もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第30話 これは2人の罠

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「布ガムテープで拘束して無理やり…?セクハラに不同意わいせつ罪、それから…。さて、会社はどういう処分を下すかな?」

もう由衣に犯されるしかないのだと目を固く閉じて
「…助けて…!」
言葉にならない小さな声でもがきながらも諦めかけていたとき…。

ふと聞こえてきたのは低くて冷たい声だった。
…この声、知ってる…。

顔を上げた沙那の視界に入ったのは飛鷹。

「…飛鷹…さ…ん…?」

「なにを驚いている?仕事が終わったと連絡してきたのになかなか広報部へ来ないから様子を見に来たらこの有様。俺のほうが驚いているのだが…?」

驚くというよりは呆れた様子の飛鷹を固まったまま凝視した由衣は青ざめた顔で沙那の上からゆっくりと降りて立ち上がった。

「どういう意図があって社内でこんなことを?」
静かに聞く飛鷹に言葉を返すことができず小さく震えはじめた由衣。

そんな由衣を警戒しながら
「大丈夫か?」
沙那に声をかけ、飛鷹はデスクの上にあったペン立てからハサミを取って布ガムテープを切り離してやった。

解放されて安堵する沙那に俯いたまま目だけを向け、唇を噛んで見つめていた由衣が怖い顔をする。

そして
「これ…。2人の邪魔になる私を会社から追い出すための作戦だよね…?罠でしょ?」
フフ…と落胆したような声で小さく笑う。

どこをどう考えてそう思ったのか、まるで見当違いのことを言った由衣は
「2人して私を陥れて楽しい?!」
顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

…由衣、どうしちゃったの?
怖いよ…。
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