もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第145話 ドキドキしすぎてやばい

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話を聞いてもらうつもりで呼び出した相師からプラスアルファで要求を突きつけられた飛鷹はうまく丸め込まれた感が否めない。

「ふふん。思惑どおり」

内心ニヤニヤしている相師が頭の中に蘇ってきてイラつきながら振り払うと、機嫌の悪かった沙那の顔を思い出してしまって戸惑う。

それでもいまは勤務中。
倉庫へ帰らないわけにはいかない。

気まずい気持ちで倉庫のドアを開けた瞬間、沙那と目が合った。

目が合って2人同時に思う。
ドキドキしすぎてやばい…。

いっしょにいたいのにいたくないような、そんな感じ。

ふっと先に目を逸らした沙那にますます気まずい飛鷹。

「沙那」

声をかけてもスルーされ
「…仕事中なんだが?」
思わず不機嫌な声が滑り出してしまって焦る。

違うだろ、違う。
そんなことが言いたいんじゃない。

これじゃあまるで煽り。
もっとケンカになってしまう…。

「さっきからムスっとした顔をして、仕事がやりづらいだろう」
なぜか心にもない煽るような言葉ばかりが口を突いて戸惑う。

そんな飛鷹を睨みながら
「飛鷹さんは毎日ずっと不愛想ですけどね。私も仕事がやりづらくて仕方ないです」
沙那も思ってもみないことを口走っている自分が怖くなった。

「…ほ…ほう…。なら、お互いに顔を合わせずに仕事をしたほうがいいな」

売り言葉に買い言葉で言ってはみたものの
「…俺は沙那の顔を見ながら仕事をしていたいがな」
素直な気持ちがこぼれていて慌てて口を塞ぐ。

目の前で飛鷹を睨んでいたはずの沙那も耳まで真っ赤。

は…、恥ずかしすぎる…。

あらためて思う。
ドキドキしすぎてやばい…。
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