貧乏貴族の領地経営

櫃まぶし

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3話 王都挨拶回り

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王都に着くとすぐに挨拶回りに行かなければならない。上級貴族の機嫌を損ねない。それが弱小貴族に求められる立ち振る舞いだ。まず挨拶しに向かうのはグーリンタス家。遠縁の親戚にあたる家だ。親戚とは言ってもこちらは田舎の男爵、向こうは王国の四大貴族の公爵。立場は全く対等ではない。グーリンタス家の屋敷に着くと、なんと当主が出迎えてくれた。当代のグーリンタス公爵は人柄の良さで知られている人で、当家のような弱小貴族ですら無下にしない。
「よくぞ参られた。御父上のことは残念だったね。何か困ったことがあれば遠慮なく私に相談してくれたまえ。」
グーリンタス公爵はそう言って歓迎してくれた。
「公爵直々に出迎えてくださりありがとうございます。お初にお目にかかります。エド=エルムントです。この度エルムント家の当主に就任しました。これから精進していくのでよろしくお願いします。」
「うむ、よろしく頼むよ。まあ立ち話もなんだ、さあ上がってくれたまえ。」
そうグーリンタス公爵に案内され屋敷に入る。さすがは四大貴族。うちとは比べ物にならない大きさの屋敷だ。
「エド君は当主になって日も浅いから、周辺領主への挨拶もまだだろう?」
「まだうかがえてないですね。領地に戻ったら挨拶しにいこうと思っているのですが・・・」
「まだだろうと思ってな。呼んでおいたぞ。」
「え、呼んで」
言い切らないうちに部屋に着いた。部屋には三人の男がいた。服装からして貴族だろう。
「遅いぞ!目上の人を待たせるとは何事だ!」
こちらを見るなり、三人のうちの一人が怒鳴りだす。
「まあまあゴール子爵。グーリンタス公爵の目前ですし、落ち着いてくだされ。」
「そうだぞ、だいたい貴様も先ほど着いたばかりではないか。」
他の二人がなだめる。ゴール子爵と言えば我が領地の北方にある土地の領主ではないか。
「グーリンタス公爵、こちらのお三方はもしや・・・」
「うむ、挨拶がまだだろうと思ってな。ちょうど王都にいたから君の領地に隣接する領主を呼んでおいたのだ。」
あっけにとられているとグーリンタス公爵は三人の紹介を始めた。先ほど怒鳴ってきた、太った中年がゴール子爵。先にゴール子爵をなだめた、やせ細った青年がサンドル男爵。ゴール子爵に遠慮ない物言いをした筋骨隆々の中年がバブルック子爵。当代のサンドル男爵とバブルック子爵は善政で知られており、反対にゴール子爵は圧政を敷いているともっぱらの噂だ。ゴール子爵の領地は逃げ出す領民が多く、人口減少の一途を辿っているらしい。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。この度エルムント家の当主になりましたエド=エルムントです。若輩者ですがこれからよろしくお願いします。」
そう挨拶すると
「よろしくね、僕も最近家督を譲られたばかりだからまだまだ分からない事だらけだけど、一緒に頑張ろう!」
「よろしく頼むぞ!わからないことがあったら何でも聞くがよい!」
サンドル男爵とバブルック子爵は好意的な返事をしてくれた。
「ふん、貧乏貴族が!せいぜいグーリンタス公爵の顔に泥を塗らんことだな!」
ゴール子爵はそう吐き捨てて帰ってしまった。王国では四大貴族がそれぞれ複数の貴族を指揮する権限を持っていて、王国南方の貴族はグーリンタス公爵の配下となっている。
「それでエド君は陛下になんの用件があるのかね?」
「王国が西の大国、インタスとの戦争に注力しようとしている現在、南のガブスとの関係値が悪いままでは戦況に悪影響を与えかねないと思い、カブスとの関係改善を進言したく思った次第であります。」
驚いた様子のサンドル男爵とバブルック子爵を横目に今回の案について説明すると
「ふむ…」「なるほど」
二人ともなにやら納得した様子。グーリンタス公爵も
「いやはや、事前に軽く聞いていたが、まったく面白いことを考えるのだね」
と評価は上々のようだ。
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