仄暗い部屋から

神崎真紅

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第二章

プロローグ

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……あれから五年の月日が流れた。
 今では覚醒剤を打たれる事に、違和感を持つ事すら忘れた瞳がいた。

 「瞳、腕を出せよ」

 「うん……」

 今では自分から腕を差し出す。
まるで当たり前の事の様になっていた。
 自分の血管に、針が刺さる様子をじっと見詰める瞳。
 覚醒剤が廻る…。
 熱が全身を駆け巡る。

 「あ、つい……」

 「熱いか?一番熱いのは、おまんこだろ?」

 瞳は自分で下着を脱ぎ出そうとする。
けれど思うように身体が動かない。
 賢司が自分に打ってから、瞳の服を脱がし始める。

 「瞳、俺の乳首を舐めろ」

 言われるままに、瞳は賢司の乳首を舐め出した。
けれど口がカラカラに渇いて、巧くいかない。

 「お…み…」

 賢司は無言のまま、水を口移しで飲ませた。
が、仰向けの瞳は殆ど飲めずに口の端から零れ落ちた。
そんな事はお構い無しに、賢司は言った。

 「休まずに舐めて俺を感じさせろよ」

…五年の月日は、こんなにも人を変えるものだろうか?
 瞳は賢司の言葉に、何一つ逆らう事はなかった。
まるで…。
 生きた人形の様になって、賢司に奉仕する瞳の姿は、哀しさすら漂っていた。

 「瞳は俺の奴隷だな?」

 「う…ん…」

そう瞳が答えると、嬉しそうに笑う。

 戻れない道を、ふたりは歩いて来た。
この先に何が待っている?
 破滅?
 至福?
そんな事誰にも判らない。無論、ふたりにも判る筈がなかった。
 狂った歯車は、軋む音を立てながらふたりを飲み込んでゆく…。

 覚醒剤はさすがに一週間も続けられないだろう。
 眠らず、食べる事もなくSEX のみに没頭する。
 薬が効いてる間は、疲れの自覚もない。
 気付く頃には、動く事すらままならない状態になっているだろう。

そこからが本当に辛いのだ。
 覚醒剤が身体から抜けるまで、だるくて何もしたくなくなる。

 ささいな事でいらいらする。
 幻覚、幻聴の類いが見え聞こえる。
 精神が崩壊しないでいられる保証など、どこにも存在しないのだ。

ましてやリスクが大きい。
いつ、何があって捕まるか判らない。
それでも辞められずに、どんどん深みに嵌まってしまう。

…それもその人の選んだ人生なのだろうか。

 中には自身の意思とは反する形で、いつの間にかジャンキーになってしまった哀しい人もいる。
そんな場合は、殆どが女性だ。
また、特殊な人もいる。
 覚醒剤がないと、食事も摂れない。
 眠る事も出来ない。
 動く事も、話す事も億劫になってしまう。
そんな人は三食覚醒剤を打って始めて、普通になるらしい。

…恐ろしい話だと思う。
けれど、意外に多いのだ。
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