【R18】年上上司のオトシ方

二久アカミ

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2:年上上司の甘え方

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 心臓の音がばくばくと高鳴って耳の方まであがってくる。これで、そうだな、なんて言われても諦める気はないけれど……と緊張していると、奥村はきょとんとした後に、ははっと声を立てて笑った。

「いねえよ……そんなの。変な気ぃつかうな」

 あっさりした答えに、まじで! と心の中で拳を握った濱口だったが、いや、フランスには居るとか、そういうオチ……と少しもやっとした後に、もう一回言う! と急に心を決めた。

「そんなこと、言われると……オレ、調子にのっちゃうかもしんないッス……」

 奥村さんのこと、スキだから。

 顔を見て言おうと思ったのに、あまりに恥ずかしくて視線をあげれなかった。奥村の顔がゆっくりとこちらに向くのがわかるのに、そちらを窺い見ることもできない。

(見れ……ねえ……! オレ、今超耳真っ赤……!)

 奥村はソファーの上で膝を抱え、ブランケットを羽織ったまま、少し黙っていた。そして、ゆっくりと濱口の方を向きつつ、膝に頭をもたれかからせるように首を傾げると、小さく、うん、と言う。

「いいぜ? 調子にのれば?」
「……っ」

 思わず顔をあげると、濱口をみている奥村の顔も少し赤く、それは熱の時のとは違う気がした。嘘、まじで、それでいいの、と思って、濱口はおもわず、ソファーの上にあった奥村の手を握りしめた。ほんと、ですか、と小さく漏れた声は震えていて、奥村は困ったような表情だったけれど、濱口の手をぎゅうっと握り返してくれる。

「……っ!」

 濱口は思わず奥村の顔をのぞき込んでキスをした。奥村はそれにこたえると、ちゅっと音を立ててそれを離す。

「こら、熱、うつる……」
「このぐらいじゃうつんねーッスよ……本気にしますね? オレ、調子にのってますから……」

 むしろ、うつしてもらっても……と、濱口が言うと、それ違うだろ、と奥村がくしゃっと笑った。
 額をあわせて、ついばむようなキスを繰り返す。ああ、本当にいいんだ、と濱口は手に汗をかきそうになりながらも、その手をきゅっと握りしめた。

「眠い、ですよね」
「……ん。眠い」
「はい……。けど……」

 もう一回だけ……とキスを深めにして、そして、漏れた息にぞわりと興奮した。汗ばんだ首筋が目に入り、気付いた時にはそこに吸い付いていた。嫌がられるかな、と思いつつも、ちゅうっとそこを吸う。汗のにおいがひどく色っぽくて、やばい、まじでスイッチはいっちまいそう……と濱口は理性と欲望の狭間でゆらゆらと揺れている。
 奥村はそんな濱口の状態などに気付かず、すっと彼の体を離すと、少しだけ困ったように笑った。

「オレ……絶対汗くせえな……悪い」
「いや、そんなことは……っ」

 バカ、オレ! やりすぎた! と濱口が焦っていると、奥村はまた膝に頭をくっつけて、ぼんやりと濱口を見つめてくる。ブランケットにくるまって、きゅっとちいさくなっている彼は、あまりに幼く見え、なんだか現実感がなく、さっきの返事まで込みで夢だったらどうしよう、と濱口が不安になるほどであった。

「寝てくる」
「あ、はい……また、そうですね、お昼すぎに様子見に行きますし……」

 ぼうっとそう言ってまた水を飲んだ奥村は、少し考えた後、濱口の方に向かった。

「……濱口」
「? はい、……っ!」

 何ですか! とかしこまる濱口をみて、にっこりと笑った奥村は、ちゅっと唇を濱口のそれに押しあててくる。
 そして、にやっといたずらな笑みを浮かべた。

「あとで、プリン買ってきて? 甘いもん食いたくなった……」
「は、いっ!」

 濱口は寝室にいく奥村の背中を見送ると、ばたんっとその場に倒れ込んでしまう。
 声にならない叫びをあげそうになって、ひとしきりじたばたした。

 そして、そのあと、美味しいプリンを探しに部屋を飛び出たのだった。
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