異世界は呪いと共に!

もるひね

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Phase1 プロローグ的な何か!

船出へようこそ!①

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 雲一つない茜空。
 それが哀しく見守る中、俺たちはリューグナ―村への帰路についた。
 死縛者デストラクターとの戦闘をやぐらから目にしていた者もいるようで、決して多くはない村民たちは鼓膜が破れんばかりの歓声をもって迎え入れた。
 凱旋とは、このことを言うのだろう。

『よくやったぞミズキ!』
『見てたぜ、カッコイイじゃねえか!』
『流石は天炎者イグナイター様!』
血の闘争団アーセナル・オブ・ブラッドに栄光を!』
『魔王を倒せー!』
『給料泥棒は帰れー!』

 口々に感謝の言葉を述べられる。わらわらと割拠する群衆の中には、どうやらティアの親父さんもいるようだ。強面の顔にはうっすら涙が浮かんでいる。
 ティアの肩を借りて歩く俺は、もう体力の限界で声を張るのも億劫だった。

「手くらい振ってやれ、少年」

 眠り続ける少女をおんぶしたヴァルター・タリスマンに咎められる。

「彼らがここにいられるのは君のお陰だ、まさしく英雄……私も、きっとユリカ様も君に感謝している」

 情に訴えるような、発する言葉の一言一言を噛み締めるように彼は言う。安心感を強制的に引きずり出され、照れ臭くなる。

「そんな……大層なものじゃないです」

 英雄──この世界へやって来た時、誰かに言われた気がした。ぼやけた頭に浮かんだ名前は、シエル・バーンズと名乗った黒魔術師。俺を異世界へ招き、そして危険な魔法を授けた悪戯好きな狂人。

「それでもだ。私は両手が塞がっている、万が一にもユリカ様の眠りを妨げてはならんのだ。この場は君に任せたい」
「でも……」

 夏目由梨花は、その小さな体に蓄えられた熱を全て出し切ったようで、いくら声を掛けても目を覚まさない。だがティアの回復魔法のお陰か、それとも天炎者の圧倒的な自己修復機能のお陰か、顔色も薄紅の唇にも生気は宿り、今はただ疲れて眠っているだけだ、と理解した時には心底安堵した。

 褒められるべきは彼女だ、俺なんかじゃない。
 命を燃やした彼女に。

「圧倒的な力の前には皆が畏怖する。都では、天炎者は恐れられる存在……だが君は違う、彼らと何も変わらない普通の人間だと思われている。やること、為すことがさも自分の事であるかのように共感してしまう……天炎者などではない、アムレット料理店の……いや、村の一員として」
「そんなことは……」
「いいから、ほら、笑顔だけでも浮かべろ。少女よ、くすぐってでも笑わせろ」
「わ、私……?」

 目を赤く腫らしたティアが驚く。

「ああ、力一杯笑わせてやれ」
「でも……傷が開いたりしたら……」
「大丈夫だ、すでに塞がっている」

 ティアの心配はごもっとも。
 だが傷は完全に閉じていたし、切断された左腕も完璧に再生している。
 超人的な力を持ったヒーローだ。
 同じではない、ということがこんなに怖いと感じるほどの。

「天炎者としてではなく、人間としての君を覚えさせておくんだ」

 ヴァルターは呟く。

「いつか君が忘れても、彼らが忘れていないなら……それはきっと、嬉しい事だろう」

 俺はここにいる。
 それは魔法使いとしてなのか、人間としてなのか。
 今の俺には、どちらなのか分からない。だが彼らの瞳にはどう映っているのだろう。

「怪我はないかティア!? どこか痛いところはないか!?」
「だ、大丈夫だよお父さん」

 焦燥を浮かべた親父さんが駆け寄ってくる。愛娘を心配する優しい父。
 俺の親はどんな人だっただろう。
 記憶は未だ戻っていない。
 ただ、ぼやけた断片を覗いた限り、あまり良い親ではなかったように思う。

