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第一章
14.雑魚は雑魚
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「おうおう。部下が戻ってこねぇと思ったら、こりゃあいったいなんの騒ぎだ」
アイリスの訴え通りに誰一人傷つけることなく、威嚇射撃を織り交ぜながらモーゼの十戒さながらに割れた住民の間をアイリスとジジイを引き連れ歩いていると、十数名からなる部下を引き連れた大男が無悪の正面に立ち塞がった。
その姿を見た村の住人たちは、慌てて土下座の姿勢を取ると地に額をつけてひれ伏した。住民の中で最も高齢だと思われる老婆が、皆が土下座の姿勢で固まっている間を縫って男達の前に躍り出ると、必死に赦しを乞いた。よく見たら無悪と視線があったババアではないか。
「お頭様ッ、これは違うんです! 決して子供を逃がそうなんてつもりは」
「黙れ、クソババア。誰が口を開いていいと言った」
集団の中央、大勢の山賊を引き連れ歩いていた一際大柄な男が、軽々と振るった刀は釈明しようとしていた老婆の首を一切の躊躇もなく切り落とした。
間欠泉のように血飛沫を上げて頭部を失った体は、ドサリと倒れて他の人間は声も出さずにただただ震えているだけだった。圧倒的な暴力に屈した人間の姿は、かくも醜い。
「アンタ、この村では見かけない顔だな。他所者か? 悪いがそのガキを勝手に連れて行ってもらっちゃあ困るんだよ」
たった今切り捨てた老婆の血が、ぬらりと光る鋒をちらつかせながら距離を詰めてくる。無悪が見上げるほどに高身長の男は、剣呑な眼差しで凄んできた。
「このガキをどこに連れてこうが俺の勝手だ。それより、死にたくなかったらその汚ねぇ刀をとっとしまえ。粋がって刃物をちらつかせるやつほど弱く見えるぞ」
「ハハ! やはり他所者だな。俺様を前にして口答えする度胸は買うが、少しでもアキツ組の恐ろしさを知っていりゃ、そのような馬鹿な真似はしないはずだからな」
よほど看板に自身があるのだろう。日本でも金バッジをこれみよがしに掲げながら、肩で風切って歩く輩をそれなりに見かけたが、そのような男は往々にしてメッキが剥がれるのが早いのが、世の常と相場決まっている。
「あんたがナニもんかはこの際どうでもいい。ほれ、素直にそのガキを渡しやがれ。でないとこの村の住人を一人ずつ殺すぞ」
「それは脅しのつもりか? あいにくアキツ組なんざ眼中にもない。それに強者に媚びへつらう人間がどうなろうが、俺には一切関係のないことだ」
宣言とともに手にしていたグロックを大男の大腿部に向けて発砲すると、情けない声を漏らして片膝をついた。狙いは大動脈からの失血死《ブラッドロス》――せいぜい藻掻き苦しんで死ねばいい。
「な、なにしやがるッ! 貴様……一体ナニもんだ!」
「俺が誰だろうとどうでもいいだろう。これから死ぬ人間に教えたところで無駄でしかない」
「な、なにしてる! お前らさっさとソイツを殺せ!!」
まさかの事態に、気を動転させた住民はその場から散り散りに逃げ出すと、余裕ぶっていた大男は態度を豹変させて部下を怒鳴りつける。
向かってくる有象無象との対決は、命のやり取りには程遠いがせめて暇つぶし程度にはなってくれないと困る。
ワンハンドでグロックを構え直すと、しばし闘争に身を投じた――。
アイリスの訴え通りに誰一人傷つけることなく、威嚇射撃を織り交ぜながらモーゼの十戒さながらに割れた住民の間をアイリスとジジイを引き連れ歩いていると、十数名からなる部下を引き連れた大男が無悪の正面に立ち塞がった。
その姿を見た村の住人たちは、慌てて土下座の姿勢を取ると地に額をつけてひれ伏した。住民の中で最も高齢だと思われる老婆が、皆が土下座の姿勢で固まっている間を縫って男達の前に躍り出ると、必死に赦しを乞いた。よく見たら無悪と視線があったババアではないか。
「お頭様ッ、これは違うんです! 決して子供を逃がそうなんてつもりは」
「黙れ、クソババア。誰が口を開いていいと言った」
集団の中央、大勢の山賊を引き連れ歩いていた一際大柄な男が、軽々と振るった刀は釈明しようとしていた老婆の首を一切の躊躇もなく切り落とした。
間欠泉のように血飛沫を上げて頭部を失った体は、ドサリと倒れて他の人間は声も出さずにただただ震えているだけだった。圧倒的な暴力に屈した人間の姿は、かくも醜い。
「アンタ、この村では見かけない顔だな。他所者か? 悪いがそのガキを勝手に連れて行ってもらっちゃあ困るんだよ」
たった今切り捨てた老婆の血が、ぬらりと光る鋒をちらつかせながら距離を詰めてくる。無悪が見上げるほどに高身長の男は、剣呑な眼差しで凄んできた。
「このガキをどこに連れてこうが俺の勝手だ。それより、死にたくなかったらその汚ねぇ刀をとっとしまえ。粋がって刃物をちらつかせるやつほど弱く見えるぞ」
「ハハ! やはり他所者だな。俺様を前にして口答えする度胸は買うが、少しでもアキツ組の恐ろしさを知っていりゃ、そのような馬鹿な真似はしないはずだからな」
よほど看板に自身があるのだろう。日本でも金バッジをこれみよがしに掲げながら、肩で風切って歩く輩をそれなりに見かけたが、そのような男は往々にしてメッキが剥がれるのが早いのが、世の常と相場決まっている。
「あんたがナニもんかはこの際どうでもいい。ほれ、素直にそのガキを渡しやがれ。でないとこの村の住人を一人ずつ殺すぞ」
「それは脅しのつもりか? あいにくアキツ組なんざ眼中にもない。それに強者に媚びへつらう人間がどうなろうが、俺には一切関係のないことだ」
宣言とともに手にしていたグロックを大男の大腿部に向けて発砲すると、情けない声を漏らして片膝をついた。狙いは大動脈からの失血死《ブラッドロス》――せいぜい藻掻き苦しんで死ねばいい。
「な、なにしやがるッ! 貴様……一体ナニもんだ!」
「俺が誰だろうとどうでもいいだろう。これから死ぬ人間に教えたところで無駄でしかない」
「な、なにしてる! お前らさっさとソイツを殺せ!!」
まさかの事態に、気を動転させた住民はその場から散り散りに逃げ出すと、余裕ぶっていた大男は態度を豹変させて部下を怒鳴りつける。
向かってくる有象無象との対決は、命のやり取りには程遠いがせめて暇つぶし程度にはなってくれないと困る。
ワンハンドでグロックを構え直すと、しばし闘争に身を投じた――。
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