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第五話 最強の敵②
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「あの、此処で何してるんです…?」
言った後にしまったと思った。もっともオブラートに包み穏便な言葉を選べば良かったと。
「ああ、ごめんね。突然押しかけちゃって」
しかしそのジークのぶっきらぼうな言葉に対して、元チームメイト達はニコニコとした笑顔のまま顔を上げる。そして何故彼らが此処に居るのかをその表情のまま話してくれた。
記憶の中の、自分が口を開かずとも刻一刻眉間の皺が深く成っていく様子とは大違いである。
「いやぁ、恥ずかしながら僕達は早々にキルされて試合を傍観してたんだけど君のプレイに感動してね。この感動のお礼を言いたくて待ってたんだ。ありがとう、まさかこんなに強いアサシンを見られる何て思わなかったッ」
「君メチャクチャ強いじゃん!! さっき戦ってたのって大会実績がヤバい有名なチーム何でしょ? それを一人で全滅させるってマジ格好良かった。若しかして君も有名な人のサブアカか何かなの?? 後でライン交換しよー」
「私はお二人と違って乙ってはいませんから、現地で見た彼の動きは凄まじかったですよ。目にも留まらぬ速さとはこの事を言うのですね。正直何を行っていたのかは分かりませんでしたが、貴方と最後まであの場に立てていた事は私の誇りです」
「本当に最初から最後まで立ってるだけだったけどね~」
「そッ、そんな事はありません! 最後壁を作り彼の元へ敵を誘導したのは私だという事をお忘れ無く!!」
「でもその作戦を思い付いたのも彼なんだろ? あの戦闘力に加えて頭脳まで持ち合わせてるとは凄まじいな。エースを変わるとか作戦があるとか言ってた自分が恥ずかしく成るよッ…」
「マジそれな~、今思ったら初心者とか馬鹿にしてた私も恥ずかし過ぎて死ねるわ。でも初期スキンのアサシンが来たら普通誰でも地雷踏んだと思うじゃん?」
「…………………」
ジークは、今自分がどんな顔をしているのか分からなかった。
愛想笑いをしているのか、顰めっ面をしているのか、恥ずかしそうにしているのか、将又何の表情も浮かんではいないのか。たった今体験した人生未体験の感情が、どう顔に表れているのか全く検討が付かなかったのである。
だがそれも仕方無いだろう。何故なら自分は今ゲームが上手い事を賞賛されているのだから。
これ程奇妙な事が他にあるだろうか?
自分はゲームを遊んでいるだけ。唯遊ばせて貰っているだけ。
誰も幸せに何てしていない、何の生産性もない、自己満足以外の何物でもないのだ。そんな人間に一体何を褒める事が有ろうか。彼らのゲームが上手いからと賞賛するその情緒が理解できなかった。
遊びが上手いという誰も幸せにしない才能の一体何を………………
「どうかな?」
「…ッは、はい!?」
まるで病夜に見る支離滅裂な夢の如きその光景にジークはリアルを感じられず、気がそぞろと成っていた。
しかしそんな所へ突如質問の矢印が向く。そしてそれに驚いた彼の口より反射的に『はい』という音が出てしまったのである。
するとその結果焦点が跳ね戻ってきた彼の視界の中で、みるみる内にチームメイト達の表情が明るく成っていったのだった。
「本当かい!? 嬉しいよ、こんなに強いプレイヤーと一緒に戦える機会なんて滅多に無いからね。近くで見て勉強させてもらいますッ」
「え?」
「マジ心強いんですけど~!! この人居たら負ける訳無いじゃんッ、今日でめちゃくちゃポイント盛りまくってリア友に自慢しよー!!」
「そうですね、ウォーリアクラスは野球で言う所のピッチャー。この方さえ居ればイベント目的で潜ってきているセミプロ達が相手でも負ける気がしません。それに、若しかしたら……」
「……な、何んですかッ?」
「若しかするとこのお方なら、あのレッドバロンすら倒せるかも知れませんよ!! だってあの速度、例えトッププロだろうと人間に対応出来る物だとは思えませんッ。この私は現地で見たのですから間違いないッ!!」
「マジッ!? でもそれが出来たら一気に超有名人じゃん! やばッ、歴史的瞬間にあたし立ち会っちゃうかも~」
「れっど、ばろん……? 歴史的瞬間?」
「こらこら皆、余り彼におんぶ抱っこされてちゃ悪いよ。だってほら、アカウントまで新しく作って初心者に扮してるって事は……貴方は身バレせず気軽にゲームをプレイしたいプロの方なんですよね?」
「はい? え、ちがッ…」
「やっぱりそうみたいだ! あの円卓の騎士団をボコボコにしたんだからそれ位は有ると勘付いてましたよ。でも安心して下さい、この事は僕達の胸にだけ刻んでおきます。それじゃあ余り時間を取らせるのも悪いし、早速2戦目へ行こうか皆ッ!!」