「ミズキも無事か!? すぐに美味いメシ、用意するからな!」
「大丈夫ですよ、親父さん……」

 こんな時にも料理の話か。
 クタクタに疲れてはいるが体は正直者で、酷い空腹感に苛まれていた。魔法を発動した後はいつもこうだ、親父さんの提案はとても助かる。
 暖かいシチューをご馳走になろう、そう考えていた。

「よおミズキ、これ持ってって食べろ! ありったけのリンゴとブドウだ!」
「あ、アタシはこれあげるわ! 手に入ったばかりの生薬よ、ジンジャーって言うんですって、好きに使って!」
「私はチーズを与えましょう。ほら、青カビがいい具合に繁殖しています、酸味がきいておいしいですよ?」
「こらお前ら、そんなに持てるワケねえだろ! へへっ旦那、このツタ篭を使ってくだせえ。あっしの女房の手作り品でさあ」

 いつかのように、四方八方から様々な品を渡される。とても持てるハズもなく、それらは親父さんが引き取ってくれた。
 この村は優しい人ばかり……そんなセリフを誰かが言っていたな。その通りだ、優しすぎる。

「ミズキ……」
「大丈夫だよ、ティア……」

 熱くなる目頭を押さえて笑顔を作る。さぞ不器用なものだっただろうな。
 もう人ではいられない。
 奥底ではそう思っていたから。

「団員が迷惑をかけた……すまなかったな少年、それに少女も」

 ざわつきが収まるのを見計らった頃、ヴァルターが口を開いた。

「我々は都へ帰還する。達者でな」
「え、歩いて帰るんですか?」
「馬鹿を言うな、とうに馬車は見繕ってある。まあ距離は大したものでもないが、いつまでも肌を振れ合わせているのは恐れ多いことでな」

 真摯だがどこか親近感を感じる騎士にそう返すと、硬い表情は凍り付いた。

「……!」
「最初はお姫様抱っこしようとしてたじゃん……」
「……!?」

 ははーん、さてはこの騎士、上司である由梨花にとある感情を抱いているようだ。淡いものだと知っていながら。
 ヴァルターの年齢は知らないが、成人は超えているだろう。幼さが垣間見えるその顔は幾たびもの戦いの印が刻まれた戦士のもの。
 共に戦場で戦い、芽生えた感情。
 それは恋?

「そのようなことはない! ではな少年少女よ、いずれ──」
「待って……下さい、ヴァルター」

 去ろうとした騎士を引き留めたのは、夢から覚めた白雪姫。

「ユ、ユリカ様!? これはですね、その──」
「後で聞きます……それより、彼女は……」

 死縛者との争いがどうなったのか心配しているようだ。

「は、すでに討伐致しました……現在は村の警備団が警戒しております、ご心配なさらず」
「そう……ですか」

 掠れた声で囁く少女の意識は遠いようで、ヴァルターは必要なことだけ話して会話を終わらせる。
 由梨花は一息ついた後、焦点の合わない目を彼方へ向けた。

「瑞希は……どこですか……? 話さなければ……」

 そこで力尽きたのか、小さな体を騎士の背に預けて動かなくなる。耳元で聞こえる寝息に、騎士は顔を真っ赤に染めた。

「ユリカ様は君に話があるそうだ……少年」
「俺も、聞きたいことがたくさんあります」

 そうだ、今こそが選択の時。
 命を燃やせ、宝を守る為に。

「いっしょに都へ連れて──」
「そ、そうだ! ウチで休んでいったらどうですか!?」

 事の成り行きを見守っていたティアが、俺の言葉を遮る。

「部屋なら空いてます、私の部屋を使っても構いません!」
「いやしかし……」
「目を覚ますまででいいんです! お別れは……ちゃんとしたいんです」

 ティアは由梨花といつの間にか仲良くなっていた。といっても、一方的に懐いている感じだったが。本人が何も言わず帰ってしまうのは残念だろう、引き留めるのも分かる。
 それとも気付いているのか……俺の心情に。

「だが……う、うーむ……」

 騎士は逡巡する。今の状況も悪くない……そんな思念が読み取れた。

「果物とか貰ったし、あーんしてあげようかな……」
「……!」
「汗や血で酷いだろうし、体拭いてやんなきゃな……」
「……!?」
「な、ティア?」
「うん!」
「……!!」

