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第四話 オンラインマッチ⑤
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【キルログ Arthur→ハルヨシ✖】
不意打ちを読まれ、無残にも敵ナイトに倒されたバンディットのキルログが全プレイヤーへと駆け巡る。
その通知を陣地の奥深にて受け取ったとあるプレイヤーは、弾かれた様にマップを開く。そしてまるでピアノの鍵盤を叩くような滑らか極まる運指で入力し、この展開を遙か序盤より予見し生成しておいた魔方陣を消費。
そして、中立地帯と敵陣の丁度境界線辺りに大規模魔法を放ったのであった。
「……ダハッ」
【戦術魔法:ヘブンズウォール】
彼が放った魔法、ヘブンズウォ-ルはフィールド上に光の壁を生み出し往来に制限をかける事が出来る魔法だ。
本来は敵から侵攻を受けそうな時や孤立した仲間を敵から遮る時に使用する防御の一手。しかし彼は敵に対する意趣返しとして、その防御を攻撃に転用してみせたのである。
「3……2……1……ゼロ」
【キルログ Arthur→ヤミコ✖】
【プレイヤー Arthurが最高レベルへ到達。チームブルーにレベル10プレイヤーが誕生しました、勝利は目前です】
彼の生み出した壁に突然退路を絶たれ、逃げ場が無くなったアーチャーを先程背後からバンデットを斬りつけたプレイヤーが連続でキルする。
その結果、彼らのチームにレベル10プレイヤーが誕生する事となった。
「ダハッ、ハハッ……ダハハハハハハハハハハハハハハッ!! 余裕、超余裕!! オレちゃんの推理またまた大当たりッ。 釣りが見え見え過ぎて逆に釣り返してやったわザ~コ!!!!」
その上々過ぎる結果に、品という物が一欠片すら聞き取れぬ声で爆笑する彼のプレイヤーネームは『Merlin』。メンバーの名前が全てアーサー王伝説の登場人物で固められたチーム『円卓の騎士団』のリーダーである。
円卓の騎士団は先日バンクエットオブレジェンズの大型公式イベントBCFの中で行われた大会で準優勝を果たした事で有名な、今最もプロリーグ入りに近いと言われるチームの一つ。
そしてそのリーダーである彼、Merlinは優れた戦術眼と心理洞察力でチームに数多のタイトルを齎した日本指折りのウィザード。この男に掛かれば、敵の作戦を看破し誘導されている方向から逆に伏兵の位置を割り出すなど造作も無かったのである。
「凄え久しぶりにランクマ何て来たけどぉ、やっぱ所詮はこんな物か~。ぬる過ぎてつまんねえわ! 早く出て来いよエターナルグローリーさんよおッ、ボコボコのケチョンケチョンにしてやんよー!!」
彼ら、円卓の騎士団は基本ランクマッチで試合を行う事はない。
真の強者は初心者もチーターもごった煮と成っている公式のランクマッチなど使わないのだ。
彼らが普段練習に使用しているのは『VIPマッチ』と呼ばれる選手達によって作られたコミュニティ。
このVIPマッチは全チームの上位10%のみが登録でき、その上位チーム同士が対戦し高め合う為に作られた場。それ故当然プレイヤーの質は高く、技量が一定より上のプレイヤーは殆ど此方のコミュニティを利用してゲームをプレイしている。
そしてそんなトップもトップ、プロプレイヤーすら利用している場で戦っている彼らにとって、このランクマッチという戦場は使う選択肢にすら入り得ない場末なのだ。
しかし其れでは何故彼らは今ランクマッチをプレイしているのか。
それは、今現在この場を利用して行われているとあるイベントに理由があった。
『エターナルグローリーチャレンジ ランクマッチで100連勝に挑戦!!』そう銘打った公式イベントが現在このランクマッチでは行われている。
そのイベントはゲームの新規層獲得を目的とした、プロチームのプレイヤーが出演するインターネット生中継の催し物。しかし今このランクマッチに集っている怪物達にとって、そんな表向きの目的など如何でも良いのだ。
彼らにとって重要なのは、イベントに何のチームが参加して、どのプレイヤーが出るのかという事。
このイベントのメインを張っているのはタイトルにも成っている『エターナルグローリー』というプロチーム。現在国内公式戦では147戦全勝を誇っている最強の集団だ。
更にエターナルグローリーはバンクエットオブレジェンズ最大の大会であるプロリーグで現在頂点に立っており、世界ランキング3位、ジャパンランキング1位、リーグ優勝3回という桁違いの成績を誇っている。
「勝ちた~い、エターナルグローリーに勝ちた~い! エターナルグローリーに勝ってぇ、プロチームにスカウトされてぇ、もっともっとチヤホヤされたぁ~い!!」
そしてこの最強チームは、その圧倒的な強さ故に現在日本中の猛者達から狙われる立場にあった。
