もう恋なんてしない

第97話 クズすぎるホスト

「近いうちに店へ来て俺のことを指名してくれたら、今度どこかでバッタリ会っても、そのイケメン彼氏にはホストクラブで遊んでたことを内緒にしといてあげるけど。どう？」

ホストクラブlumineルミネで働くホスト・シュウが沙那の耳元で囁く。
店で接客していたときと同じようにガムをくちゃくちゃと噛みながらの上から目線。

飛鷹とは晴れてさっき恋人になったばかりだし、店へは行方不明ホストについて聞き出すために行っただけのこと。
そのことは飛鷹だって知っているわけだから、シュウの脅しに応じる必要なんてない。

けれどいまはカップル設定。

どう返事をするべきか迷いつつも沙那は小さく頷いた。

「待ってるね」

ニヤニヤしながら沙那の肩をポンポンと軽く叩き、飛鷹のほうをチラリと見て浅く頭を下げながら通り過ぎるシュウ。

「なんなんだ？あの態度が悪い男は」

不機嫌な飛鷹に聞かれ
「さっきの人はlumineルミネのホストです。シュウさん。この遊園地オーナーの成金さんが太客の」
さっき言われたことも含めて沙那は説明した。

「あぁ。あいつがシュウか。モデルみたいな顔をしているのにもったいない所作…。沙那に言ったことも最悪だし、脅して売り上げをあげようとするなんてクズすぎるホストだな」

そう言ったあと
「沙那とどういう知り合いかとヤキモチを焼いてしまった…」
ボソリと続ける飛鷹。

「…え？」

思わず反応した沙那に飛鷹は真っ赤になった。

えええっ…？！
こんなことで嫉妬してくれるとか、飛鷹さん可愛すぎ！

「ヤキモチ、嬉しいです！」

沙那は言ってすぐ、真っ赤になっている顔と恥ずかしさを隠すように
「行きますよ！」
飛鷹の手を引っ張ってパーティー会場へと入った。