もう恋なんてしない

竹柏凪紗

文字の大きさ
68 / 185

第68話 変な勘違いやめて

しおりを挟む
ガムをくちゃくちゃと噛みながら、お客さんの前にもかかわらず新人ホストの胸倉を見えないようにそっと掴んで暴言を吐くシュウに指名が入り、ホッとする沙那。

やっとシュウさんがいなくなる!

安堵の溜め息をついたのに勘違いしたシュウが沙那の肩をガシっと抱き
「俺がテーブルから離れるのが寂しいからって、そんな溜め息をついちゃあ美しい顔が台無しっスよ」
なんて言いながら自分に良し知れはじめた。

さらには
「お金をバンバン使ってくれる太客レディからご指名かかっちゃったんで仕方ないっス。泣かないでくださいっスよ~」
沙那の頭をグチャグチャと撫でまわす。

そして
「俺に会いたくなったらまたウチの店lumineルミネに来て指名してくださぁ~いっス。そのときは高いシャンパンか濃ぉ~いブランデーの水割りで乾杯しましょうや?ロックでもいいですっスよ。ではでは、Adieuアドゥー
笑顔で勝手に締めくくると太客だという中年女性のテーブルへと去って行った。

変な勘違い、本当にやめてほしい。
二度と来ないし、もし何かの拍子にlumineルミネへ来たとしてもシュウさん、あなただけは絶対に指名しないから…。

「…あ、あんな人にでもお客さんって、つくものなんですね…」
思わず心の声が漏れていて沙那は戸惑う。

でもテーブルを挟んで正面に座っていたヘルプホストのシンヤが
「同感です」
そっと笑ってくれたお陰で、うっかり変なことを言ってしまった恥ずかしさと申し訳なさが少しやわらいだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国王一家は堅実です

satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。 その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。 国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。 外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。 国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

らっきー♪

市尾彩佳
恋愛
公爵家の下働きをしているアネットと、その公爵の息子であるケヴィン。同じ邸で育ちながら、出会ったのはケヴィン16歳の年。しかもふかふかなベッドの中。 意思の疎通の食い違いから“知り合い”になった二人。互いに結ばれることがないとわかっているからこそ、頑なに距離を保ち続けていたはずが──。「これがわたしの旦那さま」の過去編です。本編をお読みでなくても大丈夫な書き方を目指しました。「小説家になろう」さんでも公開しています。

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

エリザは恋について考えていた

通木遼平
恋愛
 「シューディルくんのこと好きじゃないなら、彼に付きまとうのはやめてほしいの」――名前も知らない可愛らしい女子生徒にそう告げられ、エリザは困惑した。シューディルはエリザの幼馴染で、そういう意味ではちゃんと彼のことが好きだ。しかしそうではないと言われてしまう。目の前の可愛らしい人が先日シューディルに告白したのは知っていたが、その「好き」の違いは何なのだろう? エリザはずっと考えていた。 ※他のサイトにも掲載しています

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

処理中です...