もう恋なんてしない

竹柏凪紗

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第626話 俺をトイレに連れてって

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千隼の誤解を解いて謝罪し、大好きだと伝える。
そう決めたのに。

「絢世さ~ん!早く早く」
絢世の姿をみつけるなり満面の笑みを浮かべて手招きする蓮。

このあとプレゼントを配る予定だったこともあってチラリと高峰のほうをみたけれど
「まずは乾杯をして、盛り上がってきたところでプレゼントを渡したほうがいいかもしれないな。絢世さんも楽しんでおいで」
なんて言う。

違う。
このままプレゼントを配りましょうの目でみつめたつもりだったんだけどな。

しかも
「だったら高峰さんのお酒は俺がお注ぎしますね」
なんて萩尾零士が割り込んできたからいったん高峰の傍を離れるしかなくなった。

それだけでもイライラしていたのに漣を抱っこしている千隼の隣へ座るなり耳元で
「絢世さん、トイレに連れて行ってください」
なんて連に頼まれて思わず拒絶してしまいそうになる。

「どうかしたか?」
ふと千隼が声をかけてくれたけど。

まずは漣に千隼を盗らないよう牽制するのもひとつの手段かもしれないと
「いえ。大丈夫です」
答えたのがまずかったとすぐに気づかされる。

「俺には関係ないということか」
すぐ千隼から視線を逸らされ冷たい声で言われてしまったから。

あぁ…。
最悪。
どんどん拗れていく。

早くこの状況をどうにかしなきゃ。

「千隼さん…」

勇気を出して絢世が声をかけるとすぐ
「絢世さん…、早く…トイレ…」
漣が言葉を被せて眉間にシワを寄せながら無理に立ち上がろうとする演技。

それを見た千隼が
「大丈夫か?俺でもよければ付き添うぞ」
心配そうな顔でそんなことを言いはじめたのでつい苛立ちが隠せなくなった。

「はぁっ?俺が連れて行くので、千隼さんは座っていてくださいっ!」
こんなふうに絢世が怒鳴るまでが蓮の作戦だと知ったのは、すぐあとのこと。

「思っていたより絢世さんってちょろいですよね?こんなんでナンバーワンホストやってたとか…ウケる」
トイレで詰め寄られ、そう言われたあとのことだった。
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