もう恋なんてしない

第138話 キスをした仲

はっきりとした口調で「私たち、キスだってしたことがある仲だしね」そう言った美羽。

「…え？」
驚きとショックで思わず声が漏れた。

「おい美羽、お前、絶対にいま沙那ちゃんに何か変なことを言っただろ！」

怒る相師にも動じることなく反発。

「まさか！私がそんなことするはずないでしょ。それとも相師には私がそんなヤツに映っているってこと？」

「…それは…」
一気にタジタジになってしまった相師も、なんだか様子がおかしい。

そんな相師を庇うように
「用がないなら、さっさと秘書室へ戻れ」
飛鷹が普段の冷たい感じで言う。

言い放ったその唇で飛鷹さんは宮坂さんとキスしたんだ…？
あんなモデルみたいな美人と。

目の前にいる芸能人なみのオーラを纏った美人を見ていると、あんなにヤキモチを妬いてもらったのに自信がなくなってしまう。

キスをした仲って、どういうこと？

普通に考えたら、付き合っていたってことだよね。
それともカラダだけの大人な関係？

美羽をベッドに押し倒して見おろしながら
「美羽…」
色気のある表情で名前を呼ぶ飛鷹が頭の中にわいてきてブンブンと振り払った。

嫌だ。
キスもそれ以上も、飛鷹さんが誰かとしているところなんて想像したくない。

それなのに浮かんでくるのは2人がキスをしたり楽しそうに抱き合ったりしているところばかり。

頭が変になりそう…。

「沙那ちゃん、平気？」

心配した相師が声をかけ、飛鷹が沙那を自分のほうへと引き寄せる。

「なに？2人して私を邪魔者扱いするなんて酷い。せっかくいい情報を持ってきたのに」