 明らかな動揺が見て取れる。

「そのような無礼な振る舞い、この私が許さん!」
「俺がやるワケないでしょう……で、どうするんですか?」

 ヴァルターは肩を震わせ、絞り出すように言った。

「……ご厚意に甘えよう」

 見返りは、世界の真実。


 ☆


「私から話せることは多くない……それでも構わないな?」

 由梨花をベッドへ寝かしつけ、ティアが面倒を見ると言い切ると、ヴァルターが重い口を開いた。

「はい」
「いいだろう。だが二人きりで話したい、空いている部屋はあるか?」
「なら、隣にある俺の部屋で」
「あの……私は聞いちゃいけませんか?」

 場を移そうと歩を進めた時、ティアが割って入る。

「すまないが、民衆へ口外することは禁じられている内容だ。君が知る必要はない」
「でも、ミズキは私の家族だもん!」
「知っても無用に混乱するだけだ、後で少年の口から聞きたまえ」

 禁じられているのに、横流しするのは構わないのか。

「でも……」
「私でさえ半信半疑な内容なのだ。何を知ったとて、何を成したとて……この世界は理解できない」

 なるほど、荒唐無稽な話であるために信憑性がないということか。それが流れたところで単なる噂話、すぐに忘れ去られる。

「ユリカ様を頼む。では行こう、少年」
「はい」

 甲冑を脱いだ騎士の後を追う。

「ミズキ……」

 名を呼ぶ少女に背を向け、俺は扉を閉ざした。

「帰ってくるよね……」


 ☆


「さて……どこから話せばいいものか……」

 ヴァルターは椅子に、俺はベッドに腰を掛けた。
 木造のこの家に機密なんてない、すぐ隣の部屋にも丸聞こえだろう……それを知った上で話すのか、由梨花が俺へ伝えようとした内容を。

「あの、俺からいいですか?」

 考えを巡らせるヴァルターに問う。

「構わない、何だ?」
「ノーレンっていう女の子は、血の闘争団の一員なんですよね?」

 死縛者に止めを差し、俺の命を狙った少女。
 何故襲われたのかにも疑問がある。だが、まだ真実を知りたくないという感情が働いていたのかもしれない。

「そうだ、団の一員で間違いない。モンスターの凶暴化に伴って団へ応援を要請したが、まさか彼女が出向いてくるとは……不運だったな少年」
「天炎者って、基本一人行動なんですか?」
「そんなことはない。ある程度の自由は保障されているが、戦闘が予想される場合は必ず従者が付く。私のような、な」
「でもあの子は……」
「特別なのだ、彼女は。団で唯一、単独行動が許されている天炎者……“零血のノーレン”」

 入団している天炎者は皆、二つ名が与えられているようだ。
 氷を発生させる能力もそうだが、あの凍てつく瞳……全てを見透かすような目から付けられたのではないだろうか。
 血も通わない蝋人形。

「一度だけお仕えしたことがある。そうだな、2年前のことだ……時が経つのは早いな」

 語られるはかつての思い出。

「当時の私は、選定試験に合格したばかりの新米だった。勝手の分からない私に、ノーレン様は手ほどきして下さった」
「単独行動してたんじゃ?」
「それは現在の話だ、当時は違う。御一人を好まれるようになったのは、確か第117回討伐遠征の頃だったろうか……」

 血の闘争団が掲げるのは魔王の討伐。
 そこでノーレンは何を見て、何を知ったのだろう。

「辛辣ではあるが、お優しい方だった……どのような雑用を押し付けられようと、進んで引き受けてしまうほどの魅力があった」
「ヴァルターさんって、尻に敷かれるタイプ?」

