世界が終わるという結果論

二神 秀

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CHAPTER.4 旧態依然な灰緑(キュウタイイゼンナハイミドリ)【天体衝突3ヶ月前(冬)】

§ 4ー1  モノローグ④  喜多見蜜柑

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--喜多見蜜柑・夢の中--


 フワフワと陽だまりのような温もりだけは微かに覚えている。いつのことか、そこが何処なのかも分からない。けど、確かに誰かがそこにはいた。一人は顔の輪郭もボヤけて、誰なのかは分からない。もう一人は見たことのある顔。しかし、その人は今はもう見ることのできない優しい表情を浮かべている……


 その店は時間の流れがゆるやかで、温かいを提供していた。白いシルクハットで白いスーツの老紳士がいつもカウンター席に座っている。ときどき老紳士とは目が合う。その目は柔和にゅうわな目尻で、決まってこちらも微笑みを返してしまう。

 その店には毎日、多くの人々がおとずれる。老若男女を問わず、そのを求めに来店する。私はお客さんでも店員でもなく店の中をもなく歩き回る。
 若い女性は頭をでてくれた。老夫婦はとても甘い飴玉をくれた。よく見かける店員さんは肩車をしてくれた。みんな笑顔なので、私も自然と笑顔になってしまう。その景色を店の一番奥から見ている黒い大きな熊の店長さんも、ふと口元が緩んでいた。

 この店が私は大好き。不細工な動物たちの置物。ねじ曲がった針がチクタクチクタクと追いかけっこする柱時計。色とりどりの流れが止まった砂時計。店内は人も物も色も音もざわついている。こんな店内なのにを求めにくるのは、窓から見える外がおぞましい暗がりだからだろう。暗がりの中にいる人たちにとっては、この店でのは大事なことなのだ。
 でも、私には白い老紳士と熊さんが、いつも一緒にいてくれる。2人がいつも見守ってくれる。だから、私も2人に負けないように力になりたかった。私が好きな、このを提供する店も、もっと好きになるように色んな物をかざりつけた。


 ウオオオォォォーン!

 外からひびいた、けたたましい音。その音は、店内にいるすべての人からを忘れさせた。
 一人、また一人と席を立ち、サッサッと早足で暗がりの外に出ていく。働いていた店員さんも後ろ髪を引かれながらも出て行った。

 残ったのは白い老紳士と熊さんと私の3人。誰もいなくなった大好きな店。静けさにふと涙があふれる。そっと熊さんに手をにぎられる。その顔は、見覚えがある笑顔をしていた。白い老紳士はいつにも増して柔らかい目をしながら私に寄りってくれた。

 私は2人の表情に安心した。

 そして、3人で暗がりが濃くなる外にゆっくりと歩み出す。

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