【奨励賞・受賞】彼氏がイケメンなのは絶対ヒミツ

竹柏凪紗

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第33話 2人は普通の高校生

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扇の離れから飛び出してすぐ
「待って!」
追いかけてきてくれたのは、柚吏ではなく扇。

こんな険悪な雰囲気をつくっておきながら、“もしかしたら?”なんて心の隅で期待した自分に嫌気が差す。

末明の腕を掴んだまま扇が
「ちょっと待って。ごめん。怒らせるつもりじゃなかったのに」
気まずそうに謝る。

そう謝られて冷静になった。
別にあんなにブチ切れることではなかったとも思う。

「…全然。こっちこそ…、ごめん」
もう、気まずすぎて何をどう言ったらいいのか、このあとどんな行動をとったらいいのかわからない…。

「あのさ、せっかくだし秘密を共有してる者同士、仲良くしよう?」

そう言って扇が腕を掴んでいた手をゆっくりと末明の指先まで下してこようとしたとき。

バコッ…と後ろから扇の頭を叩いた柚吏が
「やめろ、このたらしが。お前が触ったら妊娠するわ!」
不機嫌そうに言うと末明の腕を掴み、
「なんかイライラする。とりあず、こいつにいろいろ作らせよう」
意地悪な笑みを浮かべて言った。

「へ…?」
「こいつ、高級ホテルのシェフなみに料理うまいから」

柚吏はさっきまでのことなんてなかったかのように普段と変わらない様子でそんなふうに言うと、
「なぁ?扇」
怖い表情で扇を睨んだ。

もしかしたら柚吏なりに、嫌な雰囲気を変えようとしてくれたのかな?
急展開すぎてちょっと笑えるけど。

「はいはい、2人の機嫌を損ねてしまったこの扇が何でも作りましょう」

「じゃあ俺は、小籠包とおでんな」
「はぁ?どんな組み合わせだよ?しかもおでんって、どんだけ居座る気?」

そんな2人は、本当に普通の高校生。

2人の姿を見ていると、本当にこれでいいのかと思ってしまう。

私は嫌だけどな。
自分の自我が封じ込められちゃうなんて…。

「おい、早く入ってこい」
「末明ちゃん、おいで~」
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