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皆川兄妹の受難
しおりを挟む「「おはよう!朝だよ!起きて!」」
今日も皆川家にある兄妹それぞれの部屋から、元気のよい声が響いている。声の主は甲斐家の姉弟である美代子と悠真のものだ。
美代子は兄妹の兄である樹の部屋に、悠真は妹の真希の部屋に勝手に入り朝を告げる。これは皆川家ではもう何年も続く、見慣れた光景だった。
「美代子、勝手に部屋入らないでって言ったよね?」
「樹ぃ、そんな冷たいこと言っちゃイヤ!」
「悠真、部屋に入ってこないでって言ったでしょ!?」
「やだなぁ、僕と真希の仲じゃない」
おなじみの会話をした後、廊下に出た兄妹はお互いの顔を見て深くため息をついた。
((こんな漫画みたいな日常要らないから、放っておいてほしい……))
甲斐家と皆川家は、親同士がとてつもない仲良しな親友で、その子どもである同い年の兄妹姉弟も産まれた時から家族同然で育ってきた。が、ある程度成長した頃、皆川兄妹は自分達があまりにも違う人種と幼馴染だということに気が付いた。
甲斐家は両親がどちらも経営者でかなり裕福な家庭。その上、家族揃ってとんでもない美形一家であった。親も子も、どう良く見積もっても中の上近い中レベルの外見と、経済的にも平均位の皆川家とは普通なら縁のない相手だ。何故隣同士の家に住んでいるのか、本来あり得ないことだが、これが実現している理由はただ一つ。甲斐家両親は皆川家両親と親友だから。これに限る。
「お兄ちゃん、あの2人もうちょっと距離置いて欲しいよ」
「わかるよ。俺も毎日同じこと考えてる」
兄は高校生3年生に、妹は中学3年生になった現在。そんな会話をしながら、どんよりした空気の中朝食をとる2人と、その横にびっちり張り付く満面の笑みを浮かべた美形2人。当人を目の前にして平然とこんな会話ができるほど、兄妹はうんざりしていた。それに、何を言おうともこの姉弟は気にしない。ひたすら付き纏いかまってくるのだ。嫌味の一つくらい聞かせてやりたくなる。
「樹、はい。たまごはお醤油かけるでしょ?」
「……ありがとう」
「真希、朝はオレンジジュースでしょ?はいどうぞ」
「……うん」
食の好みやルーティンまで完璧に把握された2人に逃げ場はない。その様子を見ている親も、あら今日も仲良しで良いわねと言ってニコニコしているど天然たちのため、兄妹は逃げたくても逃げられず、こうして毎日を送っていた。
お互い多感な時期なので、いくら家族同然に育ったとはいえ、異性に至近距離で付き纏われるのは何かと恥ずかしいしイヤだとハッキリ言ったこともあったが、それでも
「「なんで?私(僕)はそんなことないよ?」」
の一言で片付けられてしまった。理由をいくら話しても全く理解してくれず、大好きだから離れたくないと言い張り、皆川兄妹が根負けして今に至っている。
「「行ってきます」」
どんより顔のまま、2人はそれぞれ通う学校へと向かう。その横にはニコニコ顔の2人がそれぞれについて行く。
「「行ってきまーす」」
樹と美代子は電車通学、真希と悠真は徒歩通学だ。
甲斐家の姉弟は私立に通うだろうと考えて自由な時間を夢見ていた3年前、その希望は見事に破られた。平凡な兄妹と同じく、公立の学校へと甲斐姉弟が進学することを知った皆川兄妹は、とてもがっかりしたのを今でも鮮明に思い出すことができる。
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