もう恋なんてしない

第149話 エプロン姿が可愛くて

「沙那のエプロン姿が可愛すぎて抑えがきかない…」
家へ到着してすぐにエプロンを着けてキッチンに立った沙那はバックハグ状態で抱きしめられていて焦る。

うなじにあたる飛鷹の唇があたたかい。

「沙那…」

名前を呼ぶ声を唇が振動で伝えてきて
「…飛鷹さ…ん…」
胸の奥を意地悪く刺激する。

鼓動が激しく大きくなって、密着している部分から聞こえてしまいそう。

「…これじゃ…ごはん…つくれない…」

小さく言った沙那のカラダを自分の方向へ向けた飛鷹は
「お腹は空いている」
ペロリと唇を舐めた。

…ど、どうしよう…！

こ、この雰囲気はやばい。
絶対に、そういう雰囲気。

無理だよ。

飛鷹さんとそういうことをするのが嫌なわけじゃないけど、心の準備が…まだ。
さっき帰ってきたばっかりでお風呂だってまだだし、下着だって…。

だけどこのままキスとかされたら流されちゃいそうなくらいには飛鷹さんが好き。

不安と期待で頭の中がいっぱいになって沙那がキュッと目を閉じたとき
「俺も手伝ってみても…いいだろうか？」
照れ臭そうに飛鷹が聞いた。

「…え？」

「一応は料理をするから邪魔にはならないと思う」
言いながら包丁にまな板、ボウルにバットなどの調理器具を手際よく出して準備していく。

な、なんだ…。
ちょっと期待しちゃった。
恥ずかしいな、私。

「嫌か？」
「い、嫌なわけないじゃないですか！ぜひいっしょにやりましょう」

促しながら沙那は思う。

彼氏といっしょに料理をするなんて、はじめて。
いま、めちゃめちゃ幸せかも。

「おい、ボーっとするな。ケガをする」

いつの間にか後ろから抱きしめられる恰好で包丁を握る手をサポートされていて
「飛鷹さん、距離ちかい…」
ドキドキしながら振り向いた沙那はそっと唇を重ねていた。

「…さ…な…？」