もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第63話 INNOCENTのNo.1ホスト

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「ストームグラス?はじめて聞きました。それがあると雨の日に気分が上がりますか?」

聞いた沙那に
「人によるとは思うけど、俺は気分的に助けてもらってるかな」
微笑みながら絢世。

「ちなみにストームグラスっていうのは、ヨーロッパで19世紀頃に使われていた天気を予測するための道具なんだ。氷の結晶や雪みたいに見える白いモノが水に浮いてきたら雨なんだけど、それが幻想的な感じで癒されるんだよね」

「へぇ。想像しただけでオシャレな感じ。良さそうですね、ストームグラス」
「あ、手づくりもできるから、もしそっちのほうが興味あるならチャレンジしてみて」

他愛のない会話の中にもやさしさや気遣いを感じる。
気づいたときにはふわっとやわらかい安心感に包まれていた。

話をするのが苦痛だったいままでのホストたちとは違って、もう少し話してみたいと思わせてくれるような人。

さすがはお店の外壁にデカデカと写真が載ってただけある。

いまは風営法で禁止になっちゃったけど、あの黒塗りしてある文字の下はきっと「No.1ホスト」とか書かれていたんだろうなと想像がつく。

絢世との時間はあっという間に終わり
「すみません。いま空いてるメインホストがいないんで、少しだけ俺が話し相手をさせてもらいますね」
さっきまでヘルプでついていたシズクが内情まで正直に説明してから笑顔で隣へ。

自分のアピールではなく
「絢世さん、INNOCENTイノセントのナンバーワンホストなんですよ。癒されるでしょう?やさしいし気遣いできるし、いい男なんですよ。ホント」
さっきまでついていた絢世のことを褒めて会話を盛り上げた。

この店、すごく雰囲気いいな。

沙那はそっと周囲を見回しながら行方不明ホストについてどういうふうに聞き出そうか考えをまとめた。
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