もう恋なんてしない

第134話 愛おしい

自分からキスをするなんてはじめてだったのに、勝手に勘違いして嫉妬している飛鷹がなんだか可愛くて愛おしい。

飛鷹の舌を受け入れて沙那からも軽く絡め返していたとき
「飛鷹さぁん？！」
そんな声とともにドアを叩く音が激しくなって、ドアノブをガチャガチャと回す音まで聞こえはじめて焦る。

「あ～っ、何やってんの？倉庫に用事？」
ドアの向こうから相師の声も聞こえてきた。

早く乱れている服を整えろと合図するように声を張り上げてドアをノックする人物に話しかける相師に飛鷹が反応する。

沙那のブラウスのボタンを丁寧に留めて服の乱れを直してやりながら
「イラつく」
ご機嫌斜め。

そのまま軽いキスをすると少し冷静になったようで
「悪い。少し強引すぎたな」
顔を赤らめて謝った。

プルプルと小さく首を振って
「…強引な飛鷹さんにドキドキしちゃいました…」
小声で言った沙那に頭を抱えながらも飛鷹はとにかく理性を呼び戻す。

「…そういうところがイラつかせるのだが…？」

抱き潰したくなる欲求を抑え込んで言ったのに
「…え？」
まるでわかっていない沙那にイラつきながらも
「こういうところも…可愛いから困る…」
やさしく頭を撫でることに徹して小さく溜め息。

ツカツカと倉庫の出入口のほうへと歩いていき
「悪い、悪い。なんだか倉庫のドアノブ、調子が悪いみたいでな」
ドアを開けて違和感のある言い訳をして場をおさめた。

もちろん相師に思いっ切りニヤニヤした顔で見つめなれながら。