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1章
日常と非日常の境
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アイリスさんとの勝負に勝利してから数日、俺は変わってしまった。
なぜかって?…
周りの態度がさらによくなりすぎて、俺の日常が崩壊したんだよぉぉぉぉぉ!
異世界トリップしてから幾日過ぎ、今こうして生活している。が、大陸一の魔法術師、アイリスさんとの勝負に勝ったという噂がなぜか街中に蔓延している。
そのおかげで、男性からは視線を浴び、女性からは猛烈なアプローチを受けたりする。
多分この猫耳のせいだよね。
この前は、近所のおばさんみたいな人に、可愛いわねぇうちの娘もこんな感じだったらねぇ、なんて言われてしまった。まさに近所のおばさんだった。
それに男性も男性で、時々いやらしい目で見られる。
…気持ち悪い!男はどこでも皆一緒なんだなって思ったよ。
ていうか日常なんてそもそも存在しなかったんだよね。
何の前触れもなく異世界トリップして、さらにはジンさんのもとで働くメイドになって。そして訳も分からないままアイリスさんと戦い、訳も分からないままアイリスさんに勝って。
異世界トリップだって種類があるよね。自分の体そのままトリップするのと、体が変わってトリップする種類。
外見が変わるのは小説ではあまり見ない気がする。
はははっ。そういう面でもこの生活自体日常じゃないよね。
…まあ、それは置いといて。
俺の噂はデイライト領、そして近くの領にまで広がっているらしい。
なんていうか、地域を回る行商、アルって子がよくこの話をするらしい。
アルはアイリスさんにもよくお世話になるそうで、もしかしたら情報はここから漏れたのかもしれない…
うっかり喋る、ありそう。
それで、領内に広がっているせいで、男爵や子爵など貴族からの会食のお誘いがかなり多い。
領外にも広がっているので、伯爵からも来るけどね。
会食なんてどうせお酒を飲まされるだろうし、未成年なのでお酒は飲めないと、いつもお断りしているのだが、ジンさんが、
「この国では16から成人だぞ」
って言ったときはすごく驚いた。日本では20から成人だから、実感がわかないぜ。
それでも、断れなかった誘いが唯一ある。
アイリスさんからの誘いだ。
そりゃ目上の人からの誘いは断りにくいし、親しい人っていうのもあるからね。
諦めていったよ。
まあ、ひどいことになったんだけど、うーん、思い出したくない…
「やー、ルナちゃん!」
「こんばんは、アイリスさん」
俺とアイリスさんは挨拶を交わす。
ここはアイリスさんの家…というより屋敷?おれは城みたいだなって感じだけども。
いまアイリスさんの屋敷に来ているのは、親睦会に参加するためだ。
貴族、交流や人脈が大切だからね。
っていうか、黒髪の太ったおっさんが俺をニヤニヤしながらみてやがる。
…だめだ、やっぱり気持ち悪い。
うーん、なんだったけな、あいつの名前は…
そう、キンジョン・イルソン。侯爵だったか。まさに悪徳貴族って感じだね。
…この名前の響き、どこかで聞いたような…
「ルナ、表情を表に出し過ぎると、不興を買うぞ」
おっと、ジンさん。ごめん。関係が悪化したらまずいからね。
「仕方ないよ、あの人はそういう人だから。気にしない方がいいね」
うん。その通りだね。
俺はコクリとうなずく。
さーて、張り切っていきますか!
どうせお酒、飲まされるだろうし。
「乾杯!」
乾杯!
アイリスさんが宣言し、お決まりのセリフが発せられる。そして、一斉にグラスに口を付ける。――はずが、俺だけは一向に口を付けられない。
「どうした、ルナ?」
ジンさんが俺に聞く。
「いや、お酒を飲むのは初めてで…」
「大丈夫ぅ、飲めば楽になるよぉ」
そこにアイリスさんがやってくる。
うわ、アイリスさんすでに酔ってない?早い、早すぎるよ!
と思うのと同時に、奥の方で、笑いながら固まる貴族数名と、なんだまたか、という呆れた顔でアイリスさんを見る貴族がいた。
そして、おれはあるものを発見してしまう。
蓋のないワインの瓶数本だ。
何本かはほかの貴族が開けたとして…えっ、ほかの瓶はアイリスさんが飲んだの?
