もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第73話 大人でも許される

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「いや…相師。俺たち大人で、しかも社会人だぞ?それがみんなで名前呼びって…」

呆れた様子の飛鷹に
「なにか問題でも?」
あっけらかんと聞く相師。

「大人だろうが社会人だろうが、はじめてのことなんていっぱいあるだろ?」
「…そうかもしれないが」

「飛鷹はいろいろと気にしすぎなんだよ。ねぇ香村さん?」

急に振られて
「あ、は、はぁ…」
変な返事になって焦る。

「じゃあ俺は香村さんのことを沙那ちゃんって呼ぶから、沙那ちゃんは俺のこと相師って呼んで。飛鷹のことは伊織か飛鷹だけど、こいつ伊織って名前があんまり好きじゃないみたいなんだよね。だから飛鷹で。…って、それじゃあいまとあまり変わらないか」

明るく笑う相師のお陰で、さっきまでの気まずさは一気に吹き飛んでいた。

すごいなぁ、上原さん。
さすがはCREATEクリエイトのムードメーカーって言われてるだけある。

まわりからしたら子どもじみていると笑われてしまうような名前呼びについても、大人の私たちが真剣に考えたり盛り上がったりしたって何の問題もないんだと思わせてくれるから不思議。

「ほら飛鷹、沙那ちゃんって呼んでみ」
「…は?い、いきなり無理だろ。名前呼びとか。せめて香村さ…」
「飛鷹、女の子を“サン”付けとかできんの?」

相師がからかったとき
「さ、沙那で大丈夫です!私、香村って苗字があんまり好きじゃないんで」
思いっきりウソをついていた。

香村という苗字は割と気に入っている。
でもどうせだったら飛鷹さんには名前で呼んでほしい。

これくらいなら、彼氏がいても許されるよね?

「おお、いいねぇ。じゃあ飛鷹、呼んでみ」

急かす相師に
「…は?」
飛鷹は戸惑いながら真っ赤になった。
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