 突然の冷やかしに、ヴァルターはむ、と顔をしかめた。

「モノの例えだ、従者であれば当然の行いだ」

 語尾を強調して返される。

「だが変わられてしまった……天炎者を嫌う天炎者に。団員はもちろん、はぐれ者は尚更だ、殺すことを躊躇わぬほどに」
はぐれ天炎者ロスト・イグナイター……」

 異世界を彷徨うならず者、それがはぐれ天炎者。
 転移してきた人間に自由など無い。

「だからとて、ノーレン様への忠義が薄れることはない。彼女が心を許したユリカ様をお守りすることが、私にできる恩返しなのだ……」

 借りは増えるばかりだが、と寂しそうに笑った。

「ユリカと仲がいいんですか?」
「ノーレン様がいつもからかっていたように思うが……ああ、良かった。姉妹ではないかと噂していたな」

 過去形。

「人は変わる……私もそうだ。いつまでも子供のままでいられない、大人にならなければ宝を守れんのだ」
「宝……」
「そのために剣をとった。君もそうだろう、少年?」

 哀れみに似た微笑みを浮かべ、ヴァルターは問う。
 彼が戦うのは由梨花の為。
 俺が戦うのはティアの為。
 でも。

「あの……死縛者のことなんですけど」

 ビクッっと眉間にしわが寄った。
 ついにきてしまったか、という焦燥。

「あれって普通のモンスターじゃ……ないですよね」

 硬い鎧と脅威の再生力を持った怪物。
 知りたくはないが、聞かなければなかった。

「薄々感づいているだろう……それを語る前に、天炎者について話させてもらう」

 ヴァルターは笑みを消し、厳とした声音で言う。
 話の腰を折られた気もするが、知りたいことが多すぎた。

「天炎者が未知の世界からの来訪者だということは知っている。英雄などではない、普通の人間だということも。少しばかり肉体が頑丈な普通の人間……君もそうだろう?」
「はい……」
「力もなく魔力もない……だというのに民は敬い、崇める。なぜだか分かるか?」
「それは、魔法が使えるから……」
「確かに、我等からすれば魔法と言う他ない力だ。鎧や剣を顕現させ、炎や氷を自在に操る……祈りを必要とせずに」
「祈り?」
「それがイデアル・プラトオム国の魔術だ。精霊と契約し、平和を祈ることで奇跡をおこす。とても天炎者にはかなわないが」
「氷を砕いてましたよね?」
「手加減して下さったのだ。恐らく。きっと。多分」

 ノーレンの氷を雷で砕いたことに、自分でも驚いているようだ。

「まあいい、話を戻そう。一見魔法にしか見えないが……あれは呪いだ、少年」
「…………」

 一層声を落として告げる。

「あれほどの力をなんの祈りも必要とせずに行使するのだ、何かを犠牲にしているのは確実。それが何か私には分からないが……団長やユリカ様は知っているだろうがな」
「犠牲……」

 言われなくても分かる。
 強大な力を行使する代償。
 それは命。
 ありきたりな話だ。

「己の罪を認めることで力を正しく使える、とユリカ様はおっしゃっていた。それが剣を発現させる条件だとも」
「認めなかったら……?」
「死縛者になる」

 まるで音が消えたかのように、何も聞こえない静寂に包まれた。
 異形の怪物。
 生を妬み、頭を失っても死へ誘おうとした醜い獣。
 天炎者は殺戮人形へと生まれ変わる。

「そんな……」

 掠れた声を絞り出す。
 あの死縛者には確実に意思があった。それはそうだ、人間なんだから。孤独を寂しがるか弱き人間。
 俺は、人を殺した。
 止めを差したのはノーレンだと抗うが、込み上げてくるものを抑え込むことは出来なかった。口を押えるこの手で、首を撥ねたんだ。

「ユリカ様が、君を血の闘争団へ執拗に勧誘し続けたのも頷けるだろう。いつ炸裂するかも分からない砲弾を、この平和な村に置いてはおけない。それよりも牢屋へ閉じ込めたほうが被害は減る」

 落ち着くのを待ってから言う。
 そうだ、イグナイターとは点火装置。制御を離れ、一度火が付けば激しく燃え上がる。

「俺も……いつか死縛者に?」
「それは分からない。だが意思を強く持て、自分と言う存在を認め続けろ。寿命を全うした天炎者もいるんだ、きっと君も、君のままでいられる」

