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第589話 いまはみんなを救えない
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マスクの下を覗いた漣の瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「…隼人…」
黛のカラダがバランスを崩してフラつくくらい抱きつき返した漣。
「…ほん…もの…?」
言いながらぶわっと泣き崩れそうになった漣を黛が支える。
「ごめ…ん。探すの遅くなった…」
涙が滲んだ黛の声を吸収していた漣の肩が大きく揺れ動く。
「ううん。うれし…」
あらためて黛に抱きついた漣を見つめながら
「奇跡だな」
いまにも泣きそうな顔で黒服がつぶやいた。
そしてすぐ
「おい隼人、その辺にしておけ。まだ脱出もしなきゃだし、ミヤビの望みも叶えてやらなきゃ、だろ?」
諭すように黒服。
「ミヤビの望み?」
「チラっと話しただろ?ミヤビはドリーム不動産の社長に言ったって。絢世、お前を守るために騒ぎを起こしてほしいってな」
答えた黒服は
「マスクの下、見えないからって辛気臭い顔すんなよ。お前はみんなに大事にされてんの」
言いながら頭をポンポンとやさしく叩いて身を翻す。
その背中にみんなが続こうとしたとき
「みんなも連れて帰らなきゃ!」
声を上げた絢世の腕を黒服が強く掴んで首を振った。
「やめとけ。俺は何度も声をかけた。けど、この世にはラクして生きていられればいいってヤツらのほうが多いんだ」
「そんな…」
「ここにいたら決まった時間に食事が出る。ネットやテレビはないが漫画は読み放題、動画は見放題だし、運動器具もあれば姓処理グッズもある。そのうえお香で多幸感に浸っていられるんだから、それを望むヤツも少なくないんだよ」
黒服は説明を続けた。
「だから出入口が開いたってみんな気にもしない。よっぽど何かがなきゃ帰りたくない環境が意図的につくられてるからな。だから言っただろ?ここは出口のないユートピアだって。全員を救ってやりたいが、いまは無理だ。わかってくれ」
苦しそうに絞り出すような感じで言った黒服の声に反応した千隼が絢世の腕を掴む。
そして無言でその腕を引っ張った。
「…隼人…」
黛のカラダがバランスを崩してフラつくくらい抱きつき返した漣。
「…ほん…もの…?」
言いながらぶわっと泣き崩れそうになった漣を黛が支える。
「ごめ…ん。探すの遅くなった…」
涙が滲んだ黛の声を吸収していた漣の肩が大きく揺れ動く。
「ううん。うれし…」
あらためて黛に抱きついた漣を見つめながら
「奇跡だな」
いまにも泣きそうな顔で黒服がつぶやいた。
そしてすぐ
「おい隼人、その辺にしておけ。まだ脱出もしなきゃだし、ミヤビの望みも叶えてやらなきゃ、だろ?」
諭すように黒服。
「ミヤビの望み?」
「チラっと話しただろ?ミヤビはドリーム不動産の社長に言ったって。絢世、お前を守るために騒ぎを起こしてほしいってな」
答えた黒服は
「マスクの下、見えないからって辛気臭い顔すんなよ。お前はみんなに大事にされてんの」
言いながら頭をポンポンとやさしく叩いて身を翻す。
その背中にみんなが続こうとしたとき
「みんなも連れて帰らなきゃ!」
声を上げた絢世の腕を黒服が強く掴んで首を振った。
「やめとけ。俺は何度も声をかけた。けど、この世にはラクして生きていられればいいってヤツらのほうが多いんだ」
「そんな…」
「ここにいたら決まった時間に食事が出る。ネットやテレビはないが漫画は読み放題、動画は見放題だし、運動器具もあれば姓処理グッズもある。そのうえお香で多幸感に浸っていられるんだから、それを望むヤツも少なくないんだよ」
黒服は説明を続けた。
「だから出入口が開いたってみんな気にもしない。よっぽど何かがなきゃ帰りたくない環境が意図的につくられてるからな。だから言っただろ?ここは出口のないユートピアだって。全員を救ってやりたいが、いまは無理だ。わかってくれ」
苦しそうに絞り出すような感じで言った黒服の声に反応した千隼が絢世の腕を掴む。
そして無言でその腕を引っ張った。
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