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第五話 最強の敵⑩
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ガボッ………………
「ふぅ………………ッ」
戦いを終え、現実世界(彼にとっての非現実世界)へと戻って来た疾風。しかしその顔は、仮想世界へ行く前と全くの別物に成っていたのである。
何処か満ち足りた様な、悔しい様な、でもやっぱり嬉しい様な、そんな表情が彼の顔を埋めていた。
ずっと、一人だと思っていたのだ。自分と同じ世界に立ってくれる人間なんてもうこの世に居ないと思っていた。
だが今日思いもせず出会ったのである、自分と対等に渡り合いそれどころか圧倒してくれる程の天才に。今の自分では勝てないと直感的に悟る程の敵と出会うのは、人間相手では始めての経験であった。
互いに、一発クリティカルヒットが出れば勝ちの殆ど同じ条件。しかしそれでこれ程までに強いのかと今思い出すだけでも衝撃で胸がバクバクしてくる。
今まで攻撃を掠っただけでも即死な敵や、ステージ全体に即死攻撃を放って来る敵、攻撃可能なタイミングが一時間に一瞬しか訪れない敵など理不尽の権化が如き相手を数え切れない程倒してきた。
だがそれらよりも、今日戦ったあの男の瞼に焼付いた幻影の方が何倍も強く映ったのである。
今は勝ち方さえ思い付く事が出来ない、少なくとも武井壮とライオン以上には力が離れている状況だ。これがあと数時間、数十時間、数百時間と練習すれば変わるのかは未だ分からない。
しかし一つ確かなのは、これから暫くぶつかるべき壁には困らないだろうという事。
「レッドバロン……オレはお前を倒すぞ。此れからお前を倒すまで、オレはその為だけに生きるー!! うおおおおおおおおおおおおおお!!」
寝っ転がったベッドの上で背伸びをする動作に合わせ、オレは久し振りに腹の底から声を出した。
油を差していない機械の如く成っていた身体の節々が痛む、震え慣れていない声帯が痛む、思い切り振り上げた腕がベッドのヘッドボードにぶつかって痛む。だがその痛みすらも今は心地良かったのだ。
目標を見付けるだけでこうも変わる物かと、そう我ながら思ったのである。
タンッ
そしてベッドから跳ねる様に降りた疾風の瞳には、もう嘗ての淀んだ闇はなく煌々とした希望の光に満ちていたのだった。
「ふぅ………………ッ」
戦いを終え、現実世界(彼にとっての非現実世界)へと戻って来た疾風。しかしその顔は、仮想世界へ行く前と全くの別物に成っていたのである。
何処か満ち足りた様な、悔しい様な、でもやっぱり嬉しい様な、そんな表情が彼の顔を埋めていた。
ずっと、一人だと思っていたのだ。自分と同じ世界に立ってくれる人間なんてもうこの世に居ないと思っていた。
だが今日思いもせず出会ったのである、自分と対等に渡り合いそれどころか圧倒してくれる程の天才に。今の自分では勝てないと直感的に悟る程の敵と出会うのは、人間相手では始めての経験であった。
互いに、一発クリティカルヒットが出れば勝ちの殆ど同じ条件。しかしそれでこれ程までに強いのかと今思い出すだけでも衝撃で胸がバクバクしてくる。
今まで攻撃を掠っただけでも即死な敵や、ステージ全体に即死攻撃を放って来る敵、攻撃可能なタイミングが一時間に一瞬しか訪れない敵など理不尽の権化が如き相手を数え切れない程倒してきた。
だがそれらよりも、今日戦ったあの男の瞼に焼付いた幻影の方が何倍も強く映ったのである。
今は勝ち方さえ思い付く事が出来ない、少なくとも武井壮とライオン以上には力が離れている状況だ。これがあと数時間、数十時間、数百時間と練習すれば変わるのかは未だ分からない。
しかし一つ確かなのは、これから暫くぶつかるべき壁には困らないだろうという事。
「レッドバロン……オレはお前を倒すぞ。此れからお前を倒すまで、オレはその為だけに生きるー!! うおおおおおおおおおおおおおお!!」
寝っ転がったベッドの上で背伸びをする動作に合わせ、オレは久し振りに腹の底から声を出した。
油を差していない機械の如く成っていた身体の節々が痛む、震え慣れていない声帯が痛む、思い切り振り上げた腕がベッドのヘッドボードにぶつかって痛む。だがその痛みすらも今は心地良かったのだ。
目標を見付けるだけでこうも変わる物かと、そう我ながら思ったのである。
タンッ
そしてベッドから跳ねる様に降りた疾風の瞳には、もう嘗ての淀んだ闇はなく煌々とした希望の光に満ちていたのだった。
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