彼らが活躍する『バンクエットオブレジェンズ プロリーグ』は全プレイヤーの目標でもあるのだが、その夢の場に立つ為の具体的な方法は存在しない。何故ならプロリーグでは、全てのプレイヤーがチーム側よりスカウトを受け出場する事と成っているからだ。
そしてそれは言い換えれば、どんなに強いプレイヤーでもチーム側からのスカウトが無ければプロには成れないという事。
それ故全ての夢あるプレイヤー達は常にアピールの場を探しているのだ。皆自分の実力を見せ付けられる場に飢えている。
それが今回、大量の怪物達がこの浅瀬へと一斉浮上してきた理由であった。
「てかッ、エターナルグローリーって何だよ! ただ顔が良いから注目されてるだけじゃねえか。本当は俺ちゃんの方が強いのに!! ほんとスカウトの奴らは見る目かねえなァ!」
今このランクマッチに押し寄せて来ている猛者達が望む事はただ一つ、最強のチームを倒して全世界へとアピールする事。
そしてその遥かに高い目標を掲げている彼らにとって、ランクマッチで多少名を挙げた程度のプレイヤーなど対戦相手とすら認識してはいなかった。
唯の道端に落ちている石ころ同然だ。
「……飽きた、流石に飽きてきたなぁ~歯ごたえ無さ過ぎて飽きたわ! よし、後の試合はエターナルグローリーに当たるまで他のメンバーに任せよう。人数一人分くらいハンデがあった方があいつらも楽しめるだろうしッ」
そう言って現在進行形で行われている試合に興味を失ったMerlinはマップを閉じ、別のウィンドウを開く。
其処に表示されたのは試合と一切関係の無い、動画投稿サイトの画面。
「それじゃあ拙者は試合が終わるまでユーチューブでも見て時間を潰すでごさる。ブヒッブヒヒッ…………
………………………………………………………………………………」
ピロンッ
「ん”ん”? 何でござるか? 拙者今ヒカリエナギたんのライブ映像に映り込んだパンチラを探すのに忙しいでごわすのに。あっ、今ちょっと見えッ…………」
ブオ″ォ″ォ″ン″ッ!!!!
ウィザードの使命とも呼べるマップを眺める事さえ辞め、お気に入りのバーチャルアイドルの映像を鼻息荒く眺める彼にとある通知が届く。
しかしそんな物、シークバーを前後させアイドルの下着の色を探るので手一杯な彼にはノイズでしかない。
無視して画面を食い入る様に眺め作業を続けていると、次は突如吹き抜けた疾風が彼の身体を包み込む。
………………………………………ゴトッ
そして、その風が草花を靡かせる音が消えた数秒後、何かボーリング玉の様な質量の物体が落下する音が聞こえたのであった。
【絶零竜バシリイツクがプレイヤー コード・ジークにより討伐されました。以降竜の巣はチームレッドの陣地へと組み込まれます】
【キルログ コード・ジーク→Merlin✖️】
不意打ちを読まれ、無残にも敵ナイトに倒されたバンディットのキルログが全プレイヤーへと駆け巡る。
その通知を陣地の奥深にて受け取ったとあるプレイヤーは、弾かれた様にマップを開く。そしてまるでピアノの鍵盤を叩くような滑らか極まる運指で入力し、この展開を遙か序盤より予見し生成しておいた魔方陣を消費。
そして、中立地帯と敵陣の丁度境界線辺りに大規模魔法を放ったのであった。
「……ダハッ」
【戦術魔法:ヘブンズウォール】
彼が放った魔法、ヘブンズウォ-ルはフィールド上に光の壁を生み出し往来に制限をかける事が出来る魔法だ。
本来は敵から侵攻を受けそうな時や孤立した仲間を敵から遮る時に使用する防御の一手。しかし彼は敵に対する意趣返しとして、その防御を攻撃に転用してみせたのである。
「3……2……1……ゼロ」
【キルログ Arthur→ヤミコ✖】
【プレイヤー Arthurが最高レベルへ到達。チームブルーにレベル10プレイヤーが誕生しました、勝利は目前です】
彼の生み出した壁に突然退路を絶たれ、逃げ場が無くなったアーチャーを先程背後からバンデットを斬りつけたプレイヤーが連続でキルする。
その結果、彼らのチームにレベル10プレイヤーが誕生する事となった。
「ダハッ、ハハッ……ダハハハハハハハハハハハハハハッ!! 余裕、超余裕!! オレちゃんの推理またまた大当たりッ。 釣りが見え見え過ぎて逆に釣り返してやったわザ~コ!!!!」
その上々過ぎる結果に、品という物が一欠片すら聞き取れぬ声で爆笑する彼のプレイヤーネームは『Merlin』。メンバーの名前が全てアーサー王伝説の登場人物で固められたチーム『円卓の騎士団』のリーダーである。
円卓の騎士団は先日バンクエットオブレジェンズの大型公式イベントBCFの中で行われた大会で準優勝を果たした事で有名な、今最もプロリーグ入りに近いと言われるチームの一つ。
そしてそのリーダーである彼、Merlinは優れた戦術眼と心理洞察力でチームに数多のタイトルを齎した日本指折りのウィザード。この男に掛かれば、敵の作戦を看破し誘導されている方向から逆に伏兵の位置を割り出すなど造作も無かったのである。
