もう恋なんてしない

第39話 キラキラの笑顔

「うわぁ…。ごめん。俺、オヤジから呼び出し！悪いけど2人で荷物取りに行って」

居酒屋から出て沙那の荷物を取りに行こうとしたとき着信音を奏でたスマホを確認して相師。
言い終わるが早いかぴゅーっと去って行って、沙那は飛鷹と2人きりになっていた。

チラリと飛鷹のほうを見ると目が合って気まずい。

スッと目を逸らした沙那に
「…俺…、そんな感じ悪い？」」
飛鷹が聞く。

「…え？」

「いや…。なんか俺…、会社でも怖がられているみたいで」
頭をポリポリとかきながら言う飛鷹は何だかちょっと可愛い。

でもそんなこと聞かれてもなんて答えればいい？

「み、みたいですね…」
こんな微妙な言葉と苦笑いしかできないよ…。

困惑する沙那を見て飛鷹がフッと笑った。

「あんたは正直だな」
「…え？」

「そんなことないですよ、とでも言って誤魔化せばいいのに」
「…あ、でも、さっき上原さんも言ってたし…」

ムキになって真面目に答える沙那を見てますます面白いという様子で飛鷹。

「ど、どうして笑うんですか…？」

「気分を害したなら申し訳ない。こんな仏頂面してるからか愛想笑いされることと誤魔化し笑いされることが多くてな。なんだか久々に新鮮な反応で楽しかった」

…へぇ…。
そうですか…。

「でもきっとそんなキラキラした笑顔で笑ったら、飛鷹さんの印象も一気に変わると思いますけどね」

心の中で言ったはずなのに
「…え？」
驚いた飛鷹の反応に沙那は青ざめたまま固まってしまった。

…私、上司に向かってなんてこと…！