もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第115話 参加者の足元を見た商売

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「キミたちは今回が初参加だろう?俺はもう3回目。もしキミたちが同じ…」

中年男がそこまで言ったとき、成金がぬぅっと後ろから顔を出したかと思うと
「キタさん。事前に申請もなく、参加者同士でそういう取り引きをすることは参加資格の欠落事由に該当するんだけど構わないのかしら?」

キタと呼んだ中年男性に聞く。

「…そ、それは…」
「困るわよね?困る。非情に困る。そういう表情をしているわ」

成金はキタの顎をクイっと掴んであらためて確認した。

「ペナルティ料金300万円。お支払い頂けるなら今回のことは目をつむるわ。判断はキタさん、あなたに任せるけど。どうします?」

他の参加者がいる前でそのようなことを言われて恥をかかされたと思ったのか、顔を赤く染めて悔しそうに地団太を踏むキタ。

「くそっ!客の足元を見た商売をしやがって!」

「まぁ、ご冗談を。あなたたち資産家の方々からすれば300万円なんてはした金でしょう?」
成金は意地の悪い笑みを浮かべて言い放つ。

「それにあなたたちが欲しがるモノは希少でリスクが高く、管理や保管にも莫大な費用が必要なの。ただでさえ価値が高くて希少なのに、さらにその中からワガママを言って厳選したモノを希望しているのは自分自身でしょう?」

「…くそっ…」

悔しそうに拳をつくったキタに
「ペナルティ料金、どうされます?」
もういちど成金が聞く。

一瞬の間もなく
「…う。払うさ…!」
答えたキタを愉しそうに見つめた成金が飛鷹の耳元で囁いた。

「ふふっ。人間のこだわりと欲望はお金になるから愉しくてやめられないわ。ねぇ、イケメンさん?」
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