Trip in the world ~性転換って、嘘だろ!?~

天海望月

文字の大きさ
12 / 26
1章

日常と非日常の境

しおりを挟む
 アイリスさんとの勝負に勝利してから数日、俺は変わってしまった。
なぜかって?…
 周りの態度がさらによくなりすぎて、俺の日常が崩壊したんだよぉぉぉぉぉ!
 異世界トリップしてから幾日過ぎ、今こうして生活している。が、大陸一の魔法術師、アイリスさんとの勝負に勝ったという噂がなぜか街中に蔓延している。
 そのおかげで、男性からは視線を浴び、女性からは猛烈なアプローチを受けたりする。
 多分この猫耳のせいだよね。
 この前は、近所のおばさんみたいな人に、可愛いわねぇうちの娘もこんな感じだったらねぇ、なんて言われてしまった。まさに近所のおばさんだった。
 それに男性も男性で、時々いやらしい目で見られる。
 …気持ち悪い!男はどこでも皆一緒なんだなって思ったよ。
 ていうか日常なんてそもそも存在しなかったんだよね。
 何の前触れもなく異世界トリップして、さらにはジンさんのもとで働くメイドになって。そして訳も分からないままアイリスさんと戦い、訳も分からないままアイリスさんに勝って。
 異世界トリップだって種類があるよね。自分の体そのままトリップするのと、体が変わってトリップする種類。
 外見が変わるのは小説ではあまり見ない気がする。
 はははっ。そういう面でもこの生活自体日常じゃないよね。
 …まあ、それは置いといて。
 俺の噂はデイライト領、そして近くの領にまで広がっているらしい。
 なんていうか、地域を回る行商、アルって子がよくこの話をするらしい。
 アルはアイリスさんにもよくお世話になるそうで、もしかしたら情報はここから漏れたのかもしれない…
 うっかり喋る、ありそう。
 それで、領内に広がっているせいで、男爵や子爵など貴族からの会食のお誘いがかなり多い。
 領外にも広がっているので、伯爵からも来るけどね。
 会食なんてどうせお酒を飲まされるだろうし、未成年なのでお酒は飲めないと、いつもお断りしているのだが、ジンさんが、
「この国では16から成人だぞ」
 って言ったときはすごく驚いた。日本では20から成人だから、実感がわかないぜ。
 それでも、断れなかった誘いが唯一ある。
 アイリスさんからの誘いだ。
 そりゃ目上の人からの誘いは断りにくいし、親しい人っていうのもあるからね。
 諦めていったよ。
 まあ、ひどいことになったんだけど、うーん、思い出したくない…



「やー、ルナちゃん!」
「こんばんは、アイリスさん」
 俺とアイリスさんは挨拶を交わす。
 ここはアイリスさんの家…というより屋敷?おれは城みたいだなって感じだけども。
 いまアイリスさんの屋敷に来ているのは、親睦会に参加するためだ。
 貴族、交流や人脈が大切だからね。
 っていうか、黒髪の太ったおっさんが俺をニヤニヤしながらみてやがる。
 …だめだ、やっぱり気持ち悪い。
 うーん、なんだったけな、あいつの名前は…
 そう、キンジョン・イルソン。侯爵だったか。まさに悪徳貴族って感じだね。
 …この名前の響き、どこかで聞いたような…
「ルナ、表情を表に出し過ぎると、不興を買うぞ」
 おっと、ジンさん。ごめん。関係が悪化したらまずいからね。
「仕方ないよ、あの人はそういう人だから。気にしない方がいいね」
 うん。その通りだね。
 俺はコクリとうなずく。
 さーて、張り切っていきますか!
 どうせお酒、飲まされるだろうし。

「乾杯!」
 乾杯!
 アイリスさんが宣言し、お決まりのセリフが発せられる。そして、一斉にグラスに口を付ける。――はずが、俺だけは一向に口を付けられない。
「どうした、ルナ?」
 ジンさんが俺に聞く。
「いや、お酒を飲むのは初めてで…」
「大丈夫ぅ、飲めば楽になるよぉ」
 そこにアイリスさんがやってくる。
 うわ、アイリスさんすでに酔ってない?早い、早すぎるよ!
 と思うのと同時に、奥の方で、笑いながら固まる貴族数名と、なんだまたか、という呆れた顔でアイリスさんを見る貴族がいた。
 そして、おれはあるものを発見してしまう。
 蓋のないワインの瓶数本だ。
 何本かはほかの貴族が開けたとして…えっ、ほかの瓶はアイリスさんが飲んだの?
 アイリスさん酒豪説浮上!
「ほらほらぁ、早く飲みなよぉ?」
 そうして、アイリスさんは俺にお酒を勧めてくる。
 むっ…なんだこの香りは。我が偉大なる父の飲んでいた日本酒と同じような香りがするぞ?
 …これ、飲まないとまずいよね?助けて、ジンさん!
 そうしてジンさんに視線を送るが、ジンさんは諦めた顔をしている。
「ほらほらぁ」
 …ええい!やけだ!飲んでやる!
 そうして俺はグラスを受け取り、一気に飲み干す。
「イタダキマス!」
 そして数秒後、激しい胸焼けと共に、意識が朦朧とし、俺は倒れた。
 そう。俺、もといルナは、ものすごくお酒に弱かったのだ!
 薄れゆく意識の中、俺は思う。
 ――もう、お酒なんか飲みたくない――



 う、うぅ。思い出しちゃった。
 迷惑、掛けちゃったんだろうなぁ。
 申し訳ない。
 そうやって俺がぼんやりと思っていると、
「…に!?…本当…のか!?」
 ジンさんの切羽詰まった声が聞こえてきた。
 どうしたんだろ、ジンさん。
 俺はジンさんを見つけ、
「どうしたんですか?」
「あぁ、あぁ!ルナ!聞いてくれ、聖なる森からリザードマンの群れが溢れているらしい!ルナ、すまない、力を貸してくれないか!?」
 …そんな。
 聖なる森は、俺がこの世界の最初の土を踏んだ場所だ。魔物も現れず、とても安全だとジンさんから聞いていた。
 さらに、リザードマンと言えば、凶暴と有名な魔物だ。時に人間をも襲う。
「も、もちろんです!」
 俺は即答した。
「助かる!ルナ、無理をするな。目的はリザードマンの撃退だ。必ず殺せとはいっていないからな」
 分かりました!
「よし、いくぞ!」
 そうして俺はジンさんの後を追う。
 時は夕暮れ。空にはすでに、カエルの不気味な鳴き声が響いていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...