7 / 31
第一話 ヒーローとヴィラン④
しおりを挟む
高性能カメラによって捉えられたハルトマンが殺人光線に呑み込まれていく光景を前に地上の人々は唯々硬直し、言葉を失う。
しかし突如一人の女性が悲鳴を上げた。そしてまるでそれが起爆スイッチであったかの様に至るところから同様の悲鳴が上がり、大の大人にも拘わらず涙を流す者まで現われる。
パニックが瞬く間に人と人との間を伝染していく。
地上はまるでその場の全員が同時に余命宣告されたが如き阿鼻叫喚。しかしその中で唯一人真っ赤な髪をした青年だけが笑顔を浮べ、歓声と共に拳を掲げた。
「「いけるッ、いけるぞォォォッ!!」」
一万メートル上空に居るディックと地上の青年の声が運命的に重なる。
ディックとハルトマンの戦績は今の所ディックの九十八戦九十八敗という言い訳すらさせて貰えない完敗状態。どんなに頭を捻らせ時間を捧げた作戦も正面から圧倒的な力によりねじ伏せられてきた。
だがしかし、どうやらそれらは全て無駄ではなかったらしい。無様に積み重ねられてきた敗北が堆肥となり、遂に芽が出て実を結んだのだ。
現在ハルトマンはライオンに追い詰められたアルマジロの如くに身体を丸め防戦一方。頭の中で思い描いていた絵がそのまま現実として数百メートル先で展開されているのだ。鼻先を今まで嗅いだ事の無い程濃厚な勝利の匂いが掠めていく。
「ニカ、ミサイルは後何発残っている?」
『え~とね、残り七発だね』
「そうか……ではその全てを奴にぶち込んでやれ!! このまま一方的に主導権を握り続ける。レーザーもミサイルも出し惜しみ無く叩き込んで全てのエネルギーを吐き出させてやろうではないか。奴も無限ではない筈だ、今日という今日は本当に勝てるかも知れへんでッ!!」
ついうっかり何時もの口調が漏れてしまう。しかしそれに気づけない程今のディックは興奮していた。
彼は今まで一度たりともハルトマンにダメージを与えられた事が無い、全てプラズマシールドという最強の盾に防がれてきたからだ。対戦車用のロケットランチャーの直撃でさえ傷一つ創る事の出来ない驚異的な防御性能が高い壁として立ち塞がり、如何なる攻撃も弾き返されてきた。
しかしこの世に無限はあり得ない、この世界に存在する物は全て唯存在するだけで相応の対価を払い続けているのだ。そして奴だけその理を逸脱している筈が無い、必ずあの脅威的な防御力を維持する為に何かを消費し続けている。
ならば絶えず攻撃を続け奴に元手を全て吐き出させてしまえば、最強の盾だろうと破ることは可能な筈だった。
(小さな街一個分の電力と対艦用ミサイルを持って来とるんや、流石にそれ全部喰らって今まで通りとはいかんやろッ)
始めて見られるかも知れないハルトマンの動揺した姿を描いた脳内キャンパスを七発のミサイルが貫く。同時に引き金に掛けられた指も緩められる事無く、七色が折り重なった光の層へ更に爆発の閃光が重なる。
鼓膜に痛みを覚える轟音、そして視覚を数秒麻痺させる光と空が降ってきたと思う程の衝撃波を受け彼の乗る飛行物体が大きく揺らされた。着弾点から300メートル離れた地点でもそれ程の余波を受ける超巨大爆発が発生したのである。
しかし突如一人の女性が悲鳴を上げた。そしてまるでそれが起爆スイッチであったかの様に至るところから同様の悲鳴が上がり、大の大人にも拘わらず涙を流す者まで現われる。
パニックが瞬く間に人と人との間を伝染していく。
地上はまるでその場の全員が同時に余命宣告されたが如き阿鼻叫喚。しかしその中で唯一人真っ赤な髪をした青年だけが笑顔を浮べ、歓声と共に拳を掲げた。
「「いけるッ、いけるぞォォォッ!!」」
一万メートル上空に居るディックと地上の青年の声が運命的に重なる。
ディックとハルトマンの戦績は今の所ディックの九十八戦九十八敗という言い訳すらさせて貰えない完敗状態。どんなに頭を捻らせ時間を捧げた作戦も正面から圧倒的な力によりねじ伏せられてきた。
だがしかし、どうやらそれらは全て無駄ではなかったらしい。無様に積み重ねられてきた敗北が堆肥となり、遂に芽が出て実を結んだのだ。
現在ハルトマンはライオンに追い詰められたアルマジロの如くに身体を丸め防戦一方。頭の中で思い描いていた絵がそのまま現実として数百メートル先で展開されているのだ。鼻先を今まで嗅いだ事の無い程濃厚な勝利の匂いが掠めていく。
「ニカ、ミサイルは後何発残っている?」
『え~とね、残り七発だね』
「そうか……ではその全てを奴にぶち込んでやれ!! このまま一方的に主導権を握り続ける。レーザーもミサイルも出し惜しみ無く叩き込んで全てのエネルギーを吐き出させてやろうではないか。奴も無限ではない筈だ、今日という今日は本当に勝てるかも知れへんでッ!!」
ついうっかり何時もの口調が漏れてしまう。しかしそれに気づけない程今のディックは興奮していた。
彼は今まで一度たりともハルトマンにダメージを与えられた事が無い、全てプラズマシールドという最強の盾に防がれてきたからだ。対戦車用のロケットランチャーの直撃でさえ傷一つ創る事の出来ない驚異的な防御性能が高い壁として立ち塞がり、如何なる攻撃も弾き返されてきた。
しかしこの世に無限はあり得ない、この世界に存在する物は全て唯存在するだけで相応の対価を払い続けているのだ。そして奴だけその理を逸脱している筈が無い、必ずあの脅威的な防御力を維持する為に何かを消費し続けている。
ならば絶えず攻撃を続け奴に元手を全て吐き出させてしまえば、最強の盾だろうと破ることは可能な筈だった。
(小さな街一個分の電力と対艦用ミサイルを持って来とるんや、流石にそれ全部喰らって今まで通りとはいかんやろッ)
始めて見られるかも知れないハルトマンの動揺した姿を描いた脳内キャンパスを七発のミサイルが貫く。同時に引き金に掛けられた指も緩められる事無く、七色が折り重なった光の層へ更に爆発の閃光が重なる。
鼓膜に痛みを覚える轟音、そして視覚を数秒麻痺させる光と空が降ってきたと思う程の衝撃波を受け彼の乗る飛行物体が大きく揺らされた。着弾点から300メートル離れた地点でもそれ程の余波を受ける超巨大爆発が発生したのである。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる