ディスる彼氏と褒める彼

竹柏凪紗

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第35話 いちばん会いたくなかった人

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聞き慣れた声に焦りながら涙を拭った稲穂は嫌な気持ちを抑え込んで振り返った。
立っていたのは声から予想したとおりの人物、宮都志月さん。

人通りの少ない生活道の街灯に照らされて、きれいな顔がいつもより生えて見える。
そのぶん余計にいまの自分が惨めに感じて仕方ない。

怜央に体液を出された顔は拭ってはきたけれど、まだカバカバしている感じもするし、そもそもさっきまであんなことをしていたのかとあらためて恥ずかしくなる。

仕事場の人とか、いちばん会いたくなかったな。
しかも相手がキラキラした宮都さんっていうのがまた、最悪すぎる。

「…野波さん…?」

急にびっくりしたような顔で名前を呼ばれて驚いた穂波にそっとハンカチを差し出し
「もし時間があるなら少し付き合ってもらいたいところがある」
そんなことを言う。

「…え?」
「いや。少し付き合ってもらえないか?」

気づいたときには、少し強引な言い方に切り替えた志月に腕を掴まれていて
「部長に見られたら、またパワハラだと騒ぎ立てるかもしれないな」
なんてクスリと笑う。

まぁ部長は、私にだけしかそんなことは言わないのだけれど。

でもそんなクサクサしたようなことを口にすることも忘れるほど
「野波さんはスイーツ好きですか?ひとりだと少し入りづらいお店があって」
宮都さんのやさしさが心にふわっと沁み込んだ。

「…はい。大好きです」
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