もう恋なんてしない

第135話 わいてくる嫉妬

「朝から毎日この倉庫で仕事をしていてよく嫌にならないよね？それにいくら伊織が人間嫌いのコミュ障だからって、公私混同しすぎじゃない相師…？」

そんなことを言いながらズカズカと倉庫に入ってきた目鼻立ちがはっきりとした大人美人な女性は沙那と目が合って固まった。

…え？

いま、飛鷹さんのことを下の名前で呼んだ。
上原さんのことも“相師”って。

遠慮のない様子で倉庫に入ってきた美人には見覚えがある。

社内でも美人だと評判の宮坂美羽みやさかみうさん。
createクリエイトで上原さんのお父さんである社長の秘書を務めている人だ。

…って、この3人、知り合い…？
しかも名前呼びって、相当親しい間柄ってことだよね。

伊織って…。
まだ、呼んだことない。

名前呼び、嫌いって言ってなかったっけ…？

いろいろ考えて固まった沙那の肩をスッと組み
「この子、企画営業部の香村沙那かむらさなちゃん。ワケあってしばらく広報で働いてもらうことになってね。飛鷹と相性いいみたいだから倉庫で働いてもらってるの」
笑顔で言ったのは相師。

あぁ…、もう。
そんなことをしたらまた飛鷹さんが…。

飛鷹のほうを気にしながらするりと相師の腕から離れた沙那は、ショックで動けなくなる自分に戸惑った。
一瞬ではあったけれど、美羽を見つめたまま動かない飛鷹に気づいてしまったから。

すぐに沙那に気づいた飛鷹は
「何の用だ？」
ハッとして不機嫌そうに美羽に聞く。

…無理。
嫉妬しかわいてこない。

さっき飛鷹さん、宮坂さんのことをじっと見つめてた。
動けないくらい。

上原さんを私から引き剥がすこともしなかった。

胸の奥が痛くて苦しくて…。
飛鷹さんの顔を見ることができない。

宮坂さんと飛鷹さんたち…。
どういう関係？