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第1章
8.二人目の攻略対象者
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「今度から染粉じゃなくてカツラにしよう」
水をかけられたせいで殆ど染粉が落ちてしまった。
私は洗い場で頭から水をかぶり、染粉を全て洗い流す。
「何してんだ?」
「‥…」
赤い髪に金色の目、幼い顔立ちだけど成長すればかなりの美形になること間違いなし。
今はまだ幼いから悪ガキにしか見えないけど。
彼もパッケージに載っていた。
貴族名鑑には載っていない。ということは他国の人間。
アイルから聞いている攻略対象者に他国の人間が一人だけいた。
カーディル・オルジェイトゥ。オルジェイトゥ帝国の第一皇子であり、アシュベルの従兄。彼が私に声をかけてきた。何で他国の皇子がいるのかしら。従兄に会いに来たのかな。
「見て分かりませんか?頭を洗っています」
「何で?」
「汚れたからです」
私って脇役だよね。
どうしてこうも攻略対象者に立て続けに会うんだろう。
「カーディル、どうしたの?あれ、君はこの前の」
アシュベルがやって来た。
会いたくはなかったけど丁度良かった。
「お久しぶりです、バルトロマイ伯爵令息。会えて良かったです。こちら先日お借りしたハンカチになります」
「あ、ありがとう」
「いえ、こちらも助かりましたので」
アシュベルは困惑気味に私を見る。それもそうだろう。初対面では噴水に頭を突っ込んでびしょ濡れに。今は洗い場の水を頭からかぶってびしょ濡れに。
傍から見たら変な女だ。
「それでは失礼します」
私はヒロインではないし、彼らを攻略するつもりもないので好感度上げる気はない。よって、彼らに変な目で見られても問題はない。万が一に備えて悪印象さえ与えなければいいんだ。
「ま、待って」
「はい?」
アシュベルに引き留められた。何だろうと思って振り返るけど彼は直ぐには口を開かない。目を左右に動かした必死に言葉を探している感じだ。
「何でしょう?」
さっさとこの場を去りたい私に急かされてアシュベルは言葉をオブラートに包む方法を探しきれなかったのだろう。観念したように直接言ってきた。
「その服、侍女の服だよね。どうして君が着ているの?」
公爵令嬢なら縁のない服だ。
上級貴族が行儀見習いで一時的に侍女になることはあるけど公女の身分で行儀見習いをすることはあまりない。
「王女殿下の専属侍女を拝命しましたので」
「君が?」
「はい」
嘘をつく理由はないので本当のことを言った。アシュベルは余計に困惑したようだ。
「えっと、理由を聞いてもいい?」
公爵家の財政はそこまで厳しいのかもしれないという配慮があったのだろう。アシュベルはとても聞きづらそうに聞いて来た。
「王女殿下が望まれ、陛下と私の父が許可を致しました」
「‥‥‥」
私の身分を知っているアシュベルは絶句し、私の身分を知らないカーディルはアシュベルの反応が理解できず、私に答えを求めるように見てきた。
私はそれを黙殺して今度こそその場を離れた。
ごめんね、マヤ。アイルとしての君の好感度を下げたかもしれない。でも、自業自得だよね。ちょっとした意趣返しってことで黙って受け入れておいて。
水をかけられたせいで殆ど染粉が落ちてしまった。
私は洗い場で頭から水をかぶり、染粉を全て洗い流す。
「何してんだ?」
「‥…」
赤い髪に金色の目、幼い顔立ちだけど成長すればかなりの美形になること間違いなし。
今はまだ幼いから悪ガキにしか見えないけど。
彼もパッケージに載っていた。
貴族名鑑には載っていない。ということは他国の人間。
アイルから聞いている攻略対象者に他国の人間が一人だけいた。
カーディル・オルジェイトゥ。オルジェイトゥ帝国の第一皇子であり、アシュベルの従兄。彼が私に声をかけてきた。何で他国の皇子がいるのかしら。従兄に会いに来たのかな。
「見て分かりませんか?頭を洗っています」
「何で?」
「汚れたからです」
私って脇役だよね。
どうしてこうも攻略対象者に立て続けに会うんだろう。
「カーディル、どうしたの?あれ、君はこの前の」
アシュベルがやって来た。
会いたくはなかったけど丁度良かった。
「お久しぶりです、バルトロマイ伯爵令息。会えて良かったです。こちら先日お借りしたハンカチになります」
「あ、ありがとう」
「いえ、こちらも助かりましたので」
アシュベルは困惑気味に私を見る。それもそうだろう。初対面では噴水に頭を突っ込んでびしょ濡れに。今は洗い場の水を頭からかぶってびしょ濡れに。
傍から見たら変な女だ。
「それでは失礼します」
私はヒロインではないし、彼らを攻略するつもりもないので好感度上げる気はない。よって、彼らに変な目で見られても問題はない。万が一に備えて悪印象さえ与えなければいいんだ。
「ま、待って」
「はい?」
アシュベルに引き留められた。何だろうと思って振り返るけど彼は直ぐには口を開かない。目を左右に動かした必死に言葉を探している感じだ。
「何でしょう?」
さっさとこの場を去りたい私に急かされてアシュベルは言葉をオブラートに包む方法を探しきれなかったのだろう。観念したように直接言ってきた。
「その服、侍女の服だよね。どうして君が着ているの?」
公爵令嬢なら縁のない服だ。
上級貴族が行儀見習いで一時的に侍女になることはあるけど公女の身分で行儀見習いをすることはあまりない。
「王女殿下の専属侍女を拝命しましたので」
「君が?」
「はい」
嘘をつく理由はないので本当のことを言った。アシュベルは余計に困惑したようだ。
「えっと、理由を聞いてもいい?」
公爵家の財政はそこまで厳しいのかもしれないという配慮があったのだろう。アシュベルはとても聞きづらそうに聞いて来た。
「王女殿下が望まれ、陛下と私の父が許可を致しました」
「‥‥‥」
私の身分を知っているアシュベルは絶句し、私の身分を知らないカーディルはアシュベルの反応が理解できず、私に答えを求めるように見てきた。
私はそれを黙殺して今度こそその場を離れた。
ごめんね、マヤ。アイルとしての君の好感度を下げたかもしれない。でも、自業自得だよね。ちょっとした意趣返しってことで黙って受け入れておいて。
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