婚約破棄された王女はΩであることを隠したままΩ嫌いの王子に嫁ぐことになったので全て諦めて自由気ままに生きることにしたらなぜか溺愛されるように

音無砂月

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本章

21.壊れ始めた世界

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外の世界について無知であることは分かった。
私は王女だからアリソンが関わらせなかった。でも、これからはそうはいかないだろう。
私もいい加減、アリソンがいなくても一人で生きていけるようにならないと。

いつまで経ってもアリソンに迷惑をかけてしまう。

アンナには食事以外には部屋に入らないようにお願いをしておいた。本来ならこのお願いはする必要がないものだ。
だって、アルトゥールにいた時は食事の時ですら誰も私の部屋には来ない。

アリソンは忙しいから何日も姿を見せないことがあった。
何をしているのかは知らない。
聞いたら、私のために色々とやってくれていると言っていた。
Ωの私にはできないことがたくさんあるらしい。
それが何かは教えてはくれなかった。

「所詮できないのだから知る必要もありません」と言われてしまえば事実なので何も言えない。

きっと私に言っていないたくさんの負担を背負わせてしまったのだろう。
これを機に自分の人生を歩んでほしいと思う。

「邸から市井までは馬車でそう遠くなかったし、歩いていけるよね」

ここの食事は一日に三回もある。アルトゥールでは一日一回だった。だから、ここでもそうするようにお願いした。
なぜか変な顔をされたし、ダメだとも言われた。だけど、そう何度も部屋に来られるのは困る。

今後は自力で抑制剤を入手しなければならない。
昨日、確認した抑制剤の値段はかなり高額だった。売れる物はない。

出来損ないの王女にはまともなドレスも宝石さえもないから。

だから何度も用意されても私は一回しか食事に手をつけないと説得して、納得してもらった。これで、アンナは夕方まで私の部屋に来ることはない。

「この普段着なら市井にも紛れられるわね」

ドレスとは別に一着だけ持っている普段着の服は昨日見た平民が着ている普段着と遜色なかった。

「市井までの道は昨日、暗記した。街までは歩いて三十分、アンナが次に部屋を来るまでの時間を考えたら五時間くらいは働けるわね」

次の発情期まではまだ時間がある。それまでに何としてもお金を貯めて抑制剤を手に入れないと。

「ここが職業案内所」

アンナに色々と聞いて場所も覚えておいたし、職業にどんなものがあるかも聞いていたのである程度目星はついている。
ホテルの受付だ。時給がいいし、シフト制だからある程度自由が効く。
人前に出る仕事だけど、どうせ私が王太子妃として民衆の前に出ることはない。

今は私しかいないけど、やがて別のちゃんとした人が王太子妃として迎えられるはずだ。そうなれば、私は用済みとして捨てられるかこのままここに捨て置かれることになる。

どのようなことになろうとも一人で生きていける力を今のうちにつけておくことは大事だ。

「今日からここで働かせていただきます、ラティーシャと言います。初めてのことでご迷惑をおかけすることが多いと思いますが、精一杯勤めさせていただきますので、よろしくお願いします」

発情期で休まないといけないこともあるので、一応病弱ということにしてある。

「なんだか、姿勢といい言葉遣いといい、良いとことのお嬢様って感じみたいね」

一緒に受付嬢として働くことになったミーシャが不思議そうに私を見ていた。

「そんなことを言われたのは初めてです。何か、おかしいでしょうか?」
「ううん。お客様のお相手をする時には問題のない言葉遣いだと思う。チーフがあなたを即採用した理由が分かった」

アリソンは教育に関しては特に厳しかった。
私の母の出身はかなり低いせいで、王妃に相応しい立ち居振る舞いができないそうだ。そのせいで、陛下、つまり私の父がいつも苦労しているとアリソンは嘆いていた。

だから同じ轍を踏まないようにとアリソンは躾をしてくれた。

一つのミスも許さずに、完璧に仕上げてくれた。それも、私がΩだと発覚した途端全てを無駄にしてしまったけど。本当に申し訳ないことをしたと思う。

「体が弱いと聞いたわ。最初は慣れないことばかりで大変だと思うの。だからあまり無理しないでね。分からないことがあったら何でも聞いて」
「ありがとうございます」
「私に対して、そんなに丁寧な言葉は使わなくてもいいわよ。これから一緒に働くんだし、気楽にいきましょう」

そう言って屈託なく笑うミーシャはまるで太陽のように暖かい人だった。
良かった。ここでなら上手くやっていけそうだ。

†††

働き始めて一週間が経った。まだ慣れないし、かなり疲れるので邸に帰ると不眠症が嘘のようにぐっすりと眠れる日々が送れるようになった。
大変だけど、とても充実しているというか、ああ生きているというのはこういうことなんだと初めて実感した。

「ラティーシャって凄いのね」
「えっ」

一緒にお昼の休憩をとっていたミーシャが急にそう切り出した。
凄いなんて初めて言われた。

「だって、教えたことはすぐに覚えるし、一度したミスは絶対に次はしないじゃない」
「お前は何度も同じミスをするし、物覚えも悪かったな」
「ミストは黙っていて」

ミストというのはホテルのボーイだ。ミーシャや私たちとも年が近いので何かと話すことも多く、ミーシャを通してだけど私もそれなりに親しくしてもらっている。

「とにかく、ラティーシャって頭が良くて物覚えが良いよねって話し」
「あと美人だしな」
「本当、それ。普通に可愛い子はたくさんいるけど、ラティーシャほどの美人は見たことがないわ。ねぇ、ねぇ、恋人は?恋人は今まで何人いたの?」

「恋人なんて、いたことないわ」

婚約者はいたけど。でも、ミーシャが期待しているような話しはできない。そんな関係を私たちは築いてこなかった。

「うっそだぁ。よりどりみどりじゃない」
「私って、そんなに美人なの?」
「その顔で美人じゃないって言う方が無理だし、場合によっては嫌味になるよ。誰にも言われたことないの?」

「・・・・・その逆なら、言われたことがある」

アリソンに。

二人とも信じられないって顔をしていた。

「醜くて、卑しいから人前に出ることを禁じられていたわ」

見た目というよりも私がΩだからってことでアリソンはいったのでしょうけど。
もし、万人受けするような見た目ならそれも合わせて言っていたのかもしれない。だって、Ωは人を誘惑する卑しい存在だから。

「何それ、ただの嫉妬じゃん。真に受ける必要ないよ」
「ああ。お前を貶めたいがために言っただたの悪口だろ。そんなことを言う奴の性根の方が醜くて、卑しい」
「本当にね」
「・・・・・この話はここまでにしましょう。それよりも楽しい話題がいいわ」

なぜか、あまり聞かない方がいいと思った。
この先を聞いてしまったら、今までの自分を形成していた何かが壊れるような、そんな予感がしたのだ。
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