疲労が完璧に取れた訳では無いのか、頭を抱えてゆっくりとした瞬きをした。
アンベルトもゴンザレスもフーマもディーノの状態が安定するまでの数日間、休まず則で内臓を動かし続けてくれたのだ。
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謝罪すべき事は山のようにある筈だ。
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「んだとてめえッ!! ならお前も一度やってみろよッ、死ぬほどキツいからな!! いやッ死ぬよりキツいからなァァッ!!」
「やるか馬鹿がッ面倒くさい!! あんな馬鹿げた修行自分にできるかッ、命が勿体ないだろうが!!」
「なら何でその修行を他人にやらせてんだよッ!! 頭イカれてんのか??」
「何だとクソガキッ!! 修行自体を批判するより先ずは、その修行を付けて貰わなければ碌に則すら操れん自分を恥じるんだな!! 雑魚だから悪いんだよ雑魚だからッ」
ディーノの発した言葉にアンベルトは年甲斐も無く食らい付き、狭い室内に二人の怒声が響き渡った。
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