NGワードと言わないで!~ゼロから始めるゲームせいさく+現実世界は人工知能と共に&肉欲塗れの複合世界に祝福を!~

もるひね

文字の大きさ
18 / 22
二章です!

対話します?

しおりを挟む
「遅かったじゃないか……ク・ソ・ガ・キ!」

 帰ったら早々に叱られた。

「いいじゃないですか! 病人なんですよ、本調子じゃないんですよ!? 午後5時までネカフェでゆっくりしてたっていいじゃないですか!」
「その時間でどれだけのデバッグが可能だったか教えてやろうか……?」
「ゲッホ! ゲエッホゲッホ!!」
「こっちに向かって咳をするな!」

 くだらない仕返しをしながらオフィスを進む。日は陰り、これから漆黒に呑み込まれようとしていた。

「あまりにも遅いので、私直々に捕獲しようと準備していたところだ」
「随分と物騒な言い方ですね」
「拉致の方が良かったか?」
「いえ」
「ならば誘拐」
「勘弁して下さい」

 この男、どれだけ怒ってやがるんだ。いいじゃないか半日くらい休んだって。

「そう逸ることもないのにねぇ。和夢を留めるのは大変だったんだよ、僕にお礼の一つでもくれるべきだアルバイトくん」

 会議室から飛び出した影が、高い声を響かせて近付いてきた。

「えっと……」

 え、誰?
 アルバイトくんっていうのは自分のことで間違いない。向こうは知っているが俺は知らない。
 この男性──いやどうだろう。やけに中性的な見た目と声音だ。日本人離れしているというか、人間離れしているというか……人形みたいというか。

「顔を合わせるのは初めてだな。こちらはディレクターの──」
「ディレクター? そうだったっけ?」
「ご自分の職をお忘れですか」
「あーっと、うん、多分そうだった、気がする」
「よく彩智さんとの打ち合わせではボロを出しませんでしたね」
「それはほら、流れに任せればなんとかなるって」
「はぁ、ともかくようございました」

 畏まった言葉遣いで和夢は応対。上司なのか、このチビ……とまではいかないが、どこか幼さが残る人間が。

「氷上悠奈だ、こうして会えてうれしいよ。これからもよろしく」

 そう言って、華奢な右手を差し出した。
 ゆうな……それは女の名前かな? てことは女性? あれ、一人称は僕だったような?

「はぁ、よろしくお願いします……」
「風邪はおさまったかな? ハヤナには元気でいて貰わないといけないんだ、無茶な事しちゃ駄目だよ和夢」
「は、申し訳ございません」

 一握りするとすぐさま離し、部下に優しくも冷たい視線を投げかけた。

「アルバイト君の脳と共存しているんだから。高熱が出れば当然、ハヤナにも影響が出る。それを忘れないでおくれよ、代わりを用意するのも面倒なんだから」
「は、以後気を付けます」
『…………』
「おっと、そんな話はどうでもいいんだ。どうだったかなアルバイト君、ミラー・スミスと対話した感想は? 新菜が普通の人間では無いと知った感想は?」
「え?」

 早口に捲し立てられて若干の硬直。

「聞いてたんですか」
「ここは僕たちの庭だよ、カメラートは至る所に潜伏している。君が何を食べ、何を飲み、何を読んだかを当てて見せても良い。会話は全て聞けたわけじゃないから、そっちは自信ないけど」

 何だその言い方は、ここがドイツだとでも言いたげだな。

「小僧のことは常に追跡していた。家に帰ろうものなら部隊へ要請するつもりだったぞ」
「えっ」
「ま、そんな気味の悪い話は置いておいて。彼女は今、この場を離れてもらっているんだ、思ったままを話して欲しいな。あのイラストレーターもいないから気にすることはないよ」

 本当に気味悪い。考えるだけで悪寒が奔るので露骨な話題逸らしに乗ってやろう。

「新菜について、ですか」
「そう」
「別に、何も。ただ頭に機械を埋め込んだだけの人間でしょう? それを知ったからって、今までと対応を変えるつもりなんてありませんよ」
「君のことを道具として見ているかもしれないのに?」
「懐柔されかけ……されたようなもんですけど、悪くないと思ってますんで」

 突然押しかけ、ゲームを作らせ、バイト話を持ち掛けて……その結果がこの罰だ。
 吐くほどにキツイ毎日だけれども、それなりに楽しんでいる自分がいる。
 ていうか和夢は完全に道具として俺を扱ってるよな。

「ふむ……ハヤナはどうだい? 主人のことを甘いと思うかな?」

 悠奈は視線を動かし、俺の背後に浮かぶ虚像を捕らえ──あらぬ方向へと顔を向けていく。

「あ、見えないんだった。バイト君、スマートフォンに移してくれる?」

 おおビックリした、改造人間がもう一人いるのかと。

「ハヤナ、頼む」

 取り出したスマートフォンの電源を付けると、すぐさま銀髪の少女が画面を埋め尽くすように表示された。

『甘いとは思いますが……私はニーナのことを良き友と認識しています。裏切る可能性など微塵もありません』

 強く、厳とした声で言い切る。
 ハヤナは彼女に、どこかしら近しいものを感じているのだろうか。

「ほぉ。美しいものだね、うん、美しい。やはり君を保護したのは間違いではなかった、そうだろう和夢?」
「は……」
「確かにこれは、僕たちが掲げている大義に反している。ついでに言えば、ハヤナだって到底信頼できる代物じゃあない。でもご覧よこの顔を、とてもおもしろい……純真な顔をしているだろう?」

 面白い顔って何だ。

『面白い顔とは何ですか!? プリティーフェイスの間違いでしょう!?』
「うんうんぷりてぃーだね、ぷりてぃー。和夢も言ってあげて」
「は。ハヤナはぷりて──はっ!?」

 お上の一声にされるがままだったが、自制心が働いたようだ。

「そうだ、ドクター・ミラーについて聞きたいんですが」
「新菜のことはいいのかい?」
「まぁ……気にはなりますけど、向こうから言ってくれるまで待ちます。」

 かなりプライベートな話だもんな。
 女の子だし、嫌われるようなことは出来るだけ避けたい。

「和夢」
「は。良くある話だ小僧、仕事に打ち込むあまりに家族を蔑ろにし、いつの間にか声も届かなくなっていた。彼には妻と娘がいたが、日常的なDVに加え研究という名の人体実験のモルモットにされ、それらを苦に自殺した。娘は当時16歳だったそうだ」

 なんてこった、かなり重い!

「あはは、世界的に見れば良くある話だよ。日本は過労死ばかりが注目されているけどね」

 何故笑えるんですかあなたは!?

「ハヤナこそを実の娘だと認識しちゃったのかなぁ」
「精神をすり減らし、結果として狂ってしまったのでしょう」
「…………」

 呑気に会話を続ける二人が、どこか遠い存在に思えた。
 いや、あの男は狂ってはいない。支離滅裂な事は確かに口にしていたが、芯まで染め上げられてはいなかった。

「ま、いいか。ミラーはこれまで泳がせていたけれど……ようやく処分が決定したし」
「は。本当に、ようやくですね」
「処分……?」

 え、何言ってんの?

「志は同じ筈だけど仕方ない、払うべき必要な犠牲だ。そして、彼が拵えたラボ……アニメ制作会社を僕たちのモノとする。一大博打、メディアミックスだよ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...