8 / 32
第一章
8.愚かな男の結末
しおりを挟む
鬼道会がシノギの一つとして本格的に株の運用に手を出し始めた頃、国内最大手の証券会社に勤める男を幹部の一人が好待遇でヘッドハンティングした。
大卒で盃を貰う組員も珍しくない時代とはいえ、最終学歴が中卒で九九もままならない連中が大半を占める極道の世界において、〝東大卒〟〝ハーバード大卒〟という華々しい経歴は、腕っぷし一本で伸し上がってきた男達の嫉妬と注目を一身に集めていた。
誰よりも頭が切れたのは疑いの余地がなく、年々警察の監視の目が厳しくなっていたシノギで荒稼ぎし、一年目から組内部の誰よりも多額の上納金を納めていたことで上層部から大変可愛がられていたのだが、金と権力の蜜の味を覚えて天狗になった男に天罰が降りかかる。
とある企業で秘匿扱いされていた内部情報を聞きつけた男は、自らの裁量では動かすことの出来ない金額を組の金庫から勝手に持ち出すと、投資に全額回した挙げ句、大金を注ぎ込んだ株価は大暴落したことで鬼道会に大損害を与えてしまった。
後で判明したことだが、男が掴まされた情報はわざわざヘッドハンティングをしてきた幹部が、自らの椅子を奪われかねないと危惧して描いた画であることが判明する。
結果的に大損害を与えた落とし前として、小指を詰めるよう求められた男はあろうことか、姿をくらませて雲隠れを決め込んだ。激怒した幹部連中の指示の下、男を処分するよう任された無悪は全国に張り巡らされたネットワークから情報を集めて追い詰めていく。
日本国内で一、二を争う鬼道会が、本気で人一人の身柄を捜索すれば見つけることなど造作もない事。信州の山奥に構えていた別荘に籠もっていた男を追い詰めると、いよいよ進退窮まった男は身勝手な釈明を口にしだした。
「いいか、これまで俺がいくらの利潤を組に捧げてきたと思ってる。お、お前らみたいな溝鼠が運んでくるちゃちな金額なんか目じゃねえんだぞッ! そこんところわかってんのかッ」
「ああそうだな。ヤクザは生まれだとか育ちとか小さいことは関係ねぇ。組にどれだけの金を納めることが出来るか――それが評価と価値に繋がることは否定はしねぇよ。そういう意味じゃ、お前は確かに鬼道会の稼ぎ頭だったことは間違いない」
椅子に手脚をロープで括り付けられ、顔面が左右非対称の抽象画よろしく変形させられた男は、この期に及んでみっともない言い訳を延々と繰り返す。
無悪の肯定とも取れる反応に、微かな活路を見出したのか――自らの泥舟に無悪を取り込もうと、ある提案を持ちかけてきた。
そもそも処分の命令が下った時点で男の運命は決まっていたのだが、あくまで聞いてやるフリをして先を促す。
「無悪、お前も俺とともに組を抜けて海外に出国しないか」
「ほう。日本を見限るというわけか」
「そうだ。実はドバイで新たに投資顧問会社を設立する計画があるんだ。なんならそこの共同経営者に据えてやってもいい。もういい加減うんざりなんだよ、鬼道会の石頭の連中には。ただの一度の失敗で俺を捨てるだと? あんな奴らが幅を利かせている組織に明るい未来なんてものは永劫訪れることはない。今時盃だとか上納金だとか、小さな枠の中で古臭い慣習に囚われてる奴らなんか切り捨てて俺んとこにこい。お前にも甘い汁をたんと吸わせてやるぞ」
男の意見に同調するんけではないが、先がないという点では同意してやる。確かに年々ヤクザの世界に足を踏み入れる若い衆が減少していたのは事実だった。おそらくそう遠くない未来に、裏社会の影響力の大部分が削ぎ落とされると予想している。
だが、それとこれとはなんの関係もない。
自らの責任から逃げて裏社会に足を踏み入れたというのに、幼稚な身勝手さを振りかざす人間は無悪が最も唾棄するものの一つであることを、愚かな男は知らなかった。
致命的だったのは、「親を裏切れ」という説得方法。掛け値なしの地雷を踏み抜いた人間の未来は、そこで完全に閉ざされた。
「――もういい。お前のような屑の代わりなどいくらでもいる。死を受け入れて祈りでも捧げていろ」
その手脚じゃ、祈りも捧げられないか。嗤い捨てると、グロックの引鉄に指を添える。男は一転して気が触れたように喚き出した。
「ややややめろッ! この、この俺が誰だと」
会話の途中で男の首は大きく後ろに傾く。パンと乾いた音が男の虚しい命乞いを掻き消した。
その場から離れても良かった。
むしろ残ったところで貴重な時間を消費するだけであって、メリットなど一つもない。
