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二章です!
対抗します!
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『メ……メディアミックス!』
「うん、そう。良かったねハヤナ、君のOPが採用されるかもしれないよ」
『いやったあー!』
心底楽しそうな微笑みを浮かべて、ディレクターである氷上悠奈は言葉を紡いだ。
「当たれば天国外せば地獄。漫画の連載にはこぎつけたけれど、より周知を広めるにはアニメ放送が手っ取り早いからね」
「私は賛同いたしかねますが……それが上の意向だというのならば」
「何も1クール放送するわけじゃない、計画しているのは60分程度のスペシャルムービーさ。年末にでも放送出来れば、財布の紐を緩めた大人たちがお布施してくれるだろう」
「コンテンツの持続には、アニメ化など諸刃の剣ですがね」
「一瞬でも盛り上がってくれればいいのさ。これでもきちんと研究したんだ、【潜水艦これくしょん】や【ファイトガールジュニアスクール】と同じ轍は踏まない」
「研究ですか」
「税金対策だというのに盛り上がった【Destiny/Grand Bestellung】を超え、【ボルグレッドファンタジー】をも超えて見せるさ」
「熱心なようで、私は大変嬉しゅうございます。やはり隊長がおられてこそ、指針が示されてこそ、私は不安を感じずに任務へ励むことが出来る」
『星屑デーモンシンデレラ! メディアミックス!!』
やけにしっかりした上下関係……というより信頼関係。
悠奈の年齢は和夢よりも下であるだろうに、よくもまぁへりくだった物言いが出来るものだ。
「ははっ、よしてくれよ和夢。ああそうだ、特典についてた声優のライブイベントに当選したんだけど、和夢も一緒に行くかい?」
「聞き捨てなりません。隊長、まさか円盤を購入したんですか。その費用をどこから捻出したんですか」
「あっ……お、お小遣いからだし? 給料からだし? 決して横領とかしてないし?」
「そんな金があるのならこちらに回して下さっても良いのでは……? これだけの人員でやりくりするのも大変なのですよ……?」
「あはっ、あはははは~」
「誤魔化せるとお思いで? 冬流に連絡させてもらいます、隊長のお小遣いは減額です!」
「あっ、そういうこと言う? 上司に対してそんなこと言う? いいんだね、僕蹴るよ? 蹴っちゃうよ? いいんだね!? 蹴るよ!?」
「往生際が悪いですよ」
『メディアミックス! 星屑デーモンシンデレラ!』
いつの間にかそれは逆転し、子供を窘める良いお兄さんのものへ。
ケータイを取り出して会話する和夢と、その脛を蹴り始めた悠奈。
だが、それも束の間の休憩時間だからこそ。就業時間はとうに終わっているが、これからデスマーチが待っている。
「あの、少しいいですか」
ようやく要件が済んで脛蹴りから取っ組み合いへとシフトした2人へ向かって問う。
「何だ?」
「何だい?」
被るとか、どれだけ仲が良いんだこの二人。まあそんなことはいい。
一呼吸おいてから、
「処分するってことは、殺すってことですよね」
『星屑……』
務めて平静を装いながら口にした。
「あはは、随分と人聞きの悪いことを言うね」
「小僧、貴様には関係ないことだ」
「まあいいか。そうだよアルバイト君、ミラー・スミスは檻から逃げ出した危険分子だ、この世界から排除しなければならない」
「隊長!?」
「君はもう無関係じゃない。だから教えてあげただけさ。それで? 満足してない顔だけど、まだ聞き足りないことでもあるのかな?」
互いに距離を取って、軽く埃を払う。
悠奈は終始ニコニコしていた。気味が悪い程の微笑みが、へばりついてでもいるかのようなそれが、嫌な予感をじわじわと湧き立たせる。
「それ以外の選択肢は取れないんですか」
「う~ん、現状で取れる無力化措置は何通りか試したんだけど駄目だったんだよね。流石は稀代の科学者、普通の人間の体じゃあない。肉体改造に催眠暗示、あらゆる手を暴露して対抗してくる」
「そこまでお教えする必要は無いかと」
「それは彼を心配してのことかな?」
「隊長の身を案じてです」
一段声を落として和夢が耳打ちしていた。
そうだ、俺は所詮アルバイト。だというのに、踏み入ってよい領域を超えようとしている。
「あなたたちは……やっぱり、テロリストなんですね」
それでも踏み出した。
遠くへ置き去りにしていた記憶。
「あはは、酷い言い草だ……が、真実でもあるし偽りでもある」
少しだけ影が差した笑顔で悠奈が自嘲する。
正義のヒーローでテロリスト。その実態はソーシャルゲーム開発会社。だがそれはほんの一部で、蛇の尾の先端に過ぎない。とても大きな、陰謀のベールに包まれた存在。
「秘密結社セカンドピース。俺は今まで、これが善だと、正しい事だと信じて働いてきました。それがなんですか、笑って人を殺そうとする集団だなんて思いませんでしたよ」
「小僧、我々を侮辱するか!」
「あはははは、面白いじゃないか。この状況が分からない君じゃないよね、いいよ、話をしよう。和夢は少し黙っていてくれ」
「なっ、何故ですか!?」
「君はとうに揺さぶられている。ここは僕の出番なんだ、邪魔はしないで欲しいな」
『ご主人に手を出すつもりですか』
「そんなことはしないさ。出来ればハヤナもお静かに」
諭された和夢は、渋々と口をつむぐ。
悠奈は場が静かになったのを見計らってから、
「さて……事の重要性が理解出来ていないようだね、アルバイト君」
楽しそうに語り始めた。
「あの事件が起きた時、ミラーはまだ工房にいた。つまり彼は敵だ、悪の組織なんだ。そこを離れたからといって本質は変わらない、犯罪者としての精神に染まっている」
「だからって、殺人が許されると思っているんですか」
こんなこと、よくある話だと言えばそれまでだ。
危険なもの、知り過ぎたものが辿る運命なんて、ゲームやアニメで散々語られてきたことなのだから。
「あはぁ、君は優しいね。うんうん、それはいいことだ。だからこそ彼女を見つけ出し、彼女も手を差し伸べた。聖女様の加護を受けた気分はどうだい?」
「はぐらかさないで下さい。俺は正義のヒーローだっていう、到底信じられない馬鹿みたいな話に乗ったからここにいるんです」
最初は半信半疑……どころか全く信じず。だが少しづつ、それは真実なのだと疑わなくなっていった。
大金積まれたってのもあるけど。
「うん、それが?」
「それが、って……」
「それも真実の一つだよ。ねぇアルバイト君、君はさぁ……完璧な正義があると思っているの?」
「な……それは……」
そんなものが存在しないことくらいは中学生でも分かっている。警察だって完全な正義じゃない、街を荒らすヤクザと深い関わりを持っているし。
「完全な二元論的世界だなんて、剣と魔法のファンタジー世界にもそうそうない。単純明快な話が好きな人間が増えてきてはいるけれど、だからといって現実世界が変わることはない。僕たちもそれなりに手を汚してきてるんだ、人類への奉仕という大義に酔いしれながらね」
「奉仕……?」
「そうだよ。結局は僕たちも、根っこでは工房と同じなのさ。超常存在をことごとく破壊してきたけれど、ハヤナと新菜を手元に保護している理由でもある。何故だか分かる? 限界は必ずやってくると知ったからさ」
と言って、悠奈は大袈裟に肩を竦めた。
「意味が分かりませんけど、これだけは分かります。ハヤナを保護したってんなら、その親を保護するのもおかしくはないでしょう」
「いやいや、彼は利用するのも難しいし、ハヤナを奪われでもしたら本当に困るからさ。そうだ、考え方を変えたらどうかな? 妻と娘の元へ送ってあげるんだよ」
「ふざけないで下さい!」
こいつ、一々気に障る言い方をしてくれる!
「ニートをブラック労働させるのは百歩譲って構いませんけど、そんなことするのはどうかと思いますよ。偽善者の皮を被ったテロリストだったなんて思いもしませんでした」
「いい加減にしろ小僧! 隊長に対しなんたる口の利き方だ、そこになおれ!」
激昂が弾け、ずかずかという足音と共に大男が寄ってくる。
だが、それの前に立ちはだかった悠奈の手が抑止となり、あえなく歩みを止められた。
「必要無いよ和夢。どの道、ここから逃げ出すことなど出来ないからね」
「は……」
「出入口は新菜が固めてる、働き者で助かるよね。ストレスを感じにくいっていうのは、ある意味羨ましいもんだ。それでアルバイト君、何も反感を買うためにこんな話を持ち出したわけじゃないだろう? 望みがあるなら言ってみるといい」
ああそうだ。つい流されていたが、明確な意思をもってここにいるんだ。
「単純です。ミラー・スミスとの対話を望みます」
きっぱり言うと、若干の驚きを漂わせながら、
「へぇ……君が?」
そうたずねた。
「俺じゃありません、ハヤナです」
「そうなのかい?」
『はい……』
弱気な声で返すなよ、ネカフェで休息している間に決めたことじゃないか。
「あはは……う~ん、困ったな」
「隊長、言うことを聞く必要はありません」
「それでもほら、真摯な願いは出来るだけ叶えてあげるべきじゃん? そのほうがコントロールしやすいんだもの。予算を締め付けて手綱を握るのと同じだよ」
丸聞こえだぞブラック上司。
「安心してよアルバイト君、僕たちだって悪魔じゃあない。でもね、組織っていうのは一度動き出したら簡単には止まれないのさ」
予算を締め付けたらしい上司は、部下の嘆きを無視して微笑んだ。
「僕は全能なんかじゃあない。でも……ははは、どこかにはいるかもしれないよ? 機械仕掛けの神が」
ゆっくりと、刻むように言霊を紡ぐ。
強制的に幕を引かせる神の名前を。
「それならば、動き出した機動部隊を止められるかもしれない。けれど、それがどういう行為なのか理解しているのかな。敵の敵は、結局敵だ」
ジロリ、と切れ長の瞳が俺を射抜いた。
明らかな敵意。それはもしかしたら、殺意なのかもしれない。
「えぇ、敵ですよ。親子の問題に介入しようってやつは、全員敵です」
やけに感覚が麻痺してきたことに内心驚きながらも冷静に返す。
ここで終わってたまるか、まだ何も知っていないんだ。
『お願いです……これだけは、譲れません!』
-≫チャンネル #電脳浮遊未来都市 に入室しました。
-≫トピック #電脳浮遊未来都市 へようこそ。
-ルール:忘れないで、あなたがここにいるということは、あなたが見られているということでもある。ろくでもない措置を取った場合、あなたという存在は抹消される。つまらない流行の暴露も程々にしておいてね、追放されても自己責任だから。
※ あなたは anih によって #電脳浮遊未来都市 を 理由(キモイんだよクソジジイ) により 追放されました。
「うん、そう。良かったねハヤナ、君のOPが採用されるかもしれないよ」
『いやったあー!』
心底楽しそうな微笑みを浮かべて、ディレクターである氷上悠奈は言葉を紡いだ。
「当たれば天国外せば地獄。漫画の連載にはこぎつけたけれど、より周知を広めるにはアニメ放送が手っ取り早いからね」
「私は賛同いたしかねますが……それが上の意向だというのならば」
「何も1クール放送するわけじゃない、計画しているのは60分程度のスペシャルムービーさ。年末にでも放送出来れば、財布の紐を緩めた大人たちがお布施してくれるだろう」
「コンテンツの持続には、アニメ化など諸刃の剣ですがね」
「一瞬でも盛り上がってくれればいいのさ。これでもきちんと研究したんだ、【潜水艦これくしょん】や【ファイトガールジュニアスクール】と同じ轍は踏まない」
「研究ですか」
「税金対策だというのに盛り上がった【Destiny/Grand Bestellung】を超え、【ボルグレッドファンタジー】をも超えて見せるさ」
「熱心なようで、私は大変嬉しゅうございます。やはり隊長がおられてこそ、指針が示されてこそ、私は不安を感じずに任務へ励むことが出来る」
『星屑デーモンシンデレラ! メディアミックス!!』
やけにしっかりした上下関係……というより信頼関係。
悠奈の年齢は和夢よりも下であるだろうに、よくもまぁへりくだった物言いが出来るものだ。
「ははっ、よしてくれよ和夢。ああそうだ、特典についてた声優のライブイベントに当選したんだけど、和夢も一緒に行くかい?」
「聞き捨てなりません。隊長、まさか円盤を購入したんですか。その費用をどこから捻出したんですか」
「あっ……お、お小遣いからだし? 給料からだし? 決して横領とかしてないし?」
「そんな金があるのならこちらに回して下さっても良いのでは……? これだけの人員でやりくりするのも大変なのですよ……?」
「あはっ、あはははは~」
「誤魔化せるとお思いで? 冬流に連絡させてもらいます、隊長のお小遣いは減額です!」
「あっ、そういうこと言う? 上司に対してそんなこと言う? いいんだね、僕蹴るよ? 蹴っちゃうよ? いいんだね!? 蹴るよ!?」
「往生際が悪いですよ」
『メディアミックス! 星屑デーモンシンデレラ!』
いつの間にかそれは逆転し、子供を窘める良いお兄さんのものへ。
ケータイを取り出して会話する和夢と、その脛を蹴り始めた悠奈。
だが、それも束の間の休憩時間だからこそ。就業時間はとうに終わっているが、これからデスマーチが待っている。
「あの、少しいいですか」
ようやく要件が済んで脛蹴りから取っ組み合いへとシフトした2人へ向かって問う。
「何だ?」
「何だい?」
被るとか、どれだけ仲が良いんだこの二人。まあそんなことはいい。
一呼吸おいてから、
「処分するってことは、殺すってことですよね」
『星屑……』
務めて平静を装いながら口にした。
「あはは、随分と人聞きの悪いことを言うね」
「小僧、貴様には関係ないことだ」
「まあいいか。そうだよアルバイト君、ミラー・スミスは檻から逃げ出した危険分子だ、この世界から排除しなければならない」
「隊長!?」
「君はもう無関係じゃない。だから教えてあげただけさ。それで? 満足してない顔だけど、まだ聞き足りないことでもあるのかな?」
互いに距離を取って、軽く埃を払う。
悠奈は終始ニコニコしていた。気味が悪い程の微笑みが、へばりついてでもいるかのようなそれが、嫌な予感をじわじわと湧き立たせる。
「それ以外の選択肢は取れないんですか」
「う~ん、現状で取れる無力化措置は何通りか試したんだけど駄目だったんだよね。流石は稀代の科学者、普通の人間の体じゃあない。肉体改造に催眠暗示、あらゆる手を暴露して対抗してくる」
「そこまでお教えする必要は無いかと」
「それは彼を心配してのことかな?」
「隊長の身を案じてです」
一段声を落として和夢が耳打ちしていた。
そうだ、俺は所詮アルバイト。だというのに、踏み入ってよい領域を超えようとしている。
「あなたたちは……やっぱり、テロリストなんですね」
それでも踏み出した。
遠くへ置き去りにしていた記憶。
「あはは、酷い言い草だ……が、真実でもあるし偽りでもある」
少しだけ影が差した笑顔で悠奈が自嘲する。
正義のヒーローでテロリスト。その実態はソーシャルゲーム開発会社。だがそれはほんの一部で、蛇の尾の先端に過ぎない。とても大きな、陰謀のベールに包まれた存在。
「秘密結社セカンドピース。俺は今まで、これが善だと、正しい事だと信じて働いてきました。それがなんですか、笑って人を殺そうとする集団だなんて思いませんでしたよ」
「小僧、我々を侮辱するか!」
「あはははは、面白いじゃないか。この状況が分からない君じゃないよね、いいよ、話をしよう。和夢は少し黙っていてくれ」
「なっ、何故ですか!?」
「君はとうに揺さぶられている。ここは僕の出番なんだ、邪魔はしないで欲しいな」
『ご主人に手を出すつもりですか』
「そんなことはしないさ。出来ればハヤナもお静かに」
諭された和夢は、渋々と口をつむぐ。
悠奈は場が静かになったのを見計らってから、
「さて……事の重要性が理解出来ていないようだね、アルバイト君」
楽しそうに語り始めた。
「あの事件が起きた時、ミラーはまだ工房にいた。つまり彼は敵だ、悪の組織なんだ。そこを離れたからといって本質は変わらない、犯罪者としての精神に染まっている」
「だからって、殺人が許されると思っているんですか」
こんなこと、よくある話だと言えばそれまでだ。
危険なもの、知り過ぎたものが辿る運命なんて、ゲームやアニメで散々語られてきたことなのだから。
「あはぁ、君は優しいね。うんうん、それはいいことだ。だからこそ彼女を見つけ出し、彼女も手を差し伸べた。聖女様の加護を受けた気分はどうだい?」
「はぐらかさないで下さい。俺は正義のヒーローだっていう、到底信じられない馬鹿みたいな話に乗ったからここにいるんです」
最初は半信半疑……どころか全く信じず。だが少しづつ、それは真実なのだと疑わなくなっていった。
大金積まれたってのもあるけど。
「うん、それが?」
「それが、って……」
「それも真実の一つだよ。ねぇアルバイト君、君はさぁ……完璧な正義があると思っているの?」
「な……それは……」
そんなものが存在しないことくらいは中学生でも分かっている。警察だって完全な正義じゃない、街を荒らすヤクザと深い関わりを持っているし。
「完全な二元論的世界だなんて、剣と魔法のファンタジー世界にもそうそうない。単純明快な話が好きな人間が増えてきてはいるけれど、だからといって現実世界が変わることはない。僕たちもそれなりに手を汚してきてるんだ、人類への奉仕という大義に酔いしれながらね」
「奉仕……?」
「そうだよ。結局は僕たちも、根っこでは工房と同じなのさ。超常存在をことごとく破壊してきたけれど、ハヤナと新菜を手元に保護している理由でもある。何故だか分かる? 限界は必ずやってくると知ったからさ」
と言って、悠奈は大袈裟に肩を竦めた。
「意味が分かりませんけど、これだけは分かります。ハヤナを保護したってんなら、その親を保護するのもおかしくはないでしょう」
「いやいや、彼は利用するのも難しいし、ハヤナを奪われでもしたら本当に困るからさ。そうだ、考え方を変えたらどうかな? 妻と娘の元へ送ってあげるんだよ」
「ふざけないで下さい!」
こいつ、一々気に障る言い方をしてくれる!
「ニートをブラック労働させるのは百歩譲って構いませんけど、そんなことするのはどうかと思いますよ。偽善者の皮を被ったテロリストだったなんて思いもしませんでした」
「いい加減にしろ小僧! 隊長に対しなんたる口の利き方だ、そこになおれ!」
激昂が弾け、ずかずかという足音と共に大男が寄ってくる。
だが、それの前に立ちはだかった悠奈の手が抑止となり、あえなく歩みを止められた。
「必要無いよ和夢。どの道、ここから逃げ出すことなど出来ないからね」
「は……」
「出入口は新菜が固めてる、働き者で助かるよね。ストレスを感じにくいっていうのは、ある意味羨ましいもんだ。それでアルバイト君、何も反感を買うためにこんな話を持ち出したわけじゃないだろう? 望みがあるなら言ってみるといい」
ああそうだ。つい流されていたが、明確な意思をもってここにいるんだ。
「単純です。ミラー・スミスとの対話を望みます」
きっぱり言うと、若干の驚きを漂わせながら、
「へぇ……君が?」
そうたずねた。
「俺じゃありません、ハヤナです」
「そうなのかい?」
『はい……』
弱気な声で返すなよ、ネカフェで休息している間に決めたことじゃないか。
「あはは……う~ん、困ったな」
「隊長、言うことを聞く必要はありません」
「それでもほら、真摯な願いは出来るだけ叶えてあげるべきじゃん? そのほうがコントロールしやすいんだもの。予算を締め付けて手綱を握るのと同じだよ」
丸聞こえだぞブラック上司。
「安心してよアルバイト君、僕たちだって悪魔じゃあない。でもね、組織っていうのは一度動き出したら簡単には止まれないのさ」
予算を締め付けたらしい上司は、部下の嘆きを無視して微笑んだ。
「僕は全能なんかじゃあない。でも……ははは、どこかにはいるかもしれないよ? 機械仕掛けの神が」
ゆっくりと、刻むように言霊を紡ぐ。
強制的に幕を引かせる神の名前を。
「それならば、動き出した機動部隊を止められるかもしれない。けれど、それがどういう行為なのか理解しているのかな。敵の敵は、結局敵だ」
ジロリ、と切れ長の瞳が俺を射抜いた。
明らかな敵意。それはもしかしたら、殺意なのかもしれない。
「えぇ、敵ですよ。親子の問題に介入しようってやつは、全員敵です」
やけに感覚が麻痺してきたことに内心驚きながらも冷静に返す。
ここで終わってたまるか、まだ何も知っていないんだ。
『お願いです……これだけは、譲れません!』
-≫チャンネル #電脳浮遊未来都市 に入室しました。
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-ルール:忘れないで、あなたがここにいるということは、あなたが見られているということでもある。ろくでもない措置を取った場合、あなたという存在は抹消される。つまらない流行の暴露も程々にしておいてね、追放されても自己責任だから。
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