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22.取り扱い注意

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「リズ、怪我はありませんか?」
「ええ」
「良かった。あなたに万が一がないようにしていましたが気が気ではありませんでした」
私が森に捨てられたことを知っている。森で魔物に出くわさなかったのはエーベルハルトが手を打っていたから。彼はどこまで知っていて、いつからこの計画を立てていたのだろう。
「さぁ、リズ。帰りましょう」
「どこへ?」
「私とあなたの新しい住居です。そこでは死ぬまで二人きりです。もう誰にも私たちの邪魔はさせません」
微笑むエーベルハルトからは拒否を許さない圧が感じられた。
エーベルハルトは私の手を引いて、痛みに呻く騎士の横を通り過ぎる。
倒れている中には騎士として同じ任務に就いた者や共に過ごした者もいるはずなのに彼は気にも留めない。
彼の世界には自分と私しかいないのだ。
ここまでしてしまう程に彼は狂っている。
「エーベルハルト」
「何ですか、リズ」
「あなたと一緒に行くわ。でも、その前にブルーローズを取りに行かせて欲しいの。取り上げられてしまって」
「ああ、それならこちらで既に確保しているので大丈夫ですよ」
「そう。ありがとう」
「いいえ、当然のことです。でも、あなたと何度も死線を乗り越えた物だから敬意は評しますが私は心の狭い男なのであなたが気にかけ過ぎると嫉妬してしまいそうです」
「・・・・・・無機物よ」
「関係ありません」
彼は笑っていたけど目の奥は笑っていなかった。これ以上は食い下がらない方がいいだろう。
どんな理由があったにせよ、黙って彼の前から消えたのは私。最初に裏切ったのは私なのだから。
でも、一つだけ容認してはいけないことがある。
「エーベルハルト、彼らの治療をさせて」
「なぜ?」
体が強張り、ごくりと生唾を飲む。
一歩でも間違えれば奈落の底に落とされそうな危機感が私の肌を這いずり回る。
「あなたと何の憂いもなく過ごしたいから。私は小心者だから彼らを見逃したことをずっと気にしてしまう。そんなふうにあなたと過ごしたくはない」
大丈夫。私の優先順位はエーベルハルト。それさえ間違えなければ大丈夫のはずだ。
「聖女の力を使うわけじゃない。痛い思いはしたくないから。ただ普通に治療をするだけ」
「あなたが私以外の人間に触れることは許可できません。私はとても小さい人間なので、嫉妬で彼らを殺してしまいます」
そんな爽やかな笑顔で物騒なことを言わないでほしい。
やっぱりこのお願いは聞けないのかな。
「なので医者を手配します」
「いいの?」
思わず聞き返してしまった私にエーベルハルトは苦笑した。
「あなたの全てを雁字搦めにして、飼い殺しにしたいわけじゃない」
思った以上に彼が話の通じる状態だったことにほっと胸を撫で下ろすと「ただあなたが許可してくれるのなら喜んで私以外、考えられなくなるほど雁字搦めにします」と言われてしまった。
あっ、これは対応を間違えるとヤバいやつだと冷や汗をかいたことはエーベルハルトには内緒にしておこう。
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