もう恋なんてしない

竹柏凪紗

文字の大きさ
122 / 185

第122話 険悪すぎるムード

しおりを挟む
相師と飛鷹が口を開くたび、だんだんと車内の空気が張り詰めていくのがわかって戸惑う。

「…そんなことを言われたら、俺だけが降りるわけにいかなくなるだろ?いつまでこんなことを続けるつもりだ?いくら相師が資産家の息子だとはいえ、お金が無限にあるわけじゃない。時間だってそう。俺たち普通の会社員なんだぞ?明日だって仕事がある」

真剣な表情で言った飛鷹に
「わかってるって。だからもう、ここからは俺ひとりで調べるから」
無表情でつぶやくように相師が応える。

ピリピリとした嫌な空気が流れて、飛鷹と相師は無言になった。

険悪すぎるムードにオロオロしながらも高まるのは、2人に仲たがいをしてほしくないという気持ち。

「あ…、あの…」

思わず声をかけた沙那のほうへ2人が反射的に顔を向けた。
けれど2人からは漂ってきたのは抑えきれない苛立ち。

無意識に言葉を呑み込んだ沙那にハッとした様子で相師が表情を緩める。

「ご…、ごめん。空気、悪くしちゃったね。沙那ちゃんも疲れてるのに、目の前で嫌な感じを漂わせっちゃってごめん」

言われてみれば、今日はすごいスケジュールだった。

いつもより少し早い17時に会社を切り上げてホストクラブを1軒につき30分。

4軒ハシゴしたあとにセントマリア病院へ行ってからのABC遊園地でのパーティーは思った以上にハードで、いますぐ寝られそうなくらいには疲れている。

そんな沙那を見て飛鷹も申し訳なさそうに謝った。

続けて飛鷹が謝るとすかさず
「ねぇ飛鷹、沙那ちゃん、悠馬のこととか行方不明ホストの話は忘れて今週末はシイタケファームでシイタケを食べまくろうよ!
笑顔で言った相師の言葉に青ざめて沙那。

「…ご、ごめんなさい。い、忙しすぎて、予約するのをすっかり忘れてました!もしかしたらもう、今週は予約なんて取れないかも…」

言った沙那に相師は一瞬だけなんともいえない怪訝な表情を見せた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

国王一家は堅実です

satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。 その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。 国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。 外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。 国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。

忘れられたら苦労しない

菅井群青
恋愛
結婚を考えていた彼氏に突然振られ、二年間引きずる女と同じく過去の恋に囚われている男が出会う。 似ている、私たち…… でもそれは全然違った……私なんかより彼の方が心を囚われたままだ。 別れた恋人を忘れられない女と、運命によって引き裂かれ突然亡くなった彼女の思い出の中で生きる男の物語 「……まだいいよ──会えたら……」 「え?」 あなたには忘れらない人が、いますか?──

らっきー♪

市尾彩佳
恋愛
公爵家の下働きをしているアネットと、その公爵の息子であるケヴィン。同じ邸で育ちながら、出会ったのはケヴィン16歳の年。しかもふかふかなベッドの中。 意思の疎通の食い違いから“知り合い”になった二人。互いに結ばれることがないとわかっているからこそ、頑なに距離を保ち続けていたはずが──。「これがわたしの旦那さま」の過去編です。本編をお読みでなくても大丈夫な書き方を目指しました。「小説家になろう」さんでも公開しています。

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

エリザは恋について考えていた

通木遼平
恋愛
 「シューディルくんのこと好きじゃないなら、彼に付きまとうのはやめてほしいの」――名前も知らない可愛らしい女子生徒にそう告げられ、エリザは困惑した。シューディルはエリザの幼馴染で、そういう意味ではちゃんと彼のことが好きだ。しかしそうではないと言われてしまう。目の前の可愛らしい人が先日シューディルに告白したのは知っていたが、その「好き」の違いは何なのだろう? エリザはずっと考えていた。 ※他のサイトにも掲載しています

この別れは、きっと。

はるきりょう
恋愛
瑛士の背中を見ていられることが、どれほど幸せだったのか、きっと瑛士は知らないままだ。 ※小説家になろうサイト様にも掲載しています。

処理中です...