もう恋なんてしない

竹柏凪紗

文字の大きさ
19 / 185

第19話 ちゃくちゃくと進む話

しおりを挟む
「え…っと…」

いっしょに住むという話を丁寧にお断りしようとした沙那は
「とりあえずいまはそれぞれにいったん社へ戻らないといけないし、仕事が終わったら俺にメッセージを送れ。そのあとあんたの家へ荷物を取りに行く」
口を挟む暇もないまま飛鷹に会社の名刺を手渡されていて焦る。

これに抗議したのは相師。

「ちょ、ちょっと待ってよ。あのマンションは俺の家でもあるんだぞ?」
「あぁ、わかっている。だから“俺たちの家”だと言っただろう」

「…いや、そういう問題じゃなくてさ。俺に話してからとか許可を取ってからそういう話をするでしょ?普通は」

ごもっともな意見を述べた相師だったけれど。

「ほう…。居候の分際でずいぶんと生意気な口を利くんだな?」

飛鷹に睨まれて相師は息を呑んだ。

「しかもこうして、お前のために例の事件についても調べるのを手伝っているのだが?なにか不満なことがあるなら箇条書きにしてメールでも送ってこい」

薄い目をして睨む飛鷹に
「わ、悪かったよ。い、いいよ。全然いい。香村さん、大歓迎」
相師が引き攣った作り笑いで沙那の手を取る。

「むしろ香村さん、ウェルカム!」

「えっと…」
ちょ、ちょっと待ってほしい。

なんだか勝手に話が進みすぎて…。
怖い。

思い切って
「あ、あの~…」
声をかけたのに上原さんと言い合いをしているテンションだったからか、鬼の形相で飛鷹さんに振り向かれ…。

「…いえ。な、なんでもないです」
そう言うしかなかった。

いっしょに住むという提案を断れないまま会社まで戻ってきたとき
「じゃあ仕事が終わったら連絡しろよ。そして広報部へ来い。どうせ俺たちのほうが終わるのは遅いだろうからな」
飛鷹はそう言うと相師を引き連れてさっさと自分たちの部署へと帰っていった。

…どうしよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国王一家は堅実です

satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。 その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。 国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。 外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。 国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

らっきー♪

市尾彩佳
恋愛
公爵家の下働きをしているアネットと、その公爵の息子であるケヴィン。同じ邸で育ちながら、出会ったのはケヴィン16歳の年。しかもふかふかなベッドの中。 意思の疎通の食い違いから“知り合い”になった二人。互いに結ばれることがないとわかっているからこそ、頑なに距離を保ち続けていたはずが──。「これがわたしの旦那さま」の過去編です。本編をお読みでなくても大丈夫な書き方を目指しました。「小説家になろう」さんでも公開しています。

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

エリザは恋について考えていた

通木遼平
恋愛
 「シューディルくんのこと好きじゃないなら、彼に付きまとうのはやめてほしいの」――名前も知らない可愛らしい女子生徒にそう告げられ、エリザは困惑した。シューディルはエリザの幼馴染で、そういう意味ではちゃんと彼のことが好きだ。しかしそうではないと言われてしまう。目の前の可愛らしい人が先日シューディルに告白したのは知っていたが、その「好き」の違いは何なのだろう? エリザはずっと考えていた。 ※他のサイトにも掲載しています

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

処理中です...