「凄え久しぶりにランクマ何て来たけどぉ、やっぱ所詮はこんな物か~。ぬる過ぎてつまんねえわ! 早く出て来いよエターナルグローリーさんよおッ、ボコボコのケチョンケチョンにしてやんよー!!」
彼ら、円卓の騎士団は基本ランクマッチで試合を行う事はない。
真の強者は初心者もチーターもごった煮と成っている公式のランクマッチなど使わないのだ。
彼らが普段練習に使用しているのは『VIPマッチ』と呼ばれる選手達によって作られたコミュニティ。
このVIPマッチは全チームの上位10%のみが登録でき、その上位チーム同士が対戦し高め合う為に作られた場。それ故当然プレイヤーの質は高く、技量が一定より上のプレイヤーは殆ど此方のコミュニティを利用してゲームをプレイしている。
そしてそんなトップもトップ、プロプレイヤーすら利用している場で戦っている彼らにとって、このランクマッチという戦場は使う選択肢にすら入り得ない場末なのだ。
しかし其れでは何故彼らは今ランクマッチをプレイしているのか。
それは、今現在この場を利用して行われているとあるイベントに理由があった。
『エターナルグローリーチャレンジ ランクマッチで100連勝に挑戦!!』そう銘打った公式イベントが現在このランクマッチでは行われている。
そのイベントはゲームの新規層獲得を目的とした、プロチームのプレイヤーが出演するインターネット生中継の催し物。しかし今このランクマッチに集っている怪物達にとって、そんな表向きの目的など如何でも良いのだ。
彼らにとって重要なのは、イベントに何のチームが参加して、どのプレイヤーが出るのかという事。
このイベントのメインを張っているのはタイトルにも成っている『エターナルグローリー』というプロチーム。現在国内公式戦では147戦全勝を誇っている最強の集団だ。
更にエターナルグローリーはバンクエットオブレジェンズ最大の大会であるプロリーグで現在頂点に立っており、世界ランキング3位、ジャパンランキング1位、リーグ優勝3回という桁違いの成績を誇っている。
「勝ちた~い、エターナルグローリーに勝ちた~い! エターナルグローリーに勝ってぇ、プロチームにスカウトされてぇ、もっともっとチヤホヤされたぁ~い!!」
そしてこの最強チームは、その圧倒的な強さ故に現在日本中の猛者達から狙われる立場にあった。
彼らが活躍する『バンクエットオブレジェンズ プロリーグ』は全プレイヤーの目標でもあるのだが、その夢の場に立つ為の具体的な方法は存在しない。何故ならプロリーグでは、全てのプレイヤーがチーム側よりスカウトを受け出場する事と成っているからだ。
そしてそれは言い換えれば、どんなに強いプレイヤーでもチーム側からのスカウトが無ければプロには成れないという事。
それ故全ての夢あるプレイヤー達は常にアピールの場を探しているのだ。皆自分の実力を見せ付けられる場に飢えている。
それが今回、大量の怪物達がこの浅瀬へと一斉浮上してきた理由であった。
「てかッ、エターナルグローリーって何だよ! ただ顔が良いから注目されてるだけじゃねえか。本当は俺ちゃんの方が強いのに!! ほんとスカウトの奴らは見る目かねえなァ!」
今このランクマッチに押し寄せて来ている猛者達が望む事はただ一つ、最強のチームを倒して全世界へとアピールする事。
そしてその遥かに高い目標を掲げている彼らにとって、ランクマッチで多少名を挙げた程度のプレイヤーなど対戦相手とすら認識してはいなかった。
唯の道端に落ちている石ころ同然だ。
「……飽きた、流石に飽きてきたなぁ~歯ごたえ無さ過ぎて飽きたわ! よし、後の試合はエターナルグローリーに当たるまで他のメンバーに任せよう。人数一人分くらいハンデがあった方があいつらも楽しめるだろうしッ」
そう言って現在進行形で行われている試合に興味を失ったMerlinはマップを閉じ、別のウィンドウを開く。
其処に表示されたのは試合と一切関係の無い、動画投稿サイトの画面。
「それじゃあ拙者は試合が終わるまでユーチューブでも見て時間を潰すでごさる。ブヒッブヒヒッ…………
………………………………………………………………………………」
ピロンッ
「ん”ん”? 何でござるか? 拙者今ヒカリエナギたんのライブ映像に映り込んだパンチラを探すのに忙しいでごわすのに。あっ、今ちょっと見えッ…………」
ブオ″ォ″ォ″ン″ッ!!!!
ウィザードの使命とも呼べるマップを眺める事さえ辞め、お気に入りのバーチャルアイドルの映像を鼻息荒く眺める彼にとある通知が届く。
しかしそんな物、シークバーを前後させアイドルの下着の色を探るので手一杯な彼にはノイズでしかない。
無視して画面を食い入る様に眺め作業を続けていると、次は突如吹き抜けた疾風が彼の身体を包み込む。
………………………………………ゴトッ
そして、その風が草花を靡かせる音が消えた数秒後、何かボーリング玉の様な質量の物体が落下する音が聞こえたのであった。
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