「おーー!! やばッ、何か急に緊張してきたwww」
「サポートはお任せ下さい。全力でアサシン様のプレイを後方より支援させて頂きます!!」
「じゃあ皆準備は良さそうだしマッチングを開始するね。僕も次こそは足を引っ張らず役に立ちますよ!」
「…………………………………………」
嵐の如く訳の分からない言葉が押し寄せ、ジークは呆然と自分を囲む三人の間で視線をキョロ付かせる事しか出来ない。
しかも彼は何一つ疑問符の付かない音を発してはいないというのに、何故かトントン拍子で話が進んでいくのだ。
そしてその余りに自分の意志が反映されぬ状況にジークが等々ドッキリか新手の詐欺を疑い始めた所で、2戦目の試合が始まってしまった。
ついさっきもう二度とバンクエットオブレジェンズはプレイしないと心に決めたばかりだと言うのに、彼はものの数分でその誓いを破る事と成ってしまったのである。
だがこの嵐が如き三人組を、ジークは後に振り返った時心の底から感謝する事となる。
何故ならこの瞬間から、あの男と戦いそして世界の広さを知った瞬間から、群雲疾風という人間の人生が大きく動き始める事と成るのだから。
若しも自分の人生が本に成るとして、最初の1ページは間違い無く今日この日であろう。
- - - - - -
「まさか、一日に三度も自分の弱さを痛感する事になるとは……思わなかったな。こんなにプロ、日本の頂点が遠いとはッ」
「君は強かったよ。ナイスファイト」
ズバァァン”ッ!!
今度こそは足を引っ張らないと言っておきながら、バンディットは正しく手も足も出ないという有様でその男の経験値と化す事と成った。だがにも関わらず彼の表情には何とも満ち足りた笑顔が浮かび、光の粒と成って消えたのである。
キルした相手に悔しさではなく歓喜を齎せるプレイヤーなど、この日本には彼しか居ないだろう。
バンクエットオブレジェンズプロリーグ最多キル、最多経験値獲得、最高キルレート、最低デス数、最多勝利記録保有。第一回、第二回、第三回リーグ優勝。バンクエットオブレジェンズワールドカップ準優勝。世界ランキング三位。ワールドプレイヤーレート世界第二位。
どの肩書き一つ取っても日本に比類する者無き正しく最強無敵。
「さあ、残るは後一人だ」
最強集団エターナルグローリーの絶対的エース、『レッドバロン』。最狂の鬼畜ゲーに育てられ今世に放たれた遊びの天才『コード・ジーク』。
この先幾度も覇を競う事となる二人の天才エースプレイヤー、その運命に導かれた最初の戦いが始まる。
言った後にしまったと思った。もっともオブラートに包み穏便な言葉を選べば良かったと。
「ああ、ごめんね。突然押しかけちゃって」
しかしそのジークのぶっきらぼうな言葉に対して、元チームメイト達はニコニコとした笑顔のまま顔を上げる。そして何故彼らが此処に居るのかをその表情のまま話してくれた。
記憶の中の、自分が口を開かずとも刻一刻眉間の皺が深く成っていく様子とは大違いである。
「いやぁ、恥ずかしながら僕達は早々にキルされて試合を傍観してたんだけど君のプレイに感動してね。この感動のお礼を言いたくて待ってたんだ。ありがとう、まさかこんなに強いアサシンを見られる何て思わなかったッ」
「君メチャクチャ強いじゃん!! さっき戦ってたのって大会実績がヤバい有名なチーム何でしょ? それを一人で全滅させるってマジ格好良かった。若しかして君も有名な人のサブアカか何かなの?? 後でライン交換しよー」
「私はお二人と違って乙ってはいませんから、現地で見た彼の動きは凄まじかったですよ。目にも留まらぬ速さとはこの事を言うのですね。正直何を行っていたのかは分かりませんでしたが、貴方と最後まであの場に立てていた事は私の誇りです」
「本当に最初から最後まで立ってるだけだったけどね~」
「そッ、そんな事はありません! 最後壁を作り彼の元へ敵を誘導したのは私だという事をお忘れ無く!!」
「でもその作戦を思い付いたのも彼なんだろ? あの戦闘力に加えて頭脳まで持ち合わせてるとは凄まじいな。エースを変わるとか作戦があるとか言ってた自分が恥ずかしく成るよッ…」
「マジそれな~、今思ったら初心者とか馬鹿にしてた私も恥ずかし過ぎて死ねるわ。でも初期スキンのアサシンが来たら普通誰でも地雷踏んだと思うじゃん?」
「…………………」
ジークは、今自分がどんな顔をしているのか分からなかった。
愛想笑いをしているのか、顰めっ面をしているのか、恥ずかしそうにしているのか、将又何の表情も浮かんではいないのか。たった今体験した人生未体験の感情が、どう顔に表れているのか全く検討が付かなかったのである。
だがそれも仕方無いだろう。何故なら自分は今ゲームが上手い事を賞賛されているのだから。
これ程奇妙な事が他にあるだろうか?
