もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第144話 やらされていること

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「わかっているとは思うけど…。とにかく、俺たちが美羽にやらされていることは言うなよ」
鋭い目をした真剣な表情の相師が言う。

いつも穏やかでやわらかい表情をしているから、なおさら。

「だったら…」
口を挟もうとした飛鷹を相師が睨む。

「無理だよ。いまさらやめるとかは」

そしてすぐに忠告した。

「そんな馬鹿みたいなことより、沙那ちゃんをしっかりと捕まえておくことを考えたほうがいいんじゃない?沙那ちゃん可愛いから、いまみたいにウダウダしてると誰かに盗られちゃうかもよ?」

「…ウダウダって…」

「わからないことは聞く。自分の気持ちはきちんと伝える。大事だよ、これ」

相師はそう言うと
「ほら。グラスに入っている炭酸みたいにさ、消えていった泡はもう二度と再生されない」
グラスを手に取ってそっと飛鷹に手渡す。

「そうかもしれないな」

渡された炭酸を手に取ってグイっと飲み干した飛鷹は
「人を好きになると小学生でも気づくようなことがわからなくなってしまうんだな」
テーブルの上に空いたグラスを静かに置いた。

そんな飛鷹の背中をバシンッ!と相師が叩く。

「明日のデートは楽しんでこいよ」
「あぁ」

頷いた飛鷹だったけれど
「…なんとなくABC遊園地へ行くよう丸め込まれたように思うのだが、気のせいか?」
腑に落ちず相師のほうをチラリ。

「そこはもぉ、なんでもいいじゃあん」
「きもいからそのしゃべり方やめろ」

「あ、そうそう。ついでにABC遊園地へ行ったら、いっぱい写真撮ってきてよね。いっぱいだよ?いっぱいね」

この際とばかりに相師は自分の要求を追加した。
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