【奨励賞・受賞】彼氏がイケメンなのは絶対ヒミツ

竹柏凪紗

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第80話 切断された髪の毛

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柚吏も同時に身構える。
周囲を見回しても誰もいないし気配もない。

波と風の音で、わずかな物音に集中するのも至難の業。

次の瞬間、肩をトントンと誰かに叩かれた。
そして顔を上げようとしたとき、また切断された髪の毛がパラパラと砂浜に落ちていく。

砂浜に落ちた髪の毛に気を取られていた末明の顔を下から覗き込んだのは、同じ白鷺しらさぎ高校の制服を着た女子高生。
茶髪のゆるふわ髪をポニーテールにまとめたその女子は、気が強そうで元気いっぱいという感じ。

「おっそ。こんなのじゃ話にならないわ」

ふっと鼻で嗤って自己紹介。

「私が“刀自古郎女とじこのいらつめ”の末裔、十時爪子とじつめこ。聖徳太子を毒殺したとされる最重要人物よ」
末明の前でクルっと宙返りし、あらためて砂浜に着地した。

いまの宙返りは必要だったのかな?とも思うけど、かっこよかったことは間違いない。

…ん?

「…と、十時爪子とじつめこ?!」
「はぁ~、反応も遅い。こんなのが聖徳太子の子孫をボディーガードしてるとは笑わせるわ」
爪子はそう言ってゆるふわポニーテールを揺らす。

「と、突然、なんでしょう?」

普段の柚吏を演じた自我の柚吏にも、
「そんな下手くそな演技、私には通用しないから。自我のままでどうぞ」
冷たい視線を向ける。

「ちっ、突然、何?」

不機嫌そうに舌打ちした柚吏に、
「別に2人の邪魔をしにきたわけじゃないわ。むしろ私は2人の味方。2人がくっついてくれたほうが都合いいと思っている立場よ」
ニヤっと微笑みかける。

「…は?どういうこと?」

怪訝そうに眉をしかめる柚吏に、
「いまはただ、それを伝えにきただけ。また、いずれ会いましょう。2人ともお元気で」
爪子はそう言うと、ものすごいスピードで去っていった。
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