自分はゲームを遊んでいるだけ。唯遊ばせて貰っているだけ。
誰も幸せに何てしていない、何の生産性もない、自己満足以外の何物でもないのだ。そんな人間に一体何を褒める事が有ろうか。彼らのゲームが上手いからと賞賛するその情緒が理解できなかった。
遊びが上手いという誰も幸せにしない才能の一体何を………………
「どうかな?」
「…ッは、はい!?」
まるで病夜に見る支離滅裂な夢の如きその光景にジークはリアルを感じられず、気がそぞろと成っていた。
しかしそんな所へ突如質問の矢印が向く。そしてそれに驚いた彼の口より反射的に『はい』という音が出てしまったのである。
するとその結果焦点が跳ね戻ってきた彼の視界の中で、みるみる内にチームメイト達の表情が明るく成っていったのだった。
「本当かい!? 嬉しいよ、こんなに強いプレイヤーと一緒に戦える機会なんて滅多に無いからね。近くで見て勉強させてもらいますッ」
「え?」
「マジ心強いんですけど~!! この人居たら負ける訳無いじゃんッ、今日でめちゃくちゃポイント盛りまくってリア友に自慢しよー!!」
「そうですね、ウォーリアクラスは野球で言う所のピッチャー。この方さえ居ればイベント目的で潜ってきているセミプロ達が相手でも負ける気がしません。それに、若しかしたら……」
「……な、何んですかッ?」
「若しかするとこのお方なら、あのレッドバロンすら倒せるかも知れませんよ!! だってあの速度、例えトッププロだろうと人間に対応出来る物だとは思えませんッ。この私は現地で見たのですから間違いないッ!!」
「マジッ!? でもそれが出来たら一気に超有名人じゃん! やばッ、歴史的瞬間にあたし立ち会っちゃうかも~」
「れっど、ばろん……? 歴史的瞬間?」
「こらこら皆、余り彼におんぶ抱っこされてちゃ悪いよ。だってほら、アカウントまで新しく作って初心者に扮してるって事は……貴方は身バレせず気軽にゲームをプレイしたいプロの方なんですよね?」
「はい? え、ちがッ…」
「やっぱりそうみたいだ! あの円卓の騎士団をボコボコにしたんだからそれ位は有ると勘付いてましたよ。でも安心して下さい、この事は僕達の胸にだけ刻んでおきます。それじゃあ余り時間を取らせるのも悪いし、早速2戦目へ行こうか皆ッ!!」
「おーー!! やばッ、何か急に緊張してきたwww」
「サポートはお任せ下さい。全力でアサシン様のプレイを後方より支援させて頂きます!!」
「じゃあ皆準備は良さそうだしマッチングを開始するね。僕も次こそは足を引っ張らず役に立ちますよ!」
「…………………………………………」
嵐の如く訳の分からない言葉が押し寄せ、ジークは呆然と自分を囲む三人の間で視線をキョロ付かせる事しか出来ない。
しかも彼は何一つ疑問符の付かない音を発してはいないというのに、何故かトントン拍子で話が進んでいくのだ。
そしてその余りに自分の意志が反映されぬ状況にジークが等々ドッキリか新手の詐欺を疑い始めた所で、2戦目の試合が始まってしまった。
ついさっきもう二度とバンクエットオブレジェンズはプレイしないと心に決めたばかりだと言うのに、彼はものの数分でその誓いを破る事と成ってしまったのである。
だがこの嵐が如き三人組を、ジークは後に振り返った時心の底から感謝する事となる。
何故ならこの瞬間から、あの男と戦いそして世界の広さを知った瞬間から、群雲疾風という人間の人生が大きく動き始める事と成るのだから。
若しも自分の人生が本に成るとして、最初の1ページは間違い無く今日この日であろう。
- - - - - -
「まさか、一日に三度も自分の弱さを痛感する事になるとは……思わなかったな。こんなにプロ、日本の頂点が遠いとはッ」
「君は強かったよ。ナイスファイト」
ズバァァン”ッ!!
今度こそは足を引っ張らないと言っておきながら、バンディットは正しく手も足も出ないという有様でその男の経験値と化す事と成った。だがにも関わらず彼の表情には何とも満ち足りた笑顔が浮かび、光の粒と成って消えたのである。
キルした相手に悔しさではなく歓喜を齎せるプレイヤーなど、この日本には彼しか居ないだろう。
バンクエットオブレジェンズプロリーグ最多キル、最多経験値獲得、最高キルレート、最低デス数、最多勝利記録保有。第一回、第二回、第三回リーグ優勝。バンクエットオブレジェンズワールドカップ準優勝。世界ランキング三位。ワールドプレイヤーレート世界第二位。
どの肩書き一つ取っても日本に比類する者無き正しく最強無敵。
「さあ、残るは後一人だ」
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