日本の夕暮れと同じように太陽が傾いて緋色に燃え始めたころになると、ようやく大人二人が埋まるほどの穴を素手で掘り終えたガキを回想を交えながら眺めていた。
両手の爪がひび割れ、血が滲んでいるにも関わらず墓石代わりの石を山賊を埋めた土饅頭の上に立てかけると、近くで積んできた名もなき花をそれぞれ添える。
頭垂れて祈りを捧げること数分――ようやく顔を上げたガキは振り返ると、静かに口を開いた。
「僕の命を救ってくれた恩はしっかリと返すつもりです。ですが……なにも彼等を殺さなくても良かったのではないでしょうか。きっとあなたなら、彼等を生きたまま無力化することだって容易だったはずです」
「おいおい。死ぬより酷い目に遭いそうだったっていうのに、よくもまぁそんな甘ったれたことを言えるな」
「この人たちも、きっと止むに止まれぬ理由かまあったんだと思います。夢とか希望とか、幼い頃は彼らにだってあったはずなんですから」
「戯言ばかり抜かすな。いいか、どんな選択をしようがそいつの勝手だが、その結果生じる責任を自ら背負うことが出来ない奴はな、ハナから生きる資格さえないんだよ」
性善説を信じてやまないガキとは、それ以上口を利く気分にもなれなかった。気まぐれに付き合うのもこれで最後だと視線を外し、今度こそその場を離れようと歩きだすと後ろを小鴨のように小走りで着いて離れない。
「邪魔だ。失せろ」
「先程も伝えましたけど、お礼に一宿一飯の恩を返させてください」
こちらの言葉を無視すると先を歩き始め、頼んでもいないのに先導を始めた。
「この先のエペ村には僕の家族が住んでるんです。ですから是非お礼をさせてください。いえ、嫌だと言っても連れていきますから」
そう宣言すると、土埃と血で汚れた手で人を殺めたばかり無悪の手のひらを、躊躇なく掴んできた。他人と手を繋ぐ――記憶にない行為だった。
「そういえば、まだ自己紹介をしてませんでしたね。僕のことはアイリスとよんでください」
「……ふん。無悪斬人だ。別に名前は覚えなくて構わない」
アイリス――日本語で菖蒲の花とは、男のくせに随分と女々しい名前だなと心で嘲りながら、一宿一飯の提案に肯定も否定もしないまま予期せぬ形でエペ村まで同行することとなった。
大卒で盃を貰う組員も珍しくない時代とはいえ、最終学歴が中卒で九九もままならない連中が大半を占める極道の世界において、〝東大卒〟〝ハーバード大卒〟という華々しい経歴は、腕っぷし一本で伸し上がってきた男達の嫉妬と注目を一身に集めていた。
誰よりも頭が切れたのは疑いの余地がなく、年々警察の監視の目が厳しくなっていたシノギで荒稼ぎし、一年目から組内部の誰よりも多額の上納金を納めていたことで上層部から大変可愛がられていたのだが、金と権力の蜜の味を覚えて天狗になった男に天罰が降りかかる。
とある企業で秘匿扱いされていた内部情報を聞きつけた男は、自らの裁量では動かすことの出来ない金額を組の金庫から勝手に持ち出すと、投資に全額回した挙げ句、大金を注ぎ込んだ株価は大暴落したことで鬼道会に大損害を与えてしまった。
後で判明したことだが、男が掴まされた情報はわざわざヘッドハンティングをしてきた幹部が、自らの椅子を奪われかねないと危惧して描いた画であることが判明する。
結果的に大損害を与えた落とし前として、小指を詰めるよう求められた男はあろうことか、姿をくらませて雲隠れを決め込んだ。激怒した幹部連中の指示の下、男を処分するよう任された無悪は全国に張り巡らされたネットワークから情報を集めて追い詰めていく。
日本国内で一、二を争う鬼道会が、本気で人一人の身柄を捜索すれば見つけることなど造作もない事。信州の山奥に構えていた別荘に籠もっていた男を追い詰めると、いよいよ進退窮まった男は身勝手な釈明を口にしだした。
「いいか、これまで俺がいくらの利潤を組に捧げてきたと思ってる。お、お前らみたいな溝鼠が運んでくるちゃちな金額なんか目じゃねえんだぞッ! そこんところわかってんのかッ」
「ああそうだな。ヤクザは生まれだとか育ちとか小さいことは関係ねぇ。組にどれだけの金を納めることが出来るか――それが評価と価値に繋がることは否定はしねぇよ。そういう意味じゃ、お前は確かに鬼道会の稼ぎ頭だったことは間違いない」
椅子に手脚をロープで括り付けられ、顔面が左右非対称の抽象画よろしく変形させられた男は、この期に及んでみっともない言い訳を延々と繰り返す。
