もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第581話 誰も救えない

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キャンピングカーから降りると一斉に全員が無言になり、自然と慎重になる動き。

奥に見える施設には黒服がいる。
そしてそんな黒服がいつもやり取りをしている暗号で黛を呼び出した。

調べていたのは行方不明ホストについて。
だから当然、そこには関連性のある何かが控えているはず。

飼い殺しディストピア、そう言った黛の言葉が頭の中で繰り返される。
それはみな同じのようで、全員の鼓動や息遣いまでもが聞こえてくるかのよう。

囲いはもちろん柵さえないその施設が拉致した人たちを飼い殺しにしているような場所だとはとても思えない。
けれど異常なくらいの静けさが妙に気味が悪くて戸惑う。

生い茂る木々を抜けて誰もいない畑へと抜けたとき
「…え?黒服?」
トナカイのマスクを被った人物が大きく手を振っているのが見えてシズクが聞く。

「そうだね、貴之だ」

黛が答えて片手を肩のあたりで軽くあげると黒服が寄って困ったような声を出した。

「…ダメだ…。誰も救えない…」

店で話すときのような敬語ではない。
絢世たちが来るまで溜め込んでいたものをすべて吐き出すように苦しそうな声で黒服。

「どういうこと?連絡してもぜんぜん返ってこないし」

不機嫌な黛に軽く謝罪し
「なか…。思っているよりやばかったよ」
しんどそうに続けた。

「でも無事だったんだね。よかった。ひとりで行かせて申し訳なかったね」

ひとまずはホッとしたと胸を撫でおろした黛に黒服は真剣な目を向けて言う。

「…そんなことはどうでもいい。それよりもいっしょに来てくれないか?」
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