もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第83話 かっこ悪いくらいがちょうどいい

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青ざめてフラついた飛鷹を慌てて軽く支えたのは沙那。

すぐに態勢を戻した飛鷹はヨロリと壁にもたれかかったまま
「…悪い。情けないところを…」
恥ずかしそうに、申し訳なさそうに謝罪した。

「もしかして飛鷹さん…夜の病院…というか、幽霊とか苦手だったりします?」
沙那の問いかけに気まずそうに飛鷹が俯く。

そっと飛鷹が寄りかかっている壁に沙那も背中をくっつけながら
「シイタケとか幽霊とかが嫌いなくらいの飛鷹さんのほうがちょうどいいですけどね」
本音をぽろり。

「…え?」

驚くように沙那を見た飛鷹が
「シ…シイタケが嫌いなこともバレていたのか…」
耳まで真っ赤にして頭を抱える。

「そんなの全然いいじゃないですか」
「いやいや、かっこ悪すぎだろう」

顔が上げられない様子の飛鷹が可愛くて仕方ない沙那は
「かっこ悪いくらいがちょうどいいじゃないですか」
勝手に口から滑り出る本音が止められない。

「飛鷹さん、一見、完璧すぎなんですよね」
「…は?」

「いつも冷静そうで頭も良さそうで何でも完璧にこなしそうに見えるし、そのうえ顔も整っているから抜け目がない印象?だから実際にこうしてかかわってみて、全然そんな感じじゃないというか…」

「…それはどういう…?」

「あわわわわ、ま、まぁ、それくらいのほうがちょうどいいと私は思うので、とにかく気にしないでください。完璧すぎる人間のほうが気持ち悪いですから」

言いながら沙那は、どうして相師が夜の病院へ飛鷹と行くよう勧めたのかがわかった気がした。
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