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第一章“物語の始まり”
Chapter9.大地の主
しおりを挟む潮の匂いが心地良い。
この街は腐ってしまったがこの海の碧さは変わらず綺麗だ。
「海だけが…俺の居場所だ。」
***
「わあ…!」
「私、海って初めて…!!」
相も変わらずここは、
「風が気持ちいいな。」
「皆ー?テント立てるから手伝って。特にシグレ~。」
うげ、めんどくせ。
「仕方ねぇな。ハルトでも連れてけ。」
「いや何が仕方ないの。」
間髪入れないそのツッコミ流石だな。
「私はシグレに来いって言ってるのよ。早く手伝いなさい。」
「はいはい、分かったよ。」
俺はそう答えてサクラの居る方を見た。
「サクラー?いつまでもこの港町見てても仕方ねえからこっち来いよ。」
「今行く。」
テント…思ってたより二、三倍でけーな。
「あ、サクラ。」
「何?」
サクラは港町を見下ろすのをやめ、こちらに歩いてきた。
「そこの金髪とハヤテ連れて買い出し頼みたいんだけどいい?」
「了解。」
サクラが承諾する様子を俺の横で見ながらハルトは半眼になって俺に話しかけてきた。
「あのさあ、シグレ。」
「何だよ。」
「この定着しちゃってる金髪呼び何とかならないかなあ。」
ハルトは視線を半ば伏せて表情に笑みを滲ませた。
うーん。
「ドンマイ。」
爽やかに言って見せた。わざわざ。
「お前、ほんとムカつくわあ…。」
おい、眼、潤んでるぞ。
「ちょっとー?金髪早く行くぞー。」
「サクラちゃん!?やめて!!その呼び方やめて!?」
マジでドンマイ。
「嘘でしょぉ。サクラちゃんまで…。あとなんかビミョーに語気が荒くなっているような…?」
ハルトはハハ、ハハハと笑うと本気で落ち込み始めた。
「早くしろ。」
語調が元に戻りやがった。
まあ、良かったわ。やっと本格的に元気になった。
「ほら、早く行ってこい。」
俺はそう言ってハルトの背を押した。
「分かったよ。」
「シグレー!早くテント立てなさいよ。」
「もう立てたよ。」
「あら。」
***
なんか…変だ。
街ゆく人々の眼に光がない。
「ねえ、二人とも…。」
「サクラちゃんも気づいたか。」
私はコクリと頷いた。
「港町の…空気が…大気が…荒んでいる……。」
ハヤテは大気使いだったっけ。こういうことには敏感なのかな…。
「いやあああああああああ!!!!!」
叫び声!?
振り向いた私の眼の前に広がっていた光景は…
「なんだあれ…!」
「処刑…台」
女の人が処刑台の棒に括りつけられ、近くにいる男達はそこに火をつけようとしていた。
「酷いわ、あの子は役人に襲われそうになった子供を助けただけなのに…!理不尽よ…。」
ドクン…
「助けて、誰か、誰かああああ!!!」
叫び声が…人々のざわめきが…聞こえる。
ドクン…
「いや、いや、いやあああああ!!!!」
うるさい…これ以上、叫ばないで。あの夜を…
ドクン…
あの夜を、思い出してしまう…。
男が薪に火をつけようとした。
火、あの夜を包み込んだ…炎…。
私はもう…
ドクン…
何かが焼かれるのは、見たくは……
無い!!
ドクン…
「やめろおおおおぉぁぁ!!!!!」
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