アイリスさん酒豪説浮上!
「ほらほらぁ、早く飲みなよぉ?」
そうして、アイリスさんは俺にお酒を勧めてくる。
むっ…なんだこの香りは。我が偉大なる父の飲んでいた日本酒と同じような香りがするぞ?
…これ、飲まないとまずいよね?助けて、ジンさん!
そうしてジンさんに視線を送るが、ジンさんは諦めた顔をしている。
「ほらほらぁ」
…ええい!やけだ!飲んでやる!
そうして俺はグラスを受け取り、一気に飲み干す。
「イタダキマス!」
そして数秒後、激しい胸焼けと共に、意識が朦朧とし、俺は倒れた。
そう。俺、もといルナは、ものすごくお酒に弱かったのだ!
薄れゆく意識の中、俺は思う。
――もう、お酒なんか飲みたくない――
う、うぅ。思い出しちゃった。
迷惑、掛けちゃったんだろうなぁ。
申し訳ない。
そうやって俺がぼんやりと思っていると、
「…に!?…本当…のか!?」
ジンさんの切羽詰まった声が聞こえてきた。
どうしたんだろ、ジンさん。
俺はジンさんを見つけ、
「どうしたんですか?」
「あぁ、あぁ!ルナ!聞いてくれ、聖なる森からリザードマンの群れが溢れているらしい!ルナ、すまない、力を貸してくれないか!?」
…そんな。
聖なる森は、俺がこの世界の最初の土を踏んだ場所だ。魔物も現れず、とても安全だとジンさんから聞いていた。
さらに、リザードマンと言えば、凶暴と有名な魔物だ。時に人間をも襲う。
「も、もちろんです!」
俺は即答した。
「助かる!ルナ、無理をするな。目的はリザードマンの撃退だ。必ず殺せとはいっていないからな」
分かりました!
「よし、いくぞ!」
そうして俺はジンさんの後を追う。
時は夕暮れ。空にはすでに、カエルの不気味な鳴き声が響いていた。
なぜかって?…
周りの態度がさらによくなりすぎて、俺の日常が崩壊したんだよぉぉぉぉぉ!
異世界トリップしてから幾日過ぎ、今こうして生活している。が、大陸一の魔法術師、アイリスさんとの勝負に勝ったという噂がなぜか街中に蔓延している。
そのおかげで、男性からは視線を浴び、女性からは猛烈なアプローチを受けたりする。
多分この猫耳のせいだよね。
この前は、近所のおばさんみたいな人に、可愛いわねぇうちの娘もこんな感じだったらねぇ、なんて言われてしまった。まさに近所のおばさんだった。
それに男性も男性で、時々いやらしい目で見られる。
…気持ち悪い!男はどこでも皆一緒なんだなって思ったよ。
ていうか日常なんてそもそも存在しなかったんだよね。
何の前触れもなく異世界トリップして、さらにはジンさんのもとで働くメイドになって。そして訳も分からないままアイリスさんと戦い、訳も分からないままアイリスさんに勝って。
異世界トリップだって種類があるよね。自分の体そのままトリップするのと、体が変わってトリップする種類。
外見が変わるのは小説ではあまり見ない気がする。
はははっ。そういう面でもこの生活自体日常じゃないよね。
…まあ、それは置いといて。
俺の噂はデイライト領、そして近くの領にまで広がっているらしい。
なんていうか、地域を回る行商、アルって子がよくこの話をするらしい。
アルはアイリスさんにもよくお世話になるそうで、もしかしたら情報はここから漏れたのかもしれない…
うっかり喋る、ありそう。
それで、領内に広がっているせいで、男爵や子爵など貴族からの会食のお誘いがかなり多い。
領外にも広がっているので、伯爵からも来るけどね。
会食なんてどうせお酒を飲まされるだろうし、未成年なのでお酒は飲めないと、いつもお断りしているのだが、ジンさんが、
「この国では16から成人だぞ」
って言ったときはすごく驚いた。日本では20から成人だから、実感がわかないぜ。
それでも、断れなかった誘いが唯一ある。
アイリスさんからの誘いだ。
そりゃ目上の人からの誘いは断りにくいし、親しい人っていうのもあるからね。
諦めていったよ。
まあ、ひどいことになったんだけど、うーん、思い出したくない…
「やー、ルナちゃん!」
「こんばんは、アイリスさん」
俺とアイリスさんは挨拶を交わす。
ここはアイリスさんの家…というより屋敷?おれは城みたいだなって感じだけども。
いまアイリスさんの屋敷に来ているのは、親睦会に参加するためだ。
貴族、交流や人脈が大切だからね。
っていうか、黒髪の太ったおっさんが俺をニヤニヤしながらみてやがる。
…だめだ、やっぱり気持ち悪い。
うーん、なんだったけな、あいつの名前は…
そう、キンジョン・イルソン。侯爵だったか。まさに悪徳貴族って感じだね。
…この名前の響き、どこかで聞いたような…
「ルナ、表情を表に出し過ぎると、不興を買うぞ」
おっと、ジンさん。ごめん。関係が悪化したらまずいからね。
「仕方ないよ、あの人はそういう人だから。気にしない方がいいね」
うん。その通りだね。
俺はコクリとうなずく。
さーて、張り切っていきますか!
どうせお酒、飲まされるだろうし。
「乾杯!」
乾杯!
アイリスさんが宣言し、お決まりのセリフが発せられる。そして、一斉にグラスに口を付ける。――はずが、俺だけは一向に口を付けられない。
「どうした、ルナ?」
ジンさんが俺に聞く。
「いや、お酒を飲むのは初めてで…」
「大丈夫ぅ、飲めば楽になるよぉ」
そこにアイリスさんがやってくる。
うわ、アイリスさんすでに酔ってない?早い、早すぎるよ!
と思うのと同時に、奥の方で、笑いながら固まる貴族数名と、なんだまたか、という呆れた顔でアイリスさんを見る貴族がいた。
そして、おれはあるものを発見してしまう。
蓋のないワインの瓶数本だ。
何本かはほかの貴族が開けたとして…えっ、ほかの瓶はアイリスさんが飲んだの?
アイリスさん酒豪説浮上!
「ほらほらぁ、早く飲みなよぉ?」
そうして、アイリスさんは俺にお酒を勧めてくる。
むっ…なんだこの香りは。我が偉大なる父の飲んでいた日本酒と同じような香りがするぞ?
…これ、飲まないとまずいよね?助けて、ジンさん!
そうしてジンさんに視線を送るが、ジンさんは諦めた顔をしている。
「ほらほらぁ」
…ええい!やけだ!飲んでやる!
そうして俺はグラスを受け取り、一気に飲み干す。
「イタダキマス!」
そして数秒後、激しい胸焼けと共に、意識が朦朧とし、俺は倒れた。
そう。俺、もといルナは、ものすごくお酒に弱かったのだ!
薄れゆく意識の中、俺は思う。
――もう、お酒なんか飲みたくない――
う、うぅ。思い出しちゃった。
迷惑、掛けちゃったんだろうなぁ。
申し訳ない。
そうやって俺がぼんやりと思っていると、
「…に!?…本当…のか!?」
ジンさんの切羽詰まった声が聞こえてきた。
どうしたんだろ、ジンさん。
俺はジンさんを見つけ、
「どうしたんですか?」
「あぁ、あぁ!ルナ!聞いてくれ、聖なる森からリザードマンの群れが溢れているらしい!ルナ、すまない、力を貸してくれないか!?」
…そんな。
聖なる森は、俺がこの世界の最初の土を踏んだ場所だ。魔物も現れず、とても安全だとジンさんから聞いていた。
さらに、リザードマンと言えば、凶暴と有名な魔物だ。時に人間をも襲う。
「も、もちろんです!」
俺は即答した。
「助かる!ルナ、無理をするな。目的はリザードマンの撃退だ。必ず殺せとはいっていないからな」
分かりました!
「よし、いくぞ!」
そうして俺はジンさんの後を追う。
時は夕暮れ。空にはすでに、カエルの不気味な鳴き声が響いていた。
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