 彼なりに心配していることは理解できる。だが根拠なんてあるかどうか分からないんだ、望みを持たせないでくれ。
 彼女の隣にいたいという望みを。

「ノーレン様がその証明だ」

 思考を読んだのか、一呼吸開けてから続ける。

「ユリカ様もだ。自分だけではない、他人をも認める器の広さ。君はいつか言っていただろう、好きに生きて何が悪いと。力を正しく使えるのなら君を見逃すつもりだったのだ、あの方は。ご自分では選べなかった生き方を、君になら、と」

 ヴァルターの顔に影が差す。
 この男よりも幼い由梨花は、内に潜む闇に呑まれないよう抗っていた。鎖に囚われることを好む人間なんていない、自由に生きていたい、好きにしたい、当たり前のことじゃないか。

 でも天炎者は逃れられぬカルマを背負ってしまった。

「同じニホンジンである君になら、と」
「…………」

 そうだ、由梨花はたった一人の日本の女の子。
 この世界に一人しかいない同郷人。
 同じ話題を共有できる、たった一人の。

「こんな時に言うのも気が進まないが……少年、私と共に来ないか?」
「え……」

 申し訳なさそうに目を伏せ、ヴァルターは提案する。
 闘争団への入団を。

「ノーレン様はすぐに報告するだろう、新たなる天炎者が加わったことを。まったく、仕事の速さは変わっておられない」

 大袈裟に肩を竦める。

「通常であれば、天炎者は発見次第連行される。それをユリカ様が団長に無理を言って、説得による懐柔を図ったのだ。友人である君のために」

 友人か。
 そう意識してはいなかったな、俺の胸を刺し貫いた少女のことを。だというのに破れた制服を直したり、力技で押し付けずにしつこく説得したり。
 由梨花……君は優しすぎる。

「団では……どんな生活してるんですか? 天炎者って……」

 魔王を討伐する戦力。
 しかし天炎者は絶対的な力を持つ側面、いつタイマーが作動するか分からない危険物。腫れ物扱いされてでもいるんだろうか。

「心配するな、何も四六時中監視しているワケではない。個人に部屋は与えられるし、休日には街へ出歩くのも勝手だ。自然と聴衆が目になってくれるからな」
「はあ……」

 思っていたほど雁字搦めではないようだ。
 聴衆の目……転移してきた俺や由梨花がそうであったように、ノーレンも現代の洋服を纏っていた。それはこの異世界、イデアル・プラトオムでは出回らない希少な服。珍しがられるのも当然か。

「遠征時には、主に天炎者が隊の指揮をとることが多い。だが君は経験が浅い、同じ隊に配属されたらいいがな……おっと、もしもの話だ」
「遠征……」

 それは命を燃やす旅。

「魔王って、どんなヤツなんですか……?」

 聞いた途端、微かに、目を逸らした気がした。

「それは……そのだな……」

 ヴァルターはしどろもどろ。自分が話して良いのか迷ってる様子。
 魔王なんて民に悪事を働く悪の帝王だろう、何故言い淀む? 定番な理由ではないのか。

「くくっハッキリ言えばいいんじゃない? 魔王なんかいないって」

 何者かの笑い声が、狭い部屋に反響する。
 どこかで聞いた覚えのある笑い方だった。

「そうでしょう、騎士ナイト様?」
「最後の魔法使い……シエル・バーンズ!?」

 それは、俺をこの世界へ堕とし、禁忌の呪いを与えた張本人だった。

「あ、おっひさー、山城瑞希くん! 私の可愛い人形ドール!」

 黒衣を纏い、音もなく姿を現した魔女。
 それを目にし、ふつふつと湧き上がったのは──怒り。

「シエル……お前!」
「やっほー! 元気にしてた?」

 ニタニタと笑う魔女に、衝動のまま拳を向けた。

「うわっ!? ちょっとちょっと待って待って!」

 慌てた様子でシエルが手を振りかざすと、駆け出した俺の体は静止した。
 カチン、カチンと回り続ける歯車の停止。
 動力を失った発条人形。

「おぉ怖い怖い……そんなに血気盛んだったっけ、瑞希君は?」
「貴様、何のつもりだ!?」

 口すら動かせない俺に代わり、身構えたヴァルターが問う。

「おやおや、こっちの騎士様も怖いなぁ」
「当然だ、貴様はこの世界を混乱に陥らせた元凶……今更のこのこと姿を現したということは、斬られる覚悟が出来たということか?」
「えぇ……私は元凶なんかじゃないわよ、むしろ手助けしてあげてるじゃない。何事もバランスを取ることが大事なのよ、騎士様。お分かり?」
「どれだけの人間が迷惑を被ったと思っている……! とにかく今は、彼を解放しろ!」
「あら、忘れる所だったわ。ゴメンね瑞希君、もう殴らないでね?」
「はっ……はあっ……!」

 ギチン、ギチンと巡りだす。
 胎動と共に熱が廻り、体の自由が取り戻される。
 笑みを絶やさないでいる魔女を睨みつけ、吹き出した汗を拭う。これは緊張? それとも恐怖?
 違う。

「殺す……」

 悪戯で呪いを掛けた。
 狂気に満ちたその笑顔。

「ん? 何か言ったかな、瑞希君?」

 何がプレゼントだ。
 何が楽しく生きられるだ。

「殺す……!」

 新たな命には自由なんてない。
 選択なんて与えられていない。
 決まった道標しか進められない。
 それはなんて、悲しいことだろう。

「お前を殺す……!!」

 ただ傍にいたいだけなのに。
 こんなに痛いなんて。

「くくっいい目だね……あぁ、本当に私を殺してくれそう。いいよ……すごくイイ!」

 恍惚とした表情を浮かべ、下腹部を弄る。
 魔女は狂人であり変態であった。

「やめないか! それに少年、君も落ち着け。天炎者は皆、彼女に歯向かうことが出来ない……私が切り捨てる!」
「おいおい、騎士様こそ落ち着きなよ。私はただ世間話をしにきただけなんだって」
「話だと?」
「そう、お話。瑞希君はそっち側につきそうだから、私から補足しておこうと思って」

 掌からバチバチと雷光を放つヴァルターを尻目に、シエルは俺に顔を向ける。

「どうかな? 『俺TSUEEE!』とか馬鹿みたいに騒ぎ回ってる? アホだよねえ、あんな物語を書く作者も読者も。自己投影なんかまるで出来ない。苦労の末成功するというカタルシスの快感を分かっていない」

 突如、現実世界の言葉たちが浴びせかけられ、ヴァルターは困惑。
 俺も面食らうが、知識にはあった。現実から逃避した人間が紡ぎ出す幸福な世界。自分もそこにいられたら良かったのに。

「ふざけんな……! 楽しめるワケないだろ、こんな呪いを掛けやがって!」

 力の行使には命を燃やす。
 そして、歪めば怪物になる。

「呪い? それは間違いだよ、れっきとした魔法よ! 再びの命を授かって魔法も手にしたんだから、楽しくないワケがない!」

 魔女は両手を掲げて乱舞する。
 喜びを全身で表現するように。
 ここにいることを嬉しがるように。

「馬鹿にしやがって……命をなんだと思ってる!!」

 嬉しかった。
 楽しかった。
 でも、もう戻れない。

「命ィ? くくっ君がそれを言うの?」

 矛盾を見つけた魔女は嗤う。
 心底嬉しそうに。

「自ら命を絶った、君が?」
「……!」

 それは、考えたくなかった罪。

「命を大事と言いながら、君はそれを手放した。それを私がどうしようと勝手でしょう? 君にとっては大事なものではなかったんだから」
「だ、だからって……!」

 やけくそな反論。だが続く言葉が見当たらない。

「私には君の望みが分かるよ。大暴れしたいんでしょ? その為に力を与えた」
「そんなこと……望んでない!」

 掠れた声を絞り出す姿は、さぞ滑稽に見えただろう。

「この魔女シュヴァイン・ヴァイプが、揺さぶりをかけて死縛者へ傾ける気か!」
「まぁまぁ落ち着いて騎士様、説教なんてツマラナイことはしないわよ。あとその蔑称はやめて。お願いだから」

 波打つ鼓動に押し出されるように、涙が零れそうになる。それが決壊しないよう必死に堪えた。余計笑われる気がして。

「何の話だっけ……そうそう、魔王の話だったわね。もう討伐されちゃっているのよね、天炎者たちに」
「は……?」
「どれくらい前だったかしら……30年は経ってるわよね。あらいやだ、私の年齢がバレちゃうかも」

 興味ない、という言葉すら出てこない。
 魔王が討伐されているというのなら、なぜ血の闘争団は活動を続けている。なぜ天炎者を集め続けている。
 理由なんて決まってる。

「確かに魔王は消えた。でも均衡を保つために、新たな魔王が出現した。何か分かるかな?」
「死縛者……?」
「う~ん、あれはイレギュラーなんだよね。生まれ変わることを受け入れられなかった哀れな人間」

 シエルは寂しく嗤う。

「まぁ仕方ないわよね、記憶を引きずっているんだもの。“この世界では後悔しないように生きよう”なんて割り切れる人間はそうそういない、そんな人種は娯楽にすらならないチラシの裏に書かれた落書きの世界にしか住んでいないからね」

 感じたのは、諦め。

「先人の失敗を見て君の記憶は消したんだけど……半端に戻っちゃったみたいだね。でもまぁ、天秤は揺らがなかったことだし、問題ないでしょう?」

 遊べなくなった人形に価値はないとでも言うように、死縛者を貶す魔女。
 この女は狂ってる。

「目覚めたら英雄、何も知らず旅立ち、困難を乗り越えて真の勇者になる……それがあっちのシナリオだったけれど、この際だしこっちでいいかな」
「何のことだ……?」
「くくっこっちの話。さて瑞希君、魔法の正体に気付いてるかな?」

 脈絡もなく聞かれる。
 そんなもの、呪いである以外に分からなかった。

「知るかそんなこと……!」
「くくくくくっまぁそうだろうね。答えを教えてもいいけれど、それじゃ面白くない。一つヒントをあげよう」

 シエルは人差し指を口に当て、悪戯な表情を浮かべる。
 内面は婆であると知っている為、鳥肌が立った。

「遊んでんじゃねえ……!」
「この魔法は母系遺伝する。つまり君の魔法は受け継がれない、正真正銘君だけのモノってことだよ」
「遺伝……?」

 中世ヨーロッパを模したこの世界には不釣り合いな言葉。

「もし君がここのお嬢さんと子供を設けたとしても、その力は渡らないってことさ。安心してね、避妊具なんて必要ないから。あ、ないか」
「そんなこと聞いてねえ! 一体何の話だ!?」

 シエルはふう、と残念そうに息を吐いた。

「ミトコンドリアって知ってるわよね?」
「は……?」
「君たち転移者に与えた魔法の大元。それが生み出すエネルギーこそが魔力となり、君たちの精神に共鳴することで、あの鎧や剣が形作られる」

 開いた口が塞がらない。
 理解はできる、だがあまりにも突拍子の無い……馬鹿げた話すぎる。

「くくくっ、難しく考える必要はないわ。ああそうだ、そこの騎士様たちが戦っているのはね……拠り所を失った天炎者の子供たち。この世界の魔法と、異世界の魔法を手にした狂戦士」
「なに……?」
「シエル・バーンズ、貴様!」
「隠すことないじゃない騎士様、いつかは知ることでしょう?」

 ヴァルターが咎めるが、無視して話を続ける。

「自浄作用って本当に働くのねぇ。この世界に元々いたモンスターを絶滅寸前まで狩ったと思ったら、自分たちがモンスターになったんだもの。あ、自分の子供か」
「どういう……ことだ?」
「いつか言ったでしょ、剣と魔法が入り乱れた戦争をしてるって。天炎者が率いる“血の闘争団”と、天炎者が率いる“エアレイザー”との戦争よ。意思疎通はほぼ不可能だから、殺すか殺されるかしか選べないわ」

 天炎者と天炎者との戦争。
 それはあまりにも悲しいものではないだろか。

「は、話せばきっと──」
「それは無理だ、少年」

 浅はかな考えは遮られた。

「奴らは人の姿をしていない。生態も人とはかけ離れている。“話せばわかる”という甘い考えは通用しない」
「そんな……」
「くくっまあそういうこと。地獄だよねぇ、女性の転移者にとっては。未来を託した子宝が、悪意に染まったおぞましい怪物に成り果てたんだから」

 ケタケタと不快な音が反響する。
 それが気持ち悪くて、気持ち悪くて。

「何が……可笑しいんだテメー!」
「いやいや、自浄作用は凄いなって感心しただけよ、何も乏してるワケじゃないわ。以前の魔王を討伐するまでは普通に生まれてたんだけどね? 罪を肩代わりさせられた子供が」
「罪だと……!?」
「そう、君たちの罪」

 ニヤリと笑ったかと思うと、声を大にして騒ぎだした。

「その身に寄生するモノへ支配権を手渡す、神秘であり、人知の功!」

 魔女が願うは雨乞いか。
 天に召される救世主よ。

「人は賞賛するわよ、その罰に!」

 どうか、声が届くのなら。
 この狂人を……どうかお救い下さい。

「“異世界の楽園”を目指して旅立った、不届き者に!」

 死者を冒涜する人形遣いに。

「まあ……それもここまで」

 願いが通じたのか、シエルは落ち着きを取り戻す。
 その突然の変わりようは、人格が変わったかのようであった。

「均衡が再び破られようとしているの。だから君には特別製の力を与えたのよ?」
「貴様、聖女を気取るつもりか!? 自ら均衡を破っておいて何を!」
「だ~か~ら~、それは私じゃないってば。本当に慈善活動しかしてないの!」

 食って掛かるヴァルターをいなし、困惑する俺に目線を向けた。

「君の力はね……天炎者の支配権を我が物とする、王の力」
「王……?」

 くくっ、といつもの独特な笑い声を上げてから続ける。

「そう……覚醒した天炎者は、自身の罪に反した能力を発現させる。近いうちに君も発現するでしょう。でもね、もう一つ種を与えたの。この異世界を、終わる現実世界を、救済し得る王の力を」

 反した能力。
 それは、過去の自分との別れのカタチ。

「縛るもの全てを絶ち切りなさい。立ち塞がるもの全てを従えなさい。それが君、山城瑞希の新たなる生」

 やがて来る日々。
 血生臭い戦場では、空は何色だろう。

「そして……もう一度死になさい」

 傍に光はあるだろうか。
 隣に君はいるだろうか。
 いや、いてはいけない……壊れてしまったら揺らいでしまう。

「お話はここまで。じゃあね、可愛い可愛いお人形さん──死にたくないのなら、死に物狂いで生きなさい。敵は他にもわらわらといるのだから」

 音もなく、塵も残さず。
 それだけ言うと、シエル・バーンズは消えた。

「…………」

 静寂の闇の中、ふらつきながら歩を進める。

「少年……」

 言われたことは、どれも信じがたいもの。
 頭の整理が追い付かないし、理解できる内容ではない。
 今はただ、君に。
 会いたい。

「ん……?」

 扉を開けた先には、見知らぬ人間が3人。どれもがローブで身を包んだ格好をしている。行商人みたいだ──そんなことをぼんやり考えながら、あれ、なんでこんなところに行商人がいるんだろうと馬鹿な思考が駆け巡った。

「異端審問会である。御同行願おう、新たなる天炎者よ」
「貴様ら、何故ここに!? 司祭には話をつけてある、即刻引き返せ!」

 盾になるようにヴァルターが前に出て威嚇にも似た大声を上げる。
 異端審問会、か。魔女狩りでも始めるつもりだろうか。なら、シエルという魔女を一刻も早く処分して──天炎者?

「そうもいかない、これは国王陛下の御尊名において履行される神聖な審判である。安心して欲しい、一段落すればすぐにでも送り返す」

 あまりに突拍子のない事態の連続に、俺の思考回路は擦り切れる寸前だった。
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