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第2章 季節の変わり目は複雑な天気に
第94話 衝突
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練習二日目の厨房は前回よりも静かだった。
静かすぎると言ったほうが正しい。
包丁の音だけが響き誰も話さない。
視線も合わない。
前回の失敗が空気の底に沈んだまま動いていなかった。
結は調理台に並べられた海老を見つめながら胸の奥がざわつくのを感じていた。
(このまま始めたら――昨日と同じ)
タイマーが鳴る前結は一歩前に出た。
「……ちょっと待ってください」
三人の手が止まる。
黒崎が面倒そうに顔を上げた。
「なに?」
「今日も、前回と同じことやるんですか」
「前回とは違うでしょ。今日は俺、最初からソース引っ張るし」
「それが問題なんです」
結の声は、思ったよりも震えていなかった。
「誰も“同じ料理”を作ろうとしてない」
篠原が腕を組む。
「グループ審査です。
“連携が取れない人”は、最初から減点対象になる」
相原が低く言った。
「……事実だ」
黒崎が舌打ちする。
「だからって、足並み揃えて凡庸な皿作る気かよ?」
その一言で、結の中の何かが切れた。
「凡庸?」
思わず声が強くなる。
「じゃあ聞きますが!!
昨日の料理、あなた“誰のため”に作りましたか?」
「……は?」
「審査員?それとも自分が勝つためだけ?」
黒崎の目が鋭くなる。
「勝たなきゃ意味ないだろ」
「でも」
結は一歩、さらに踏み込んだ。
「一緒に作った人の料理見てませんでしたよね」
一瞬空気が止まった。
篠原が小さく息を飲む。
相原は視線を落としたまま、何も言わない。
「私昨日すごく悔しかったです」
結の声は、少しだけ低くなった。
「味じゃない“同じ厨房にいたのに誰とも料理してなかった”のが」
「……感情論だな」
黒崎が言う。
「料理は結果だ」
「違います!!」
結は即座に返した。
「料理は途中が大事です」
結は海老を手に取った。
「この海老殻を剥く前に匂い嗅ぎましたか?」
誰も答えない。
「水温確認しましたか?」
沈黙。
「じゃあ前回の火入れが“正しかった”って、誰が言えます?」
黒崎の表情がわずかに揺れる。
「……」
「私たち意見をぶつける前に仲間として“同じ素材”を見てない」
結は深く息を吸った。
「今日、私はまとめ役をやります」
三人が同時に顔を上げた。
「勝手に決めるな!!」
黒崎が言う。
「いいですね」
結は引かなかった。
「嫌なら今ここで言ってください。
でもこのままじゃ全員落ちます」
相原が初めて結をまっすぐ見た。
「……条件がある」
「何ですか?」
「感情で指示するな」
結は頷く。
「理論と理由で話します」
篠原がゆっくり言った。
「……私も従います。
昨日は正直楽しくなかった」
黒崎はしばらく黙っていた。
やがてふっと笑う。
「……強気なお嬢ちゃんだね」
「私……逃げたくないだけです」
黒崎は肩をすくめ、包丁を置いた。
「じゃあ聞こう。
“今日の海老”どう解釈する?」
結は少しだけ考えたあと答えた。
「海老は今回は主役じゃない。支える食材にします」
三人が目を見開く。
「派手な一皿にしない。
でも海老がいないと成立しない」
相原が低く頷く。
「……それなら俺は土台を作る」
篠原が続く。
「火入れは私が。でも全体の温度は共有します」
黒崎が鼻で笑った。
「俺はソースをつくろう。途中で全員に味見させて調整する」
結の胸が、少しだけ軽くなる。
「……じゃあ、始めましょう!!」
タイマーが鳴る。
鍋に火が入る。
今度は、音が重ならない。
誰かが動けば、誰かが待つ。
視線が交わる。
言葉が、ちゃんと返ってくる。
(……これが)
結は思った。
(“一緒に作る”ってことなんだ)
まだ、完成じゃない。
でも――
昨日より、確実に前に進んでいる。
(当然だ!!みんな2回戦突破した強者だもん)
Bグループは、ようやく同じスタートラインに立った。
静かすぎると言ったほうが正しい。
包丁の音だけが響き誰も話さない。
視線も合わない。
前回の失敗が空気の底に沈んだまま動いていなかった。
結は調理台に並べられた海老を見つめながら胸の奥がざわつくのを感じていた。
(このまま始めたら――昨日と同じ)
タイマーが鳴る前結は一歩前に出た。
「……ちょっと待ってください」
三人の手が止まる。
黒崎が面倒そうに顔を上げた。
「なに?」
「今日も、前回と同じことやるんですか」
「前回とは違うでしょ。今日は俺、最初からソース引っ張るし」
「それが問題なんです」
結の声は、思ったよりも震えていなかった。
「誰も“同じ料理”を作ろうとしてない」
篠原が腕を組む。
「グループ審査です。
“連携が取れない人”は、最初から減点対象になる」
相原が低く言った。
「……事実だ」
黒崎が舌打ちする。
「だからって、足並み揃えて凡庸な皿作る気かよ?」
その一言で、結の中の何かが切れた。
「凡庸?」
思わず声が強くなる。
「じゃあ聞きますが!!
昨日の料理、あなた“誰のため”に作りましたか?」
「……は?」
「審査員?それとも自分が勝つためだけ?」
黒崎の目が鋭くなる。
「勝たなきゃ意味ないだろ」
「でも」
結は一歩、さらに踏み込んだ。
「一緒に作った人の料理見てませんでしたよね」
一瞬空気が止まった。
篠原が小さく息を飲む。
相原は視線を落としたまま、何も言わない。
「私昨日すごく悔しかったです」
結の声は、少しだけ低くなった。
「味じゃない“同じ厨房にいたのに誰とも料理してなかった”のが」
「……感情論だな」
黒崎が言う。
「料理は結果だ」
「違います!!」
結は即座に返した。
「料理は途中が大事です」
結は海老を手に取った。
「この海老殻を剥く前に匂い嗅ぎましたか?」
誰も答えない。
「水温確認しましたか?」
沈黙。
「じゃあ前回の火入れが“正しかった”って、誰が言えます?」
黒崎の表情がわずかに揺れる。
「……」
「私たち意見をぶつける前に仲間として“同じ素材”を見てない」
結は深く息を吸った。
「今日、私はまとめ役をやります」
三人が同時に顔を上げた。
「勝手に決めるな!!」
黒崎が言う。
「いいですね」
結は引かなかった。
「嫌なら今ここで言ってください。
でもこのままじゃ全員落ちます」
相原が初めて結をまっすぐ見た。
「……条件がある」
「何ですか?」
「感情で指示するな」
結は頷く。
「理論と理由で話します」
篠原がゆっくり言った。
「……私も従います。
昨日は正直楽しくなかった」
黒崎はしばらく黙っていた。
やがてふっと笑う。
「……強気なお嬢ちゃんだね」
「私……逃げたくないだけです」
黒崎は肩をすくめ、包丁を置いた。
「じゃあ聞こう。
“今日の海老”どう解釈する?」
結は少しだけ考えたあと答えた。
「海老は今回は主役じゃない。支える食材にします」
三人が目を見開く。
「派手な一皿にしない。
でも海老がいないと成立しない」
相原が低く頷く。
「……それなら俺は土台を作る」
篠原が続く。
「火入れは私が。でも全体の温度は共有します」
黒崎が鼻で笑った。
「俺はソースをつくろう。途中で全員に味見させて調整する」
結の胸が、少しだけ軽くなる。
「……じゃあ、始めましょう!!」
タイマーが鳴る。
鍋に火が入る。
今度は、音が重ならない。
誰かが動けば、誰かが待つ。
視線が交わる。
言葉が、ちゃんと返ってくる。
(……これが)
結は思った。
(“一緒に作る”ってことなんだ)
まだ、完成じゃない。
でも――
昨日より、確実に前に進んでいる。
(当然だ!!みんな2回戦突破した強者だもん)
Bグループは、ようやく同じスタートラインに立った。
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