無悪の肯定とも取れる反応に、微かな活路を見出したのか――自らの泥舟に無悪を取り込もうと、ある提案を持ちかけてきた。
そもそも処分の命令が下った時点で男の運命は決まっていたのだが、あくまで聞いてやるフリをして先を促す。
「無悪、お前も俺とともに組を抜けて海外に出国しないか」
「ほう。日本を見限るというわけか」
「そうだ。実はドバイで新たに投資顧問会社を設立する計画があるんだ。なんならそこの共同経営者に据えてやってもいい。もういい加減うんざりなんだよ、鬼道会の石頭の連中には。ただの一度の失敗で俺を捨てるだと? あんな奴らが幅を利かせている組織に明るい未来なんてものは永劫訪れることはない。今時盃だとか上納金だとか、小さな枠の中で古臭い慣習に囚われてる奴らなんか切り捨てて俺んとこにこい。お前にも甘い汁をたんと吸わせてやるぞ」
男の意見に同調するんけではないが、先がないという点では同意してやる。確かに年々ヤクザの世界に足を踏み入れる若い衆が減少していたのは事実だった。おそらくそう遠くない未来に、裏社会の影響力の大部分が削ぎ落とされると予想している。
だが、それとこれとはなんの関係もない。
自らの責任から逃げて裏社会に足を踏み入れたというのに、幼稚な身勝手さを振りかざす人間は無悪が最も唾棄するものの一つであることを、愚かな男は知らなかった。
致命的だったのは、「親を裏切れ」という説得方法。掛け値なしの地雷を踏み抜いた人間の未来は、そこで完全に閉ざされた。
「――もういい。お前のような屑の代わりなどいくらでもいる。死を受け入れて祈りでも捧げていろ」
その手脚じゃ、祈りも捧げられないか。嗤い捨てると、グロックの引鉄に指を添える。男は一転して気が触れたように喚き出した。
「ややややめろッ! この、この俺が誰だと」
会話の途中で男の首は大きく後ろに傾く。パンと乾いた音が男の虚しい命乞いを掻き消した。
その場から離れても良かった。
むしろ残ったところで貴重な時間を消費するだけであって、メリットなど一つもない。
日本の夕暮れと同じように太陽が傾いて緋色に燃え始めたころになると、ようやく大人二人が埋まるほどの穴を素手で掘り終えたガキを回想を交えながら眺めていた。
両手の爪がひび割れ、血が滲んでいるにも関わらず墓石代わりの石を山賊を埋めた土饅頭の上に立てかけると、近くで積んできた名もなき花をそれぞれ添える。
頭垂れて祈りを捧げること数分――ようやく顔を上げたガキは振り返ると、静かに口を開いた。
「僕の命を救ってくれた恩はしっかリと返すつもりです。ですが……なにも彼等を殺さなくても良かったのではないでしょうか。きっとあなたなら、彼等を生きたまま無力化することだって容易だったはずです」
「おいおい。死ぬより酷い目に遭いそうだったっていうのに、よくもまぁそんな甘ったれたことを言えるな」
「この人たちも、きっと止むに止まれぬ理由かまあったんだと思います。夢とか希望とか、幼い頃は彼らにだってあったはずなんですから」
「戯言ばかり抜かすな。いいか、どんな選択をしようがそいつの勝手だが、その結果生じる責任を自ら背負うことが出来ない奴はな、ハナから生きる資格さえないんだよ」
性善説を信じてやまないガキとは、それ以上口を利く気分にもなれなかった。気まぐれに付き合うのもこれで最後だと視線を外し、今度こそその場を離れようと歩きだすと後ろを小鴨のように小走りで着いて離れない。
「邪魔だ。失せろ」
「先程も伝えましたけど、お礼に一宿一飯の恩を返させてください」
こちらの言葉を無視すると先を歩き始め、頼んでもいないのに先導を始めた。
「この先のエペ村には僕の家族が住んでるんです。ですから是非お礼をさせてください。いえ、嫌だと言っても連れていきますから」
そう宣言すると、土埃と血で汚れた手で人を殺めたばかり無悪の手のひらを、躊躇なく掴んできた。他人と手を繋ぐ――記憶にない行為だった。
「そういえば、まだ自己紹介をしてませんでしたね。僕のことはアイリスとよんでください」
「……ふん。無悪斬人だ。別に名前は覚えなくて構わない」
アイリス――日本語で菖蒲の花とは、男のくせに随分と女々しい名前だなと心で嘲りながら、一宿一飯の提案に肯定も否定もしないまま予期せぬ形でエペ村まで同行